オーディオの不思議、ケーブルでなぜ音が違うのか? 後編

オーディオの不思議。ケーブルでなぜ音が違うのか?(後編)
オーディオの不思議。ケーブルでなぜ音が違うのか?(後編)全 2 枚

ケーブルの設計は難解な部分が多い。各メーカーが独自の理論を持って高音質化を目指している。そんな中、M&Mデザインが考える高音質ケーブルの条件、さらにはケーブル設計の重要ポイントについて設計現場の突っ込んだ話をほんの少し開示してもらった。

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高音質なケーブルを作るために
もっとも大切なのは優れた構造だ

高品質ケーブルの魅力についてお伝えするこの企画、引き続きM&Mデザインの吉岡氏に話を伺った。後編の今回は良いケーブルとは何かを同社の設計を通じて導き出した理論について教えてもらった。各メーカーでもの作りのアプローチや考え方が違うケーブルだが、ここからはM&Mデザインが考える良いケーブルに必要とされる要件について解明していくこととしよう。

そもそも良いケーブルを作るためにはどのような要件が大切なのだろう?

「さまざまなテスト、試聴を実施してきて私が強く感じているのはケーブルの音の善し悪しを左右するもっとも大きなファクターは“構造”だと思っています。これはケーブルにどのような太さの導体を何本用いるか、さらにより線をどのように設定するか、また同軸構造なのかプラス/マイナスを独立させた構造なのか、シース(外皮)や絶縁体にどのような素材、構造を持たせるかなど、多岐にわたっています。それらをひとつひとつ設計して、どの構造がもっとも高音質につながるかを試験して導き出していきます」。

いかに良い素材を使っていても構造が最適でないと高音質なケーブルは望めないという。例えばラインケーブルでは同軸構造を取るモデルも多い。しかしプラス/マイナスを別々の線としてレイアウトする構造もある。M&Mデザインでは後者の構造を採用しているのも象徴的。実際に構造の違いを試聴で試し、多くのテストケースの中からM&Mデザインとして優れているとして選び出した構造がこれだったのだ。これはほんの一例に過ぎないが、すべての構造をこうしてひとつひとつ設計~テストを繰り返して優れたケーブルを追求し続けてきたのがM&Mデザインの開発の歴史でもある。良い音を得るために飽くなき追求を続けていることがよくわかるエピソードのひとつだ。

「構造に次いで重要なのがケーブルを形作っている材料です。絶縁体やシースの素材などがそれです。そして3番目には重要なのが導体の素材でしょう。導体の純度や組成などがクローズアップされることが多いですが、それだけでは高音質なケーブルを作れるわけではありません。あくまでも構造や材料を組み合わせた総合的な設計が音質を高めるのだと考えています」。

ケーブルの振動を押さえ込む素材選びや
導体の設計&純度でも大きく音を左右する

M&Mデザインではケーブル設計の中で構造に次いで大切とされているのが材料だ。絶縁体やシースに求められる要件とはどのようなものがあるのだろう?

「ここにも数多くの工夫やアイデが込められています。すべては開示できないのですが一例として振動対策があります。ケーブルに電流が流れると微弱な振動が起きます。これが音を濁らせる原因のひとつです。対策としていかにこの振動を押さえ込むかがテーマです。導体が固定されず振動しているようだと音もフラつく傾向にあります。そのためM&Mデザインでは振動をがっちり押さえ込むという思想で設計を行っています。制振タイプのシースである高分子ポリオレフィン系樹脂を用いているのもそのひとつの手法です」。

絶縁体やシースだけにも数々の独自設計が込められているというケーブル。そのひとつひとつの積み重ねによって高音質化が図られている。単純な構造に見えるケーブルだが、実はノウハウの塊でもあることがこの設計手法を見ただけでも理解できるだろう。

ケーブルの中でも脚光を浴びがちな存在が導体だろう。各メーカーでさまざまな素材や太さなどで独自設計されていて、それが音に結びつくことを盛んにアピールしている。しかしM&Mデザインの基本的なスタンスは「シンプル・イズ・ベスト」。素材を混ぜ合わせたり異径の導体を組み合わせるといった方法で導体を複雑にすると位相ズレなどを起こす可能性が高まっていくという。それを避けるためにはシンプルで高品質な導体を用いるのがポリシー。

「純度もよく指標にされる数字です。当社でも最高レベルの7Nを使用しているモデルがあります。しかし単純に純度が高い方が良い音であるとも限らないのがケーブルの難しいところです。最適な構造や素材を組み合わせる設計が欠かせないのはそのためです」。

試聴によるテストを繰り返し
同時に理論的な裏付けも備える

M&Mデザインでは開発から販売までを一貫して自社で手がけているのも隅々にまで気を配った製品を作ることができる要因でもある。構造や材料、導体などの重要ポイントに加えて、ケーブルを仕上げる際の作業工程でも高音質のための作業内容を徹底している。例えばハンダ付けひとつとっても実はノウハウがあるのだ。ラインケーブルにプラグを取り付ける際にハンダ付けの方法次第で音が変わってしまうほど繊細だという。ここから先は企業秘密の領域に入るのだがケーブルのポテンシャルをフルに発揮するためのハンダ付けの技術にまで気を配るのも同社のこだわりだ。

そんなM&Mデザインの開発には代表の吉岡氏を含めた少数のスタッフが行っている。高音質化のためのアイデア出しと、それに対する複数のテストケーブルを作って試聴テストを繰り返して最終案を絞り込んでいく。さらにその上で理論を裏付ける作業を延々と繰り返す。その中から“これだ!”を思えるケーブルができるといよいよ製品化するという流れだ。

「ケーブルの設計にもしっかりとして理論があります。高音質にはワケがあるんです。それをこれまでの経験から独自の方程式として蓄積しているからこそ、論理的に良い音のケーブルが作れるんです。高音質の理由を説明できる、裏付けがしっかりとあることもM&Mデザインでは重視している点です」。

インストーラー目線でケーブル開発を行っているM&Mデザインの吉岡氏。机上の理論だけでは無く、現場感覚を大切にした試聴を判断基準にしているのも彼らしいアプローチだ。しかし、その上で感覚だけでは無く高音質を裏付ける技術的な裏付けも備えているのも特徴。これは若い頃からバイクレースを行い、エンジンチューニングなどを手がけてきた吉岡氏の開発手法でもある。良い素材や独自構造をアピールするのでは無く、あくまでも音の良さを追求するのが同社のポリシー。ハイエンドユーザーはもちろん、エントリーを含めた幅広いユーザー層に満足感の高いケーブルを提供し続けている同社。今後もケーブルの可能性を追求する開発を続けていく。

オーディオの不思議。ケーブルでなぜ音が違うのか?(後編)

《土田康弘》

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