【日産 キックス 新型】クルム選手楽しそう: 加速性能はわからないがスタビリティは動画でもわかる…e-POWER

日産キックス新型
日産キックス新型全 4 枚

6月24日に発表された新型日産『キックス』。全車e-POWER仕様で30日より販売される。コンパクトSUVの電動化や300万円以下という価格に注目が集まるが、スペックでこだわったのは加速性能、静粛性、それに車内スペースという。

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ハイブリッド車が強い日本市場において、e-POWERは、日産電動化戦略の柱のひとつでありアフターコロナの業績にも大きく影響する存在だ。先の決算発表で公開された「NISSAN NEXT」でも、日本市場はゴーンショック、コロナショック後の再生のため注力する市場として位置付けられている。このとき投入が発表された、EV 2車種、e-POWER 4車種の皮切りとして発表されたのが新型日産キックス e-POWERだ。

加速性能について、たとえば0-100km/hが何秒といった具体的な数値は非公開とのことだが、車両重量が1625kgとノートe-POWERより100kgほど増えているが、トルクで254Nmから260Nm(2%アップ)、最大出力が80kWから95kW(19%アップ)となっている。95kWは馬力換算では129psとなる。

実際の加速性能やフィーリングは運転してみないとわからないが、マツダ『CX-30』(SKYACTIV-G)やBMW『X1』などと比較してもトルクの数値は負けていない。260Nmは、これらの車種のディーゼルエンジン仕様よりは小さいが、ガソリンエンジン仕様で250Nm以上のモデルは少ない。モーターのトルク特性として、低速からフルに使えることを考えると、フィーリングは向上していることが期待できる。

発表会では、SUPER GTで日産車チームのエグゼクティブ・アドバイザーを務めるミハエル・クルム選手が新型キックスを追浜のテストコースで試走する動画が流れたのだが、加速性能はコメントでしか判断できなかったが、操作性とスタビリティについては、動画でもその高さが垣間見れた。

ワインディングを想定したパイロンコースをe-POWERドライブのスマートモード(ワンペダル走行が可能になる)での走行シーンで、回生ブレーキによる荷重移動で、フロントの応答性とリアの追従がスポーツカーのような挙動を示す。回生ブレーキをあまり効かせないノーマルモードでは、一般的なFFっぽい弱アンダーで曲がっていくのに比べると、走行ラインも含めてクイックに曲がっていくのがわかる。リアサスペンションはトーションビーム式で、マルチリンクのような複雑な動きはしないが、リアタイヤもしっかり地面をとらえている。EVのトルクを生かして、ワインディングでも楽しい動きをしてくれそうだ。

また、カタログスペックでも気付いた点があった。最小回転半径が5.1mとかなり小回りが利く数値となっていた。狭い路地、駐車場やUターンでもアラウンドビューとの併用であまり困ることはないだろう。

静粛性もこだわりポイントのひとつだという。EVや電動車の場合、エンジン音がしない代わりにタイヤのロードノイズや風切り音が目立ってしまう弱点がある。e-POWERの場合、低速走行でもエンジンがかかることがあり、音が悪目立ちしてしまう。新型キックスでは、遮音材などの防音対策に加え、エンジン出力の調整や制御の最適化により走行中のエンジンの始動頻度を下げている。

新型キックスは、動力性能のアップやバッテリー走行比率のアップが実現されているが、搭載されるリチウムイオンバッテリーの容量は1.5kWhと、ノートなど従来e-POWERモデルと同じ。エンジンもHR12DE、発電用・駆動用モーターもEM57とこれもとくに変更はしていない。

HR12DEの出力はアップされているが、モーターの最大出力と最大トルクはすべてECUやインバーターの制御プログラムの書き換えで実現している。モーター+バッテリー駆動の車両なら、このような芸当はじつは造作もない。EVやe-POWER(レンジエクステンダー系)車の動力性能、走行性能を決めるのはモーターではない。バッテリーとインバーターの制御プログラムだ。

テスラがソフトウェアアップデートだけで航続距離をのばしたり、0-100km/h加速のタイムを縮めたりできるのはこのためだ。もちろん、加速性能を高めたら航続距離が短くなるなどの影響はあるが、どのスペックに寄せるかは、モーターに一定の定格出力があればあとはそれをどう制御するかの問題だ(厳密にはバッテリー冷却の問題もでてくるが)。見方を変えれば、モーター(エンジン)やバッテリーはそのままでも、制御プログラムさえ変えれば、ロケットスタートに特化した魔改造もできる。

従来のクルマなら、エンジンやトランスミッションが同じなら大した性能アップは見込めないとなるが、電動車の良さのひとつは同一パワートレインでも改良・カスタマイズの幅が各段に広いという点だ。日産ではあと3車種ほどe-POWER車の投入予定があるという。それぞれどんな味付けででてくるのか楽しみである。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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