ブガッティ『ディーヴォ』にワンオフカスタム、その名は「てんとう虫」…完成に1年半以上

メタリックトーンの特注色「カスタマースペシャルレッド」

CADデータと実車にフィルムを貼り付けた姿を一致させるのに苦労

ベース車両のシロンと異なる専用デザイン

ダウンフォースはシロンよりも90kg増加

最大出力1500hpのW16気筒エンジン+4ターボ

ブガッティ・ディーヴォ・レディバグ
ブガッティ・ディーヴォ・レディバグ全 27 枚

ブガッティは3月2日、『シロン』派生モデルとして、世界限定40台を生産する『ディーヴォ』(Bugatti Divo)のワンオフカスタムモデル、「レディバグ(Lady Bug)=てんとう虫」を発表した。

ディーヴォは、ブガッティ・シロンをベースに開発された。シロンのパフォーマンスをさらに引き上げた超高性能モデルで、世界限定40台を生産する計画だ。価格については、500万ユーロ(約6億4500万円)と公表されており、40台は完売している。

車名のディーヴォとは、1920年代後半、ブガッティを駆り「タルガ・フローリオ」で2度優勝したフランス人レーシングドライバー、アルバート・ディーヴォ氏に敬意を表したネーミングとなる。

メタリックトーンの特注色「カスタマースペシャルレッド」

ブガッティ・ディーヴォ・レディバグブガッティ・ディーヴォ・レディバグ

ブガッティは2018年8月のディーヴォのワールドプレミアの直後、ディーヴォの顧客のひとりとカスタマイズの方向性を相談した。その結果、車体に幾何学的なフェードパターンを施すアイデアが浮かんだという。米国の顧客が念頭に置いていたのは、独特の色のコントラストのダイヤモンド型で構成される幾何学模様だ。

その後、顧客と協力して、ブガッティのデザインと開発チームは、コントラスト効果を実現するために、メタリックトーンの特注色「カスタマースペシャルレッド」と「グラファイト」の開発に着手した。ダイヤモンドパターンは、ディーヴォのシルエットに合わせて、フロントからサイド、リアに向かって続くようにデザインされている。

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このワンオフモデルの完成には、1年半以上を要した。ダイヤモンドパターンを、車体に正確に塗装することが困難だったためだ。ディーヴォの立体的なボディラインのために、平面に印刷されたダイヤモンドパターンが歪んで見えてしまう問題に直面した。きれいな仕上がりを実現するために、ダイヤモンドパターンはルーフライン、ドア、リアフェンダーにも正確に配置する必要があった。 CADモデラーは、顧客と協力して、約1600のダイヤモンドパターンデザインを開発し、シミュレーションした。これは非常に複雑で、時間のかかる作業だったという。

CADデータと実車にフィルムを貼り付けた姿を一致させるのに苦労

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デザイナーが結果に満足するまで、数週間が経過した。テスト車両のボディに、長さ6mのフィルムを正確に貼り付け、パターンをチェックした。そして、デザイナーはCADデータと実車にフィルムを貼り付けた姿を一致させ、ダイヤモンドが歪んだり折り目ができたりすることなく、深く凹んだ表面にフィルムを貼り付ける方法を見出したという。

フィルム内のダイヤモンドは分離されてフィルムに転写され、このフィルムをボディに貼り付けた。約1600個のダイヤモンドは細かくチェックされ、必要に応じて再調整。フィルムをミリメートルの精度でルーフラインに貼り付け、ドアのジョイントラインとリアエンドの場所に照らしながら、常に位置をチェックしたという。

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数日間にわたってすべてのダイヤモンドをチェックして、ダイヤモンドが正確に配置されていることを確認した。次に、実際の塗装と、それぞれのダイヤモンドを細心の注意を払いながら除去する作業に取り組んだ。パターンを反転させるために、特注色のカスタマースペシャルレッドの上に、グラファイトとクリアコートを塗布した。このプロセスの一環として、塗装は研磨、平滑化、チェック、レタッチ、そして再研磨が行われた。塗装が完成するまで、2週間以上かかったという。

ベース車両のシロンと異なる専用デザイン

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ディーヴォでは、シロンに対して、エアロダイナミクス性能のさらなる向上が追求された。フロントカバーには空気取り入れ口が追加されており、車両の有効断面積を減らすと同時に、フロント部分の空気の流れを改善し、空力効率を高めている。「エアカーテン」も最適化されており、車両のサイドの空気の流れが良くなっているという。

新設計のワイドなフロントスポイラーは、ダウンフォースを高め、フロントエアインレットに多くのエアを導きく。これにより、全体的な冷却性能を向上させた。

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ブレーキは、車両の両側にある4つの独立した空気システムによって冷却される。空気は、フロントバンパーの上の高圧領域、フロントフェンダーの吸気口、フロントラジエーターの吸気口、タイヤ前方のディフューザーから取り入れられる。ベーンは、これらの領域からの冷気をブレーキディスクに送る。熱シールドは、熱風をホイールから排出する。これにより、ブレーキが過熱せず、タイヤの温度を常に最適に維持する。このシステムはすでにシロンで使用されているが、ディーヴォの場合、さらに冷却性能が引き上げられている。

ダウンフォースはシロンよりも90kg増加

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ルーフには、NACAエアダクトが組み込まれた。専用設計のエンジンルームカバーと組み合わせることにより、エンジンルームへの非常に高いエアフローが確保されている。

後部には、新デザインのリアスポイラーが備えられた。エアブレーキとしても機能し、走行モードによって異なる角度に設定される。リアスポイラーの幅は1830mmで、シロンより23%幅広い。ワイドなリアスポイラーは、エアブレーキ性能を向上させるだけでなく、大幅にダウンフォースを高める。4本のテールパイプに対応したリアディフューザーも専用デザイン。発生するダウンフォースの合計は456kgで、シロンよりも90kg増加しているという。

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リアには、3Dテールライトが装備された。3Dプリントを使って製造されたリアグリルと一体設計された。このリアグリルは特別なフィンが特長で、合計44個のフィンが点灯し、テールライトとして機能する。

最大出力1500hpのW16気筒エンジン+4ターボ

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シャシーとサスペンションの専用チューンと軽量化により、さらなるコーナリングパフォーマンスを追求している。シャシー開発の主な目的は、コーナリングダイナミクスを改善すること。この目的のために、キャンバー角が見直された。その結果、ディーヴォの最高速は380km/hに制限される。シロンが最高速420km/hを引き出す際に必要なトップスピードモードは装備されない。横加速度に関しては、ディーヴォは1.6gに達するという。8.0リットルW16気筒ガソリンエンジンは4個のターボで加給され、最大出力1500hpを獲得している。

ステアリングとサスペンションは、すべてのモード(「EB」、「アウトバーン」、「ハンドリング」)で、よりダイレクトなレスポンスと大幅にスポーティなドライバビリティを実現するようにチューニングされた。ディーヴォは、シロンよりも35kg軽量だ。この軽量化は、新設計の軽量ホイールやカーボンファイバー製インタークーラーカバーなど、さまざまな設計変更の結果になる。

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固定式のフロントディフューザーフラップ、断熱材の削減、軽量なサウンドシステムの採用により、重量を抑えた。重量を減らすために、センターコンソールとドアトリムの収納コンパートメントも省略されている。ディーヴォは、シロンよりもイタリアのナルド・サーキットにおけるラップタイムを、8秒短縮しているという。

《森脇稔》

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