【川崎大輔の流通大陸】コロナショック、自動車産業の今

世界ではしる日本メーカーの自動車
世界ではしる日本メーカーの自動車全 1 枚

政府は5月6日に期限を迎える緊急事態宣言を5月31日まで延長にする方針を明らかにした。宣言が1か月延長された場合、個人消費が大きく冷え込み、新たな失業者が77万人に増えるといった厳しい予測が出ていた中、自動車関連企業はこれからどのようになっていくのか。

コロナショックの長期化

リーマンショックの金融危機とは異なり、コロナショックの場合は感染抑止が最大の処方箋(せん)となる。しかし有効なワクチンや治療薬がない中で、物理的に外出を控えて、人と人との接触を回避する以外に決め手がない状況となっている。

世界中でコロナショックは長期化することは間違いない。特に、現在進行形のコロナのパンデミックの将来を見通すためには、約100年前の1918年から1920年に大流行したパンデミックであるスペイン風邪の統計が参考になる。スペイン風邪は流行していた間に、何回か感染が爆発的に広がる波があった。1度、収束したように見えても、またすぐに感染が爆発し、大きな波が来るのである。

大きな波は3回あったと言われている。つまりスペイン風邪の歴史をコロナに当てはめるとすれば、(1)1か月から2か月では絶対終わらない。1月からコロナが始まったとして、最もピークは半年後の6月くらい。(2)『第1波』が終わり、これから『第2波』『第3波』が来る。(3)感染者は世界中でもっと増える(5月5日現在では360万人、死者25万人だが、スペイン風邪は5億人、死者500万人)。

NYの知事も1年半のステップが必要だと伝えている。また、京都大学の山中教授に関しても1年以上は続くだろうと独自の見解を出している。ハーバード大学の研究者も2022年くらいまで流行は続くと伝えている。WHOに関してもワクチンができるのは最短で1年との表明をしている。5月中にコロナが終息するということはなく長期化を覚悟する必要がある。

コロナショックによる新車需要の消滅

新車販売の状況は、日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会が5月1日に発表した4月の新車販売統計で、総台数は前年同月比28.6%減の27万0393台となった。

新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、販売の落ち込みは拡大した。メーカーでは、三菱6割減、スバル5割減、スズキ・日産は4割減と大幅に減少。消費税増税以降低迷した販売台数は、コロナウイルス拡大による外出自粛によって更に打撃を受けた。買い替えを検討していたユーザーが購入を先送りする動きが見られている。4月になって店頭来場者が激減している。

また、国土交通省は4月16日、政府が新型コロナウイルスの感染爆発を食い止めるための緊急事態宣言を全国に広げたことに伴い、車検証の有効期間を延長すると発表した。40道府県での、自動車検査証(車検証)の有効期間が2020年4月17日から5月31日までの自動車について、有効期間を6月1日まで延長した。車検のタイミングでの買い替えに影響を及ぼすことになる。そうした実情が反映される5月以降の販売実績は、更に深刻化する見通しだ。

新車販売ディーラーでは、メーカーの自動車工場停止による納車の遅れなどもあり、販売に影響を及ぼしている。この回復には時間がかかる。理由は、少し前まで減産の要因は部品供給体制(サプライチェーン)による部品調達の問題だった。しかし、4月以降最大の理由は需要の消失となった。新車ユーザーは、先行き見えない状況で消費者心理の悪化、外出自粛による経済への影響がダブルパンチとなり、高額な耐久消費財の購入にブレーキがかかっている。

コロナショックによる中古車価格の下落

2019年10月の消費増税、そして2020年1月以降のコロナショックにより、中古車相場は暴落している。中古車相場は、景気や災害で大きく動くため、増税による不景気や、地震・台風といった災害で影響を受ける。現在の中古車市場の状況は、増税と災害のダブルショックで、市場が悪化した。増税前の7月から9月は、中古車相場は上向きだった。原因は駆け込み需要だ。更に中古車販売店も当面の在庫を、増税前に仕入れている。結果的に、中古車オークションの相場も上昇した。

現在は、中古市場の在庫が4月に入ってあれている状況だ。中古相場は需要と共有で決まるが、現在は供給過多だ。在庫があれている理由としては2つ。1つがコロナショックにより、消費マインドが低下したため。経済の先行き不透明な現状において、消費者の財布の紐がかたくなっている。2つめの理由として、世界各地の中古車仕向け地に中古車が送れなくなったためだ。日本からのモノの輸出規制と同時に、世界各地の仕向け地で行われている都市封鎖(ロックダウン)などによって輸出需要が急速に縮小した。輸出向けで引き合いが強い低年式車の取引相場が急落。相場が大荒れとなった。

緊急事態宣言を受けて中古車販売店でおこったことは、3月の中古車登録台数は2.4%減少と小幅なマイナス。しかし、4月以降は更に減少となる可能性が高い。新車に比べて中古車は高い需要を確保しているが、店舗によっては、販売不振の兆候が出てきている。

中古車店「ガリバー」を運営する中古車販売大手IDOMは「4月の来客数は昨年に比べて10~15%減少した」との記事があった。別の小規模な中古車ディーラーは販売台数が前年比の4分の1と聞いた。キャッシュを確保するため、損覚悟で販売するケースも出てきている。ディーラーでの下取り価格は通常時の半値ほどと低く、実際には下取りを中止している店も出てきている。

リーマンショック前の2005年における普通車の中古車販売台数はおよそ450万台だが、リーマンショック後の2009年は350万台と、100万台近く減少。今回のコロナショックはそれを上回ると私は予想する。

なお、中古車価格の下落は、自動車メーカーや自動車ファイナンス、レンタカー会社など、それ以外の自動車バリューチェーンに大きな影響を与える。高く想定していたリース資産価値の減額を余儀なくされるからだ。また、レンタカー会社が保有車両を売却しても得られる金額が減少する。

比較的安定している自動車整備

現段階において自動車整備会社でのコロナショックの影響は少ない。整備工場ではクラスター感染がおこるような環境ではなく、コロナウイルスの影響があっても法定整備、車検は必要だ。普段、利用している自動車がこわれたり事故にあったら修理が不可欠で、コロナウイルスによってやめるというのは少ない。

しかし、新型コロナウイルスは整備需要にも影響をもたらすのか、と、日本自動車整備振興会連合会が公表した第48回「整備需要等の動向調査」では、2020年1~6月の整備売り上げに対する下振れを懸念している。入庫の台数は減少傾向になる可能性があるということだろう。また、課題としては自動車部品などの材料調達の維持という問題もある。

コロナショックの真っ只中にあっては、1週間先のことすらもわからない状況なのは理解できる。直前のことに意識が向かってしまうのは当然だ。しかし、現状を把握しながら、先の未来、つまりアフターコロナについて考えることは大切だ。次のコラムではアフターコロナの自動車産業について記してみたい。アフターコロナの時代をたくましく生きていくことが今我々にとって重要なことだと考えている。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、合同会社アセアンプラスコンサルティング にてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。17年に設立した株式会社アセアンカービジネスキャリアでは、ベトナムからの自動車整備エンジニアを日本の自動車関連企業に紹介する外国人紹介を行う。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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