レッドブルを支えるAT&TのITソリューション…F1 日本GPでアルボンが4位

F1日本グランプリ
F1日本グランプリ全 11 枚

F1日本グランプリの決勝レースが10月13日に行われ、アストンマーティン・レッドブル・レーシング(以下、レッドブル)のアレックス・アルボンが4位入賞を果たした。

レッドブルのパートナー、AT&Tが開幕直前の10月10日にプレスブリーフィングを開催、レッドブルにおけるAT&TのITソリューションの活用事例が紹介された。AT&Tはアメリカの最大手の通信会社の1つで、レッドブルとは2011年の5月からパートナーシップを結んでいる。

F1の世界は1/1000秒を争う非常にシビアな現場で、すべてにおいて最重要とされているのは「スピード」である。それは単純にドライバーやマシンの速さだけでなく、セッティングの変更やマシン開発、ストラテジーの変更などありとあらゆる“意思決定”が必要とされる。最終的に必要となるのは“コミュニケーションを円滑化”することで、それをITという観点から支えているのがAT&Tの役割だ。

世界各国で開催されるF1、どの国でも変わることのないAT&TのITインフラストラクチャ

世界中を転戦するF1において、どのサーキットにおいても真っ先に設置されるのがAT&Tのネットワークだ。チームスタッフが到着するときには、合計で約45トンにもなるというすべての通信環境/通信機器が使用できる状態で準備されているというから驚きである。

ひとつひとつのサーキットが固有の特性、形状が違うのでサーキットに合わせたセッティングが必要で、レースとレースの間では、次戦の特性に合わせて約1000点に及ぶパーツがアップデートされるという。

例えば、モナコの場合タイトコーナーが連続するグリップの低い市街地コース、最も高速なコースとされるモンツァでは直線が主体でストレートスピードが要求され、真逆のアプローチが必要となる。それに対応するには、フロントウィング、リアウィング、フロアをデザインし直す必要があり、マシンセッティングとあわせてパフォーマンスが最大化される。また、パーツ開発だけでなくサーキットごとに部品の組み合わせを追求され、バーチャルでのシミュレーションを迅速に行うことで、レースごとの最適なパッケージングが導かれている。

必要不可欠な安全性の高い通信環境と相反して必要となる通信速度の両立

AT&Tは“セキュアなコネクティビティ”つまり安全性の高いネットワーク環境を提供している。レッドブルには800人のスタッフが従事しており、全員のコミュニケーションをオープンかつ迅速にしなければレースに勝つことはできない。しかし、実際にF1のパドックに入れる人数は規定で定められており約60人。残りのスタッフは本拠地であるイギリスのミルトン・キーンズ、エンジンサプライヤーであるホンダのスタッフは栃木県のHRD SAKURAなど、世界中ににキーパーソンが点在しておりワールドワイドでつながる必要がある。

加えて、非常にセンシティブなデータを送信する必要があり、財務的な情報、パーソナルな情報、マシンの情報など絶対に情報を漏らしては行けない。AT&TではネットワークインフラやVPNでそれらの情報漏洩を防いでいる。また、スタッフのコミュニケーションを円滑化させるのに必要なメッセンジャー、IP電話、ビデオ会議システムなどの通信環境を整えている。

安全性を高めると必然的に通信速度は遅くなるが、AT&Tの技術で最適化されており、最もイギリスから遠いオーストリアでも300ms(=0.3秒)の遅延に留められている。AT&Tのネットワークインフラがあることで、世界中どこにいても安定した通信環境が確保されていることの証明である。

偶然ではなく必然的にもたらされたドイツGPでの優勝

第11戦ドイツで開催されたホッケンハイムGP、このレースでは雨によって状況が刻一刻と変化する状況判断の難しいレースとなった。結果として5回のピットストップかつ3種類のタイヤ(ドライ、エクストリームウエット、インターミディエイト)を履きわける必要があり、最適なストラテジーを引き出すのにもAT&Tのソリューションが活用された。

レーススタート時、雨は振っていないものの非常に路面が濡れていたのでエクストリームウエットを装着してスタート。しかし、だんだん路面は乾燥しはじめて1回目のピットでドライへ変更。しかし、28週目に突然雨が振り始め、ルクレールのクラッシュを皮切りにコースアウトが多発、的確なタイミングでタイヤを交換すべきかの意思決定が必要となった。この時、イギリスではインシデントを分析するチームで瞬時に解析が行われ、ドイツではドライバーからのフィードバック、トラックサイドでの状況判断からストラテジーの変更が検討される。イギリスとドイツで瞬時にやり取りが行われ最適なストラテジーが導かれ、クリスティアン・ホーナーが最終決定を下すことでストラテジーが変更される。

セーフティーカーの介入も考えられたが実際に入ることはなく、チーム全体でロスタイムを防ぐにはダブルピットストップ、つまり2台同時でのピットストップが最適であると判断された。結果として、2台ともにポジションダウンを防ぐことができ、正しいタイミングで正しいタイヤを選択する意思決定がスピーディに行えたことで、優勝へつながった。

ホンダとの関係がうまくいったのも、AT&Tのネットワ―クインフラが活用された

レッドブルがホンダ製のパワーユニットを搭載するという挑戦は2018年6月19日に発表され、2019月2月13日に初めて車両に搭載して行うテスト走行が決まっていた。猶予は8カ月しかなく、レッドブルとしては14年ぶりの新しいサプライヤーと組むというこれまでにない経験であった。必然的にパワーユニット関連の情報が必要となり、AT&Tへ助けをもとめた。そこでAT&TはHRD SAKURAに専用回線を共有することで、ホンダとエンジニアリングのセンシティブなデータを共有した。

さらにTV会議を定期的に行い田辺テクニカルディレクターをはじめとして、エンジニアの意見を積極的に交換することで、お互いの関係性を深めていった。実際にテスト走行を迎えたとき、チーム代表のクリスティアン・ホーナーからも“旧知の仲であるかのよう”とされたほど両者の関係は構築されていた。

これらの成功体験があったからこそ、今シーズンのレッドブルの活躍へとつながっている。

<取材協力 AT&T>

《後藤竜甫》

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