所有と利活用はサブスクリプションで両立できる…KINTO 小寺信也 代表取締役社長[インタビュー]

小寺社長インタビュー
小寺社長インタビュー全 2 枚

トヨタ車のサブスクリプションサービスKINTO。リースや残価設定クレジットとも違う新しいビジネスとして注目される中、7月より全国サービスが開始された。サービス開始直後に株式会社KINTO代表取締役社長の小寺信也氏に話を聞くことが出来た。

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小寺社長は、トヨタで国内営業に長年携わってきた。入社8年目からは国内営業のやり方を海外にも展開すべく、グローバルマーケットとグローバルカーの営業企画、商品企画の仕事に従事。企画屋としてテスラと共同でEVのRAV4を開発したり、グローバルで成功したハイラックスのピックアップであるIMVプロジェクトでは、準備室の室長を務めた。

新しいサービスKINTOの立ち上げでは、トヨタの事業部ではなく別会社を興してのスタートとなる。その意気込みと狙いから伺った。

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トヨタが目指すモビリティカンパニーという全体戦略の中で、KINTOというビジネスはどういうポジションになるのでしょうか。


小寺氏(以下同):トヨタが2年前にラスベガス(CES)で宣言した「モビリティカンパニー」ですが、ユーザーからみると、正直なところ何が変わるのかがイメージしにくかったのではないかと思います。パワートレインがガソリンから電気に変わるだけでは、大きな変化は起きませんし、また、トヨタには国内自動車市場の40%を占める優良な顧客がいます。この存在を考えると、ドラスティックな変化が必ずしも正解なのかという議論もあります。

自動車の開発は準備から5年6年とかけることが普通で、一度開発した車は10年という単位で売っていきます。必要なら工場も作りますし人もたくさん雇います。始めたものを半年で辞めるなどあり得ません。自動車の製造では徹底的にネガティブチェックを行い、完璧なものを作る使命があります。それとは異なり、KINTOの使命は、スピーディーに世に出し新たな変化を創ることであると思っています。

KINTOは2018年の1月にプロジェクトがスタートしました。サービスの概要が見えてきたのが5月頃です。11月にはKINTOのサービス発表をしています。この時点で我々は本サービスを半年で立ち上げたいと考えており、2019年3月のトライアル開始を経て、今回の7月の正式ローンチにつながっています。

このスピード感が重要であり、KINTOを既存事業の枠組みではなく別会社にした理由でもあります。

KINTOは自動車金融のひとつに過ぎず、個人向けリースと見る向きもあります。KINTOサービスの狙いはなんでしょうか。


KINTOは個人向けリースだとは思っていません。既存モデルとの違いは3つあります。

一つ目は税金や保険などすべてを含んだフルサービスを提供している点です。一般的なリースは税金の支払いは別ですし、任意保険も個別契約となります。ご存じのように保険は年齢や車種、事故歴などによって掛け金が変わります。しかし、KINTOでは全国一律の料金です。若い人は通常保険料は高く設定されますが、KINTOでは年齢で料金が変わることはありません。KINTOの契約の中で事故を起こしても、次の契約でそれが考慮されることもありません。

ワンプライスが二つ目の違いです。通常、自動車の購入は個別に価格交渉をした後にその金額を元にリース支払いいたします。KINTOでは誰がどこで契約しても同じ価格となります。

三つ目は注文や変更、解約がWebで可能なことです。メーカー系でここまで可能なサービスはないはずです。

月額固定のサブスクリプションモデルにこだわった狙いは、クルマをとにかく購入しやすくしたい、入手し易くしたいという点です。クルマを持つというのは、生活の中で大きなイベントです。金額もそうですし諸手続きも簡単ではありません。買う前には家族会議をして資金をどうするかや、ディーラーとは価格交渉や相見積りをとったり。下取りも場合によっては別の業者に依頼したり、保険や税金、維持コストも考えたりと、気軽に買えるものではありません。

もっと手軽に、スマホで片手でできるようにしたいと思っています。

よくクルマも所有から利用の時代になると言われています。利用するだけならクルマは乗れればなんでもよくなりますが、そうではない人も多いはずです。クルマの利活用の世界でも専有したいニーズはあると思います。専有イコール所有ではなく、利用と専有は両立できます。しかし、そのための仕組みは、現在のシェアリングではカバーできていません。クルマは資産として考えず、毎月の負担とメリットで判断してもらえるような提供方法をKINTOで提供していきます。

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―所有から利用へ、サブスクリプションが広がると、既存のディーラービジネスへの影響もあるかと思います。販売ビジネスモデルへの変化はどのように考えていますか。

KINTOにとって、トヨタの販売店網は重要な資産であり強力な武器でもあります。カーリースだけなら、個人でも始められる事業ですが、車両の供給元、メンテナンスやサポートなどトヨタのネットワークを包括的に利用できる強みは大きいと思っています。

KINTOがみている顧客層は、どちらかというと頭金や保険などで購入ハードルが高い若い世代、ライフスタイルに合わせてクルマを使いたい人などです。同じクルマを5年、10年と乗り続ける人には向かないモデルですので、ディーラーにとっては、これまで取り込めていなかった新しい層に販売機会が広がる可能性があります。

KINTOの利用者は、契約時にメンテナンスのディーラーを選ぶのですが、かかる費用はKINTOが支払うのでディーラーの固定収入となります。リース延長は原則しませんので、良質な中古車の供給源にもなります。

ディーラーにとってマイナスになるとしたら、ローンの金利収入の分でしょうか。それは、既存客がKINTOを選んだ場合であって、新しい層に販売が増える形ならば、他の収入が増えたと考えられるはずです。

サービスが始まったばかりですが、今後、KINTOをどのように発展させていきたいと思っていますか。


サブスクリプションはこれからの形態です。認知度はまだ十分でありません。したがって、どのようなニーズが出てくるか、どのように発展していくのかはまだわかりません。

トヨタ車以外、輸入車や中古車のサブスクリプションの可能性はあります。アイデアレベルでは、ウィークデーと週末・休日で車種を変えられるような契約。平日は通勤や買い物の足だが、休日はSUVといった使い分けができるといいのではないでしょうか。逆に土日に稼働していない営業車をシェアリングやサブスクリプションで活用できないか。いろいろ考えられると思います。

オーストラリアのレクサスでは、空港のバレーパーキングで車を預けるだけでなく、到着した空港に、同じ車種が用意され利用できるというサービスを行っています。このような利用にフォーカスしたモビリティサービスにも興味があります。

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《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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