“耐久性マニア”…ホンダe のバッテリーは小容量、その大きな理由

ホンダe(東京モーターショー2019)
ホンダe(東京モーターショー2019)全 8 枚

フランクフルトモーターショー2019でホンダが発表した新型EV『ホンダe』(Honda e)。主電動機は最高出力136psと152psの2種類で後輪駆動、バッテリー総容量35.5kWh、欧州の計測法にもとづく1充電航続距離220km等々のスペックは既報のとおり。

今日、EVはロングレンジ化が進み、航続400km、500kmといった威勢の良い数字が飛び交っている。そのなかで35.5kWh、220kmというのはかなり控えめだ。バッテリーの実使用範囲を総容量の90%とみた場合、電力消費率は1kwhあたり7km弱。10→80%の急速充電で旅をすると仮定すると、おおむね140~150kmごとのチャージとなると予想される。ターゲットはシティコミューター、ないし近距離用途であろう。

が、ホンダは漫然とバッテリーを小容量でまとめているわけではない。小さいバッテリーを広い温度範囲でフルに使えるようにするため、バッテリーパックに高度な温度管理システムを実装している。

「バッテリーの能力をフルに発揮しながら劣化も防ぐ場合、大事になるのはまず低温、高温の両方向に著しく逸脱しないようにすること、さらにバッテリーモジュールごとの温度のバラつきを小さくすることです。ホンダeのバッテリーパック開発でとくに力を入れたのは高温側で、冷凍素子を新採用することで冷却性を飛躍的に高めました」

本田技術研究所のEVエンジニアは今年7月に技術公開を行ったさいにこのように語っていた。

ホンダは少量生産のBEV(純電気自動車)『フィットEV』の開発時には、低温時に大量のエネルギー回生を行うとバッテリーが急激に劣化する現象を嫌い、エネルギー密度は低いものの、温度特性と耐久性に優れた東芝のチタン酸リチウムイオン電池を採用していた。EVの急速充電規格を策定するCHAdeMO協議会の研究会でも、実路において数千回深充放電を繰り返したときの容量低下が、数パーセントに抑えられた、という研究発表を行っており、ライバルメーカーからも“耐久性マニア”などと評されている。

PHEV(プラグインハイブリッドカー)の『クラリティPHEV』のバッテリーパックに水冷式温度管理システムを実装するなど、市販車でも温度管理に神経を使ってきたが、ホンダeのシステムはそれよりさらに強力。容量は小さいが、そのポテンシャルを四季を通じて発揮できるとすれば、ホンダeはロングレンジタイプともまた異なる面白さを見せてくれることだろう。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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