特務機関「NERV」の災害対策車両、三菱自動車など共同製作…開発の経緯

特務機関NERV制式 電源供給・衛星通信車両5LA-GG3W(改)
特務機関NERV制式 電源供給・衛星通信車両5LA-GG3W(改)全 15 枚

ゲヒルン、三菱自動車工業、スカパーJSATは、災害時における長期停電、通信網の途絶に備え、防災情報配信サービスの継続と近隣自治体への支援を目的とした災害対策車『特務機関NERV制式 電源供給・衛星通信車両5LA-GG3W(改)』を共同製作した。

製作された車両は2台あり、それぞれ『初号機』、『弐号機』と名付けられ、『初号機』は東京エリア、『弐号機』は札幌エリアで2020年2月1日から運用が予定されている。この発表に伴い、2019年12月23日、銀座にあるMI-Garden GINZAではプレスイベントが行われ、実際の車両のおひろめが行われた。

災害時の特務機関NERV運用には電力と通信の確保が最重要課題

最初にゲヒルン株式会社代表取締役・石森大貴氏が登壇し、この車両製作に至った経緯などが語られた。そもそもゲヒルンは、特務機関NERV(@UN_NERV)をツイッター上で運用し、防災・気象情報の解析および情報配信を行っている。

代表取締役石森氏は、故郷である石巻が東日本大震災で被災した際に、当時現地では多くの住民に大津波警報が伝わっていなかったことを知り、防災インフラ・情報伝達の仕組みについて取り組むべき課題があることを感じたとのこと。それ以来、お天気カメラの製作、独自の地震観測網の構築、災害情報の配信などに取り組み、気象庁から大雨・洪水警報の危険度分布の通知サービス協力事業者に選定される。ゲヒルン株式会社代表取締役・石森大貴氏。ゲヒルン株式会社代表取締役・石森大貴氏。

これをきっかけに今度は、災害時に最も必要な情報を配信している以上、自分たちが災害に見舞われたときのことを想定する必要があると考え、無停電ビルの設計などを計画。

ところが、そんな計画のさなかに北海道胆振東部地震が発生。ゲヒルンのグループ会社も石狩市にデータセンターがあり、サービス停止には至らなかったものの、電力や発電機の燃料確保に奔走した。このことから、災害時には電力と通信の確保が最重要事項だと結論づけ、BCP(事業継続計画)のために考案したのが、今回発表となった車両とのこと。

1台で家庭に最大10日間の電力供給が可能なアウトランダーPHEV

今回発表された災害対策車は、ゲヒルンの計画に賛同した三菱自動車が『アウトランダーPHEV』をベース車両として提供。スカパーJSATが、衛星通信サービス・平面アンテナ端末を提供している。

アウトランダーPHEVは、高出力モーター、大容量バッテリー、そして2.4リットルのガソリンエンジンで構成されるプラグインハイブリッドEVシステムを搭載。100V(最大出力1500W)のコンセントを車内2か所に設置。満充電・ガソリン満タンであれば、一般家庭最大約10日分の電力供給が可能な車。

スカパーJSATが提供する平面アンテナは米国カイメタ社製の『KYMETA u7』と呼ばれるもの。自動衛星補足が可能なため、走行中の移動体でも双方向通信が利用できる。これにより、災害時においても機動性の高い運用が可能。今回用意される2台の災害対策車のうち1台のルーフトップに、平面アンテナが搭載されている。車両内にはアンテナ用のインターフェースボックスと、衛星通信モデムが設置され、これだけで衛星通信システムが構築できるとのこと。カイメタ社製アンテナ。省スペースなことも売りのひとつだ。カイメタ社製アンテナ。省スペースなことも売りのひとつだ。

衛星安否確認サービス『Q-ANPI』も搭載

ゲヒルンが協力を呼びかけたことにより、内閣府宇宙開発戦略推進事務局準天頂衛星システム戦略室から、準天頂衛星「みちびき」を利用した衛星安否確認サービス「Q-ANPI」の端末も貸与され、本車両に搭載している。これにより、災害が起きた際には、避難所の位置や開設状況、被災者の数などが、みちびき経由で管制局に送信でき、被災状況の把握、救難活動に不可欠な情報をいち早く伝達可能になる。

自動、共助、公助がキーワードの本計画

今回の災害対策車両の製作は、『自動』、『共助』、『公助』といった3つのキーワードがポイントとなっている。

『自動』とは、自力で電力と通信を確保し、災害時でも自社のサービス提供を継続できるようにすること。『共助』とは、避難所でWiFiサービス、IP電話サービスなどの通信網の提供や、充電サービスといった電力の提供など、近隣自治体に協力すること。『公助』とは「Q-ANPI」を届け、避難者の安否や避難所の状況を防災期間に伝達するということ。

今回製作した車両をモデルケースとして、全国の自治体や企業で電力と通信を「備蓄」するという考え方を持ってもらいたいと石森氏は締めくくっていた。

《関口敬文》

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