ヘルメットにHUD&リヤカメラ内蔵で死角なし!日本発『クロスヘルメット X1』を試してみた

HUDとリヤカメラを内臓したスマートヘルメット「クロスヘルメット X1」を青木タカオ氏が試した
HUDとリヤカメラを内臓したスマートヘルメット「クロスヘルメット X1」を青木タカオ氏が試した全 24 枚

バイクに乗っているときの後方視界は、バックミラーで確認するしかない。そんな常識を打ち破るヘルメットを日本のベンチャー企業が開発し、新発売する。それがヘッドアップディスプレイ(HUD)とリヤカメラを搭載した『クロスヘルメット X1』だ。

帽体の後ろに170度を捉える超広角カメラを埋め込み、その映像をシールド内側に設けたHUDで見る。さらにスマートフォンとワイヤレス接続し、アプリの起動によって音楽やラジオが聴け、ナビゲーション、サウンドコントロール、グループトークなどの機能も利用可能。近年急速に実用化が進んでいるIOT(モノのインターネット)化だが、バイク用のヘルメットもまた例外ではない。

HUDとリヤカメラを内臓したスマートヘルメット「クロスヘルメット X1」HUDとリヤカメラを内臓したスマートヘルメット「クロスヘルメット X1」

ヘッドアップディスプレイで後方視界を確保

HUDとリヤカメラを内臓したスマートヘルメット「クロスヘルメット X1」HUDとリヤカメラを内臓したスマートヘルメット「クロスヘルメット X1」
なにはともあれ、実際に被ってバイクで走ってみよう。帽体の底・右側にある電源ボタンを押すと、ヘルメット左側面のシールドベースにビルトインされたLEDインジケーターが点灯し、スイッチがONになったことが確認できる。

左右の耳をスピーカーがヘッドフォンのように包み込み、ホールド感が心地よい。口元が広く、窮屈さがないのも好印象。被り心地は悪くないが、バッテリーやカメラを内蔵するから仕方がないのだろう、通常のフルフェイスヘルメットより重みを感じるのは否めない。公表スペックで重量は1920gだから、400~600g程度の重量増となっている。

通常のシールドの内側に小さなディスプレイがあり、これがヘッドアップディスプレイ。見えやすい角度に調整すると、鮮明に映し出された後方の視界を見ることができた。首を左右に振ったり、後ろにいる人とジャンケンをしてみれば、タイムラグがほとんどないこともわかる。

音声案内もありがたい

ヘルメット左側面のシールドベースがタッチパッドになっていて、音量調整や電話対応などが可能ヘルメット左側面のシールドベースがタッチパッドになっていて、音量調整や電話対応などが可能
リヤビューが見れただけで、満足してはならない。いったんヘルメットを脱いで、専用モバイルアプリ「CrossHelmet」をスマートフォンにインストゥールする。iOS、Androidの両方に対応し、起動後Bluetoothによってワイヤレス接続すると、ナビゲーションも使えるように。行き先を入力すれば矢印で方向を示してくれ、音声案内も聞くことができた。

ヘルメット左側面のシールドベースがタッチパッド(静電容量式タッチパネルを内蔵)になっているから、ポケットにスマートフォンを入れたまま、タップやスワイプなどの直感的な操作で音量調整や曲送り、さらに電話応対など各種操作が左手だけでできる。Hey SiriやOK Googleなどのボイスコマンドも使え、音楽再生や電話応対が簡単かつスピーディだ。

「クロスヘルメット X1」の視界イメージ「クロスヘルメット X1」の視界イメージ
天気やバッテリー状態も表示するヘッドアップディスプレイは、クルマのルームミラーのような役割を果たすが、見るときは上目遣いにしなければならず、少し意識を向ける必要があり、ボンヤリしたままでは視界に捉えきれない。ただし、信号待ちなどでナビ表示が見れるのはありがたいし、走行中に聞こえる音声案内は大いに役立つ。

タンデム走行時などは、リアカメラをOFFにすることも可能。カメラとヘッドアップディスプレイはダイレクトに接続されているため、映像を録画することはできない。IPX5相当の防水性能を持つので小雨程度なら問題ないが、荒天時での使用は推奨できない。

USBタイプCポートで充電し、フルチャージまでは3時間。機能をすべてONにした状態で約4時間半、省電力モードを利用すると6時間程度使用することができる。

可能性無限大のスマートヘルメット

HUDとリヤカメラを内臓したスマートヘルメット「クロスヘルメット X1」HUDとリヤカメラを内臓したスマートヘルメット「クロスヘルメット X1」
北米向け安全規格DOT認証をパスし、欧州向け規格ECEと日本向け規格JISの認証も並行して行っている。デバイスの初期不良による2年間の無償修理期間を設けたほか、割引価格にてシェルの交換プログラムも設けた。

GKデザインでヤマハ『MT-09』のデザインを担当した大野氏が創業者で、海外でおこなったクラウドファンディングでは目標額の300%を達成した。日本でも「アタラシイものや体験の応援購入サービス」をおこなうMakuakeで購入することができる。販売予定価格は18万9000円で、2020年7月20日まで受付中。発送は2020年11月中旬を予定している。

スマートヘルメットの開発はSHOEIなどでも進行中で、『クロスヘルメット X1』の登場によって、今後他メーカーも一気に製品化へ乗り出す可能性も出てきた。頭部を守るだけでなく、情報を視覚や嗅覚へ提供し、将来的には脳へダイレクトに送り込むなんてことも、ないとは言い切れないだろう。ヘルメットの未来予想図、想像するだけで楽しみは尽きない。


協力:Makuake、ドゥカティ

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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