【浦島ライダーの2輪体験記】ヤマハ SR400 が熱烈なファンに支えられている理由

ヤマハ SR400
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16歳の誕生日と共に原付免許を取り、でも、20代はクルマに夢中。アラサーでリターンライダーになるも、40代は仕事に忙殺される。そしてアラフィフで2輪に再々入門。そんな浦島ライダーが、最新のバイクをチェックしていきます!

久しぶりに耳にした「かぶる」というフレーズ

「バイクのキックスタートなんて何年ぶり……いや、何10年ぶりだろう」と思いながら、ヤマハ『SR400』のシートに跨る。昔取ったなんとやら。デコンプレバーを握ってキックペダルを動かしてピストンの位置を調整すると、うっすらとスロットルを開けて勢いよくキック! 

……アレ!? エンジンかからない。「そうか。チョークが付いていないから、寒い日はもうすこしスロットルを開けないとイカンのか」と、同じ手順を踏むのだけれど、やはりかからない。

「かぶっちゃいましたね」とヤマハの人。「いまのSRはインジェクションだから、スロットルは閉じたままでいいんです」と親切に教えてくれた。そうだったのか。久しぶりに「(プラグが)かぶる」というフレーズを日常会話で耳にしたなァ、さすがSR、と感心しながら、ちょっと間をおいてからトライすると、あっさり火が入りました。いや、お恥ずかしい……。

SR400はカッコいいけれど、キックスタートでしかエンジンをかけられないのが心配。そんな不安で購入を躊躇している方、大丈夫です! 21世紀のSR400は、実に簡単にエンジンをスタートできるのです。……てな感じで試乗体験を書き始めようと考えていたのですが、のっけからつまずいちゃいました。ハハハ……。

時代の荒波を乗り越えてきたSR


念のため紹介しておきますと、SR400は、399ccの空冷単気筒エンジンを積んだヤマハのオンロードバイク。オリジナルは1970年代に遡れる長寿モデルで、時代の荒波を、都度、ユーザーの熱い支持とエンジニアの方々の頑張りで乗り越えてきました。2010年には、長年親しんできたキャブレターを捨て、エンジンのインジェクション化を果たしています。

よく知られているように、クラシカルな外観に違わず、一般的なバイクがエンジン始動に使うセルモーターを装備していないのが、SRの特徴のひとつ。代わりに、人の足でキックペダルを踏んでクランクを回すわけです。

バイクのエンジンを切ると、通常は一番抵抗が大きい行程でピストンが止まりますから、再始動時には、クラッチレバーの下に設けられたデコンプレバーを握ってシリンダー内の圧縮を抜きながらキックペダルを踏んでピストンの位置を動かし、クランクが回りやすく、つまりエンジンがかかりやすくします。慣れないうちは、右ヒザ下あたりに設けられた「キック・インジケーター」の小窓に銀色の目印が出るのをチェック。キーをONにして、ギアのニュートラルを確認して、キックペダルを踏む。と、ト、ト、トトトトト……とエンジンがかかる、はず。簡単ですね!?

日本人の琴線に触れるスタイル


今回、SR400をお借りして、その人気の高さに改めて驚きました。バイクを停めて写真を撮っていると、「オッ! SR!!」、「キックでエンジンかけるんだよね」といった会話が背後で交わされ、「キレイなバイクですねェ」、「カッコいいすね」と異なる場所で声をかけられる。

丸目ヘッドランプに美しいメッキパーツ。シンプルなスタイリング。正調にしてどこか静かな佇まいが、日本人の琴線に触れるのでしょう。

シート高は790mm。身長165cm(短足)の自分でも、両足は3分の2ほどが地面に着き、わずかにバイクを傾ければ片足がべったり接地します。ライダーの体型は千差万別のはずだけれど、にわかSRライダー(←自分のことです)でも、あたかも長年連れ添った相棒のように自然なポジションを取れるのが不思議。無理なく肩を開いて、伸ばした手を自然に下ろしたところにハンドルがある。ステップの位置も無理がない。こんなところにも、長年の蓄積を感じます。

熱烈なファンを持つ理由の一端に触れた


399ccのシングルカム単気筒は、24ps/6500rpmの最高出力と28Nm/3000rpmの最大トルクを発生。スペックだけ見ると突出したところはないけれど、低回転域でのトルクが豊富なので、まずエンストの心配はない。のんびり走っていると、重心が低くて安定しているし、ハンドリングは穏やかだし、細かい道でのUターンも楽々。SR400は、街中でも意外なほど気楽に乗れます。

では、のんきな「トコトコ」バイクかというと、そんなことはない。モータースポーツでも活躍した499ccエンジンのストロークを縮めたショートストロークユニットは、4000rpmを超えるとグッと振動が増すけれど、そんなことに頓着せずに、回転計の12時(=5000rpm)付近を目安にガンガン回してやると、車重175kgのSR400は水を得た魚のように活発に走り始めます。

(いまとなっては)古典的なモデルらしく、乗り手がガッツを見せないと、バイクも応えてくれないのです。それにしても、全身でエンジンビートを受けとめながらカーブを立ち上がっていくときの、あの男らしい気分は何なんでしょう! SR400が、熱烈なファンを持つ理由の一端に、ちょっぴり触れた気がします。

「変わらない」ための変更に拍手


最新のSR400は、最新の排ガス規制(二輪車平成28年排ガス規制)に対応しています。前回の大幅改良で、インジェクション化のためにフューエルポンプをサイドカバー裏に押し込んだSRでしたが、今回は、シート下のバッテリー後方に大型のECUを置き、排気系を改良、さらにチャコールキャニスターを追加して気化したガソリンの大気放出を抑制。「変わらない」ための変更を、できるだけ目立たないよう実施しているのです。拍手。ボディカラーは、黒と青の2種類。価格は57万2400円です。

そうそう、SR400はカッコいいけれど、キックスタートでしかエンジンをかけられないのが心配。そんな不安を抱いている方、大丈夫ですよ! 無駄な力はいりません。キックペダルが止まったところから、グゥゥウッ!と加速度的に踏み抜いてやると、無理なくエンジンがかかります。もちろん、個体によって多少の違いはあるかもしれませんが、下手に勢いをつけるより、最後までしっかりペダルを踏むことがポイント。その際、インジェクションモデルの場合、スロットルは閉じたままでお願いします。

《ダン・アオキ》

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