サプライヤーと完成車メーカーの関係性を変えうるCASE…フランクフルトモーターショー2019

フランクフルトモーターショー2019
フランクフルトモーターショー2019全 10 枚

2年に一度、ドイツ経済の中心地フランクフルトで開催される国際自動車ショー、フランクフルトモーターショー。今回は、9月10日(報道関係者向けの「プレスデイ」)から22日まで、約2週間にわたって市内中心部の「フランクフルトメッセ」で行われた。

【画像全10枚】

各メディアですでに報じられているように、最近のモーターショーの例にもれず今回の「IAA2019」(フランクフルトモーターショーの正式名称)でも、完成車メーカー、サプライヤーの多くは電動化に関する展示にスペースと時間を割いた。いわゆる「ディーゼルスキャンダル」の直後であった前回は、大手完成車メーカーのブースには完全電動化をアピールするコンセプトカーの展示が多かったと記憶している。

欧州で特に厳しいCO2排出量規制

2年を経た今回、各社の展示は既に市販されているハイブリッドなども含め、現実的なソリューションが増えた印象があった。電動化がそれぞれの企業や商品のブランドイメージ構築ツールから、現実的なビジネス(=販売)のための製品面に及んできたと考えられる。特にドイツ系を中心とする欧州メーカーが電動化に積極的に取り組む理由の一つが、世界で最も厳しい二酸化炭素排出量規制であろう。

EUにおいては、2020年から2021年までの二酸化炭素排出量が1km走行あたり95グラム、2025年と2030年の目標値が同81グラムと59グラムに規制されている。一方、日本では2020年に105グラム、2030年の目標が同91グラム。アメリカに至っては、2020年が120グラム、2025年で93グラムとなっており、いかに欧州でのCO2規制が厳しいかが理解できるだろう。地球温暖化ガスの排出量目標値をクリアするために、特に欧州メーカーにとって電動化は避けて通れない道となっている。

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EVとPHEV

その様な環境ではあるが、バッテリーに蓄えた電気のみで走行する電気自動車(EV)の生産では、ドイツ勢が遅れを取っている。日産のOEMで販売しているルノーを除き、世界で販売されているEVは、テスラをトップに上位10社をアメリカ、日本、韓国および中国企業が占めている。一方、限られた距離のみを電動走行できる「プラグインハイブリッド(PHEV)」に目を向けると、欧州での販売台数が中国に次ぐ世界第2位となる。完全電動化には車両の開発面だけでなく、充電インフラの整備など多くの課題解決が必要となる。そのため現在の欧州では、将来に向けたEVの開発も進めながらPHEVを現状のソリューションととらえているわけだ。

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サプライヤーの重要性

ご存知のように、自動車の歴史が世界で最も古いドイツ。この国には、完成車メーカーだけでなく部品メーカーの多くもその本拠を置いている。売り上げ規模では世界最大を誇るボッシュや、日本ではタイヤのイメージが強いコンチネンタルなどの大手は、複数の部品を組み合わせて完成車メーカーに供給する、「統合システム」サプライヤーに変貌を遂げた。電動化や自動運転など、クルマの将来は、基幹部品の多くを開発・設計・製造しているこうしたサプライヤーが握っていると見ることもできる。

オートマチックトランスミッションなどの駆動系や「ザックス」ブランドのダンパーなどシャシ関連技術で有名なZFも、自動車業界の「メガトレンド」である安全、高効率と自動運転分野に積極的な投資を行っている。同社の電動化製品ラインナップを見ると、「全方位戦略」なのがうかがえる。EV用純電動ドライブとしては、2018年に最高出力(ピークパワー)150kWのユニットを量産開始。先ごろ発売されたメルセデス初のEV「EQC」には、同社の電動ドライブが使用されているようだ。さらに2021年には、多様なパッケージングに対応可能な100kWバージョンの量産も計画されている。ハイブリッドに関しても、最大で25kWを発生するマイルドハイブリッド/プラグインハイブリッド・システムが、既にBMWなど多くの欧州系市販車に採用されている。

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また、2022年には同社のベストセラーとも言える8速オートマチックトランスミッション(AT)「8HP」をベースにした、高効率なプラグインおよびマイルド・ハイブリッド・システムも自動車メーカーへの供給が始まる予定だ。48Vのマイルド・ハイブリッド・システムは、およそ22kWのピークパワーを発生。一方のプラグイン・システムは、高電圧を使用してピーク時には125kWを発生するという。

ZFのハイブリッド8ATZFのハイブリッド8AT

これはZFの例だが、各サプライヤーともEV用の完全電動ユニットから、高電圧を使用するハイブリッド/プラグインハイブリッドおよび小型のバッテリーとモーター兼ジェネレーターなどを使うマイルドハイブリッドに至るまで、電動化に関するソリューションを幅広く用意している。性能やコスト、設計・生産面など多岐に亘る自動車メーカーのニーズに応えるためだろう。

「100年に一度の変革期」が自動車産業の構造変化をもたらすか?

トヨタおよびトヨタ系部品メーカーが「100年に一度の変革期」とよぶ現代。しばしば「CASE(コネクテッド=つながる、オートノマス=自動運転、シェア=カーシェアリング、エレクトリフィケーション=電動化)」という言葉で自動車産業のトレンドが語られる。自動車に必要とされる技術が新しく複雑になるほど、それぞれの分野に専門性をもった企業が台頭するだろう。サプライヤーは、大型M&Aや技術提携などパートナーシップをアグレッシブに繰り返し、そうしたノウハウを急速に身につけている。

一方で、自動車メーカーは引き続きクルマのデザイン(造形面)や総合的なパッケージング(設計)、完成車の生産など伝統的な分野への莫大な投資が必要とされる。今後、駆動系や自動運転、コネクテッドなどのシステムはサプライヤーが開発し、完成車メーカーはそれらシステムのパッケージングを行うような分業化が進む可能性も考えられなくはないだろう。動力が内燃機関(エンジン)から電気駆動ユニットに代わっていけば、その傾向はさらに強くなる。「100年に一度の変革期」が、自動車産業全体の構造をも、変化させていく可能性は大いにあるのではないだろうか。そんなことを考えさせられた、今回のフランクフルトモーターショーだった。

《石川徹》

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