【柴犬ハルの気になるクルマ】シトロエン ベルランゴ…帯にするにも襷にするにも自由自在

シトロエン・ベルランゴ × ハル
シトロエン・ベルランゴ × ハル全 22 枚

もしも広辞苑に〝MPV〟の項目があったら(手元の第7版には〝MVP〟なら載っている)その挿し絵にしたいのがこのシトロエン『ベルランゴ』。MPV(多用途車)の地をいく、帯にするにも襷にするにも自由自在なクルマだからだ。

実は日本でおなじみのあのライバル車と、欧州ではほぼ同時期(1996年、『カングー』は1997年)の登場だった。けれど『ベルランゴ』は3世代目にあたる今回のモデルが、晴れて日本正式初デビュー。昨年、オンラインで先行予約を募った折には5時間半で満枠になったそうだが、いよいよカタログモデルの発売となった。

国産ミニバンとは〝ひと味違う感〟

実車は全長4405mmだが、全高と全幅が1850mmあり第一印象はボリューミーだ。とはいえ樹脂色のバンパーなど潔いシンプルさをベースに、フロントマスクやボディサイドの〝エアバンプ〟など、最新シトロエンらしいデザインが盛り込まれ、リアルワールドで使って乗り降りしていると、国産ミニバンとは〝ひと味違う感〟が味わえる。

それと感動するのは室内の広さ。とくに2列目は、肩口の幅は147cm(以下、cm表記の寸法の数字はすべて筆者実測値、かつ、おおよそのもの)ほど、頭上はコブシが何個でも入るくらい、床から天井も約140cmもあり、実にせいせいとしている。シート自体は他のシトロエンのピープルムーバー系の3座と同様にやや小降りだが、写真のように後席中央にハルを座らせてみても、当然、無理はない。

中央席のシートベルトは天井から引き出す2点止め方式のためバックルが2個あるが、〝黒〟に識別されているバックルへもベルト(ハルのハーネスとバックルを繋ぐ手持ちの専用ベルト)は差し込めるがそれは誤りで、正しく赤いバックルにセットしないとシートベルト非着用警告灯が点灯する。シート関連では、前2席のアームレストが、必要に応じて取り外し可能なことも見逃せない。

スライドドア部は開口幅が67~70cm、高さは114cmほど。地面からサイドシルまでの高さは43cmほど。シートまでの高さは66~70cm。乗り降りは普通にしやすい。またスライドドアは現状または個体差か、ハンドルを引いて閉めようと(開けようと)する際に意識して強くハンドルを引っ張る必要があるものの、〝閉まり音〟はタンッ! と非常に静か。見るとラッチ&ストライカーがスライドドア後方に仕込まれているため、その位置が遠いことと、ロックの瞬間が〝引っ張られる〟(通常は〝押込まれる〟)ことによる衝撃音の立ち方の差ではないかと思われる。フロントドアの閉まり音のドンッ! もボリュームは小さめだ。

使いやすいラゲッジスペースに注目

試乗車はベーシックグレードの「FEEL」で、上級グレードに標準のパノラミックルーフ、天井後部の納戸、センターコンソールなどが省かれている。とは言え見渡せば、ドア、ラゲッジスペース始めフルトリム化され、隔世の感ありと感慨深いほど。室内からボディ色(鉄板)が見えるのは、リヤゲートの窓回り程度だ。

それとラゲッジスペースの〝大きさ〟は見るからに使いやすそうだし、事実使いやすい。後席使用時でも床面は幅1200mm×奥行き90cmあり、ユーロパレットが積み込めるサイズで、高さもおよそ120cmのゆとり。さらにフレキシブルラゲッジトレイが上段と中間の2通りにセットして使えるため、ラゲッジスペースの〝2段使い〟も可能。このボードはたとえばクルマを停めた状態でペットを遊ばせておく場所にもいい(耐荷重は25kg)。リヤゲートを開けた、いわゆる掃き出しフロアの状態だとペットが飛び出す心配があるが、ゲートは閉じ、ガラスハッチを開けた状態でも窓の下辺からボードまで25cm程度の深さがあるから安心だ。

写真のハルはこの状態で撮影したもので、本人は思い余って(!?)身を乗り出してはいるものの、リードを繋ぎ、後席背面のチャイルドシート用トップテザーアンカーをリードフックに利用しカラビナで止めてある。ガラスハッチはちょっとした荷物の出し入れや、リヤゲートがまるごと開けられない狭いスペースなどで実に便利な機能のひとつでもある。

シトロエンならではの乗り味のよさを実感

そして走りである。今回はハルを乗せ、撮影も兼ねて自宅近くの公園まで往復してみたが、実感できたのはシトロエンならではの乗り味のよさ。現代のシトロエンは昔のシトロエンと較べれば遥かに締まった乗り心地だが、それでも心地いい系の乗り味は健在。とくに路面の繋ぎ目や段差を通過した際にショックをしっかりと緩和してくれるのはいいし、クルマの揺らせ方が鷹揚で、揺れた時のストロークと速度を最後まで責任をもってくれる安心感の高さは独特だ。ハルもいつもは乗り始めのうちの最初の音や振動にはひととおり反応を示すのだが、『ベルランゴ』に関しては、揺れが発散して不安定になってしまうことがないため、そうした違和感がまったくなかったらしく平然としているのが見ていてわかった。

エンジンは1.5リットルのディーゼルターボ(130ps/300Nm)を搭載、これに8速ATの組み合わせ。車重が1610kgということもあり、発進時こそ、(レポーターが普段、ジンワリとゆっくり踏み始めるアクセルワークを習慣としているせいか)イメージする加速のためにアクセルの踏み込み方をやや意識的に速め(大きめ)にする必要があるものの、2000rpm台に達すればす、そこから上はスムースで力強い走りを示してくれる。シフターはシンプルなダイヤル式で、Mボタンを押せばマニュアルシフトも可能になる。

レーンキープアシスト、アクティブセーフティブレーキ、アクティブクルーズコントロールを始め、バックカメラなど、標準装備となる支援システムも充実した内容というのも心強い。

【柴犬ハルの気になるクルマ】シトロエン ベルランゴ は、帯にするにも襷にするにも自由自在なMPV

《島崎七生人》

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