【テスラ モデル3 新型試乗】短距離試乗では欠点を見出せないほど「刺激的」だった

テスラ モデル3 ロングレンジデュアルモーター(日本未投入グレード)
テスラ モデル3 ロングレンジデュアルモーター(日本未投入グレード)全 12 枚

アメリカのEVメーカー、テスラの日本法人はまもなくミッドサイズセダン『モデル3』を日本市場に投入する。それに先立ち、メディア向け試乗会が徳島県で行われた。テストドライブしたのは左ハンドル車、しかも今のところ日本への投入予定がない「ロングレンジ・デュアルモーター(AWD)」であったが、ファーストインプレッションをお届けする。

【画像全12枚】

ダウングレードを感じさせない

テスラ モデル3 ロングレンジデュアルモーター(日本未投入グレード)テスラ モデル3 ロングレンジデュアルモーター(日本未投入グレード)
モデル3は本当にクールなプレミアムミッドサイズセダンであった。動力性能は驚異的に高く、操縦安定性や旋回性能に優れ、しかも車内はとても静かで明るい。同社のラージサイズセダン『モデルS』と比べると車体は小さく、新素材の使用は限定的でエアサスも未装備であるなど作りは簡素化されているが、それに起因するダウングレード感がほとんどないのも印象的だった。

まずは動力性能。試乗車の0-60mph(0-96km/h)加速タイムは公称4.4秒。トップグレードの「パフォーマンス」の3.2秒に比べると落ちるが、それでも十分にエキサイティングな速さだった。そのフィールは背中をドーンと蹴っ飛ばされるような暴力的なものではなく、二次曲線的にふわっと、それでいて猛然とスピードを乗せ、離れたところに瞬間移動するというイメージ。制御を変えればさらに速くなりそうな感触もあった。

ハンドリングは上位モデルのモデルSがいささか人工的なフィールであったのに比べて格段にナチュラルに感じられた。エアサスではなく、一般的なバネレート固定の金属サスになったためであろうか。ドライブルートの中には交通量が少なく、路面の荒れたワインディングロードが含まれていたのだが、タイトコーナーを曲がるときの前サスペンションのロールが非常に自然で、旧型BMW『3シリーズ』のMスポーツのようにロール角で横Gの強さを察知しながら駆け抜けることができた。

短距離試乗では欠点を見出せないほど刺激的

グラストップを標準装備しており、車内は明るい。グラストップを標準装備しており、車内は明るい。
試乗車はAWDであったが、これもハンドリングにはプラスに寄与しているように感じられた。舗装の荒れたワインディングのタイトコーナーでも、ブレーキングから少しスロットルを踏んでやると前輪が鼻先をコーナーのイン側に引っ張ってくれるような動きが明確に感じられる。それが前述の良いロールを作ってくれる一助にもなっているようだった。

乗り心地はふんわり安楽系ではなく、スポーツセダン風。アスファルトのひび割れ、補修跡、アンジュレーションなどの乗り越え時はゴツッという感触を伝えてくる一方、揺すられ感はごく小さく、気持ちよいくらいのフラットライドだ。テスラは初期のオープンカー『ロードスター』を別にすると、量産を始めたのは2012年。パッケージ的に動的質感を上げるのには有利なEVとはいえ、たったこれだけの年月で乗り味をここまで洗練させてきたのは驚きであった。

今回のショートドライブでわかったのはこのくらい。やたら褒めてばかりだが、モデル3は非常に刺激性が強く、短時間のテストドライブではその興奮に押しやられて欠点らしい欠点を見出せなかったのだ。機会があったら0-100km/h加速5秒台、スターティングプライス511万円の「スタンダードレンジプラス」でロングツーリングを試してみたいところである。

「移動の素晴らしさ」提供するテスラの充電網

徳島・鳴門のリゾートホテル、モアナコーストに設置された急速充電器、テスラスーパーチャージャー。最高出力は120kWと強力。徳島・鳴門のリゾートホテル、モアナコーストに設置された急速充電器、テスラスーパーチャージャー。最高出力は120kWと強力。
今回試乗会が行われた徳島・鳴門は関西から明石海峡大橋や淡路島を経由して四国入りする場所。テスラは7月、その鳴門のリゾートホテル「モアナコースト」に急速充電器、テスラスーパーチャージャーを新設した。充電器の最高出力120kWという強力型である。テスラジャパン関係者は「テスラは移動することの素晴らしさの提供を目指すブランド。四国のゲートウェイである鳴門をテスラスーパーチャージャーの設置場所に選んだのも、四国の旅を楽しんでいただきたいから」と、思いを語る。

設置された充電器は8基。テスラはアメリカでも急速充電器を1基ずつ分散配備するのではなく、多数の充電器を1か所にまとめて設置することをポリシーとしている。都市部では商業施設、郊外エリアではインターステートハイウェイ沿いのガソリンスタンドの一角を借りて設置していることが多い。ネヴァダ州の田舎でがら空きのスーパーチャージャーが並んでいるのを見かけたときは、意地でも充電待ちを出さないという強固な意志を感じた。充電器設置コストが目が飛び出るほど高い日本でこのポリシーを貫くのは困難であろうが、今のところは規模の差こそあれ集中配備を維持している。

テスラによれば、テスラスーパーチャージャーを使えばモデル3に30分で最大で走行距離270kmぶんの電力を供給できるという。充電量に関する詳細な数値は明らかにされていないが、平均電力消費率が1kWhあたり6.5kmとして、30分で40kWh入るという感じではないかと推察される。なお、テスラはアダプタを介すれば日本のCHAdeMO急速充電器も使用可能。バッテリー容量が大きいだけに従来型のCHAdeMO充電器だと充電ペースの遅さにストレスがたまりそうだが、徐々に設置場所が増え始めている出力90kWの新型充電器であればいいペースで充電することもできるだろう。

現状では販売拠点が少なく、日本でのブランド浸透度も低いテスラだが、モデル3のクルマ単体での商品力が価格に対して十分以上に高いことは疑いの余地がない。が、日本はことクルマに関しては消費動向がきわめて保守的な国。果たしてミッドサイズセダン、モデル3の登場でその状況にどういう変化が起こるか、興味深いところである。

テスラモデル3のトリコロールテスラモデル3のトリコロール

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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