市販モトクロッサーにも「トルクコントロール」搭載、そのねらいとは…ホンダ CRF450R 開発者に聞いた

全日本モトクロス2019年チャンピオン山本鯨選手
全日本モトクロス2019年チャンピオン山本鯨選手全 14 枚

2020年モデルのホンダ『CRF450R』『CRF450RX』には、急な路面状況の変化によるリアタイヤの空転を抑制し、動力を効率よく後輪に伝達する「Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)」が初採用されたのがトピックだ。

【画像全14枚】

公道向けモデルでは『アフリカツイン』などに導入済みのHSTC。ホンダは2019年モトクロス全日本選手権に参戦する「チームHRC」の山本鯨選手、成田亮選手、MXGP(FIMモトクロス世界選手権・最高峰クラス)のティム・ガイザー選手の車両にすでに投入済みで、山本鯨選手、ティム・ガイザー選手がそれぞれシリーズチャンピオンを獲得した。

CRF450R開発責任者代行・中島広志さん(本田技研工業株式会社 二輪事業本部ものづくりセンター)に、詳細を教えてもらった。

HSTC搭載で何が変わる?制御の違いとは

ホンダCRF450R開発陣ホンダCRF450R開発陣
----:市販競技向けモデルであるCRF450RにHSTCを採用した狙いは?

中島さん(以下敬称略):クイックターンやスリッピーな路面において、後輪のスリップを低減させ、加速時の車体安定性を向上します。

----:ライダーの感想は?

中島:「ライディングに集中できるようになった」とコメントをもらっています。(繊細な)スロットル操作からまったく解放されるというわけではありませんが、他の操作に神経を使えるというのが共通の意見です。

----:たとえば半クラッチを使って慎重になっていた場面でも、気にせずアクセルを大きく開けることができて左手が楽になったりとか?

中島:そうです。

----:制御はどのように?

中島:ΔNe(デルタ・エヌ・イー=エンジン回転数勾配)が規定値以上となった際にエンジントルクを制御し、駆動力を抑えます。モードは3段階(下記の通り)あり、介入させないOFFも選べます。

・MODE1(介入:弱)
タイトターンでのホイールスピンを抑え、旋回性能を向上させる。
ΔNe:大
抑制駆動力:小

・MODE2(介入:中)
MODE1とMODE3の間の設定。
ΔNe:中
抑制駆動力:中

・MODE3
マディでスリッピーな路面でホイールを抑える設定で、強いトルクコントロールを実施。
ΔNe:中

----:ΔNeというのは、エンジン回転数が極端に上昇する際の度数で、つまり駆動輪が空転しているとECUが判断し、駆動力を調整するということですね。モードはハンドル左のスイッチにて切り替えですが、走行中も可能ですか?

CRF450R開発責任者代行・中島広志さん(本田技研工業株式会社 二輪事業本部ものづくりセンター)CRF450R開発責任者代行・中島広志さん(本田技研工業株式会社 二輪事業本部ものづくりセンター)
中島:できます。

----:「チームHRC」のマシンは、専用のモード設定がおこなわれているのですか?

中島:はい。全日本モトクロスでいうと、グリーンパーク弘楽園のようなスリッピーなコースですとMODE3に近い設定、HSR九州のようなトラクションのよいコースですとMODE2に近い設定を使いました。

2020年式CRF450R2020年式CRF450R
つまり、すでにトップカテゴリーに実戦投入し、そこで実力を証明済みというわけである。満を持して市販競技向けモデルにも搭載した「Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)」。この技術は『CBR1000RR』や『X-ADV』など幅広くホンダ車に使われている。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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