[カーオーディオの素朴な疑問]スピーカー編…取り付け費用が掛かるのはなぜ?

スピーカーユニットを取り付ける際には、ドアの内部ではスピーカーとしての完成度を上げるためのさまざまな取り組みが実行される。
スピーカーユニットを取り付ける際には、ドアの内部ではスピーカーとしての完成度を上げるためのさまざまな取り組みが実行される。全 2 枚

カーオーディオに興味を持ちつつも、「“素朴な疑問”が頭をよぎり近寄り難さを感じてしまう」という方々に向けて、その疑問を解消していただくための解説を展開している当特集。今回は、多くのビギナーが不安視しがちなスピーカーの「取り付け費用」について考えていく。

【画像全2枚】

カー用のスピーカーは、売られている状態ではまだ“半完成品”…。

結論から入りたい。市販カー用スピーカーを導入する際に製品代とは別途に「取り付け費用」が掛かる理由はズバリ、「スピーカーを作る作業が必要だから」だ。

これがどういうことなのかを解説していこう。まず、ホーム用のスピーカーをイメージしてほしい。小型のものから大型のもの、さらにはリーズナブルなものから超高級品までさまざまなスピーカーがあるが、基本的にはすべてスピーカーユニットが“箱”に取り付けられた状態で売り場に並べられている。対してカー用のスピーカーは、梱包を解くとそこにはスピーカーユニットが裸の状態で入れられている。

本来スピーカーは、“箱”に取り付けられて初めて完成品となる。つまりホーム用のスピーカーのような仕様が、スピーカーとしての最終的なあるべき姿だ。となるとカー用のスピーカーは売られている状態ではまだ半完成品、ということになる。“箱”を用意しないとスピーカーとしては成り立たない。その「“箱”を用意する作業」がまさに、スピーカーの「取り付け作業」というわけなのである。

ところで、なぜに“箱”が必要なのかをこの機会に説明しておこうと思う。まず前提として、スピーカーは振動板を前後に動かし空気を震わせて音を伝えるのだが、このメカニズムはスピーカーの裏側でも営まれている。

スピーカーの“箱”は、音にさまざまな影響を与える!

なお音は、上下運動を繰り返しながら空気中を進んで行く。静かな水面に石を投げ入れると波紋が広がるが、音は、その波紋と同じような動きをする。

で、実はこの動き方がスピーカーの表側の音と裏側の音とでは異なっている。耳では同じように聴こえるが、波形としては真逆の関係性にあるのだ。なぜなら、「表側と裏側では振動板の動きが逆の関係となっているから」だ。表側で振動板が手前側に動いたその瞬間、それを裏側から見ると振動板は奥に引っ込んだ状態となっている。例えば、前側では音波が0度のところからスタートしたら、裏側では180度のところが起点となって振動板から離れている。

そして。もしも真逆の状態の2つの音波が同一空間で混ざり合うと…。やっかいな問題が発生する。なんと、“キャンセリング”という現象が引き起こされる。表側の音と裏側の音とがお互いを打ち消し合ってしまうのだ。

しかしスピーカーユニットを“箱”に取り付けると、裏側から放たれる音を箱の中に閉じ込められる。これにより、“キャンセリング”の発生を阻止できる。

“箱”の効用はこれにとどまらない。“箱”はさらには、スピーカーの鳴り方にも多大に影響を与える。なので“箱”の設計においては、いろいろな工夫が成されることとなる。大きさが最適化され中の空気の量が調整される。これにより振動板の動き方が整ってくる。形が熟慮されることも多い。そうすることで内部での音の反射の状況がコントロールされる。また材質も検討される。それによって響き方が変わってくるからだ。どのような“箱”を用いるかは、とにもかくにも重要なのだ。

ドア内部には、スピーカーとしての不利要因が多々存在…。

対してカーオーディオでは、ドアが“箱”の役割を担うこととなるのだが…。ドアはそもそもスピーカーとしては設計されていない。ゆえに足りない部分がたくさんある。まず、ドアの鉄板は極めて薄い。ホーム用のスピーカーの“箱”とは堅牢さが大きく異なる。

さらには、完全な密閉状態にもなっていない。水を抜くための穴も開いていて、内張りパネルと鉄板とがぴったりと密着しているわけでもない。

であるので、このようなスピーカーとしての不利点を改善する必要がある。それが「取り付け作業」の中で実践されるのだ。

ただし! どこまで手を掛けるかは予算と相談しながらでOKだ。必ずしも最初の段階ですべてをやり尽くさなくても良いのだ。取り付けたスピーカーユニットの性能をフルに引き出そうとするならばとことん手を掛けた方が良いのだが、まずは予算の許す範囲の中で最低限のことだけ行い、後からこつこつとバージョンアップさせていくというアプローチも有り得ている。

かくして、「取り付け作業」においては「スピーカーを作る」という工程を踏む必要がある。そしてその作業には相応にコストが掛かってくる。しかし、みっちりと手を掛けずとも音は出る。ポイントを押さえつつもコストを抑えるやり方もあるので、ひるむ必要はないのだ。

ただ、もしもライトな仕様でスピーカーを取り付けたとしたら、「まだまだ音が良くなる伸びシロを残している」ということでもあると心得たい。そこから手を掛ければ、音質はさらに向上していく。覚えておこう♪

今さら訊けない“カーオーディオ”の素朴な疑問 Part1「スピーカー編」その3「取り付け費用」が掛かるのはなぜ?

《太田祥三》

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