【マツダ MX-30 EV】「自操車」にプチ試乗、ただの「福祉車両」ではない新たな価値とは

マツダ MX-30 EVモデル Self-empowerment Drive Vehicle(自操車)
マツダ MX-30 EVモデル Self-empowerment Drive Vehicle(自操車)全 16 枚

マツダの「自操車」にプチ試乗

マツダ『MX-30 EVモデル』ベースの自操車は、非常によく考えられている。アクセルリングと手動ブレーキの欧州方式で、走行中は両手でステアリングホイールが握れるだけでなく、フットブレーキを踏みながら始動させれば、通常のクルマとしても運転が可能になる。

【画像全16枚】

プロトタイプ車につき、マツダR&D構内を短時間、低速で試乗した。手動で行なうアクセル操作とブレーキ操作は、誰でもそうだが始めは感覚を掴む必要がある。が、慣れ次第で自在に走らせられそうだし、何よりEVのスムースな動力性能がこの運転方式に見合っているのを感じた。乗り味が穏やかなことでも安心感がある。操作系各部のタッチのチューニングが進めば、より操作性がよくなりそう。

マツダ MX-30 EVモデル Self-empowerment Drive Vehicle(自操車)マツダ MX-30 EVモデル Self-empowerment Drive Vehicle(自操車)
インパネの“SLOW”のスイッチを押すと、パーキングスピードでクルマの反応が走行時よりも優しくなるのもいい。“アクセスボード”と呼ぶ、運転席横に折り畳み方式で設置される乗降時の補助ボードもありがたい。電動開閉式の後部ドアも親切だ。

6kgという超軽量、独自設計のクルマ椅子は確かに異例の軽さ。載せ降ろしに『MX−30』のフリースタイルドアが生きる。ただ身体を捻って載せるための力加減、姿勢、体力は個人差によるから、クルマ側に何らかのキャッチして引き込んでくれるような装置があって手助けしてくれると大助かりだろう。

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外へ出るための“心の壁”をなくす

試乗後、同車の開発をまとめている商品戦略本部・技術企画部・主査の栃岡孝宏さんに話を伺った。

----:開発の思いはどんなところにあるのですか?

栃岡氏:59年前、足が不自由だった3代目松田恒次社長が、初の乗用車だったマツダ『R360クーペ』に手動運転装置を搭載しました。以来、その意志を受け継ぎ、『ロードスター』を経て、今回、MX−30 EVをベースに企画されたのがこのSelf-empowerment Driving Vehicle(=自操車)で、2021年秋の発売を予定しています。

とにかくもっとお客様に喜んでいただきたい。そのためにサードパーティの装置の後付けではなく、本当に乗って楽しく、運転しやすく、慣れやすい……外に出ていろいろなことをするために“心の壁”になっていることがあるなら、自動車会社としてなんとかしたい。そんな思いから2015年位から考え始めました。

そこにMX-30とフリースタイルドアの商品企画が上がってきて、これを活かすのが今のベストだろうな、と。一人で車椅子を載せて、いろいろなところに行ける。さらに健常者と障害のある方との運転を切り替えられるようにすれば、ご家族、お友達とも一緒に出かけられる。そういたコンセプトもこのMX−30であれば実現できると考えました。MX−30自体、企画の最初の段階から“いろいろな人にとって活きる、喜んでいただけるクルマにしたい”というのが思いです。

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----:試乗して、駐車場などの操作時に感じるステアリングの操舵力やアクセルの操作感など、もう少し軽くてもいいのかな、とも思いましたが……。

栃岡氏:アクセル操作は、バネやブッシュによる調整、PCMを介して信号を変換していますが、その制御マップを変えることでクルマの出方、反力はかなり変えられます。それとインパネの“SLOW”のスイッチを押すことで、パーキングモードで出力が急に出ずにゆるやかに操作できる制御に切り替わるようになっています。

現状ではベース車の状態を維持しましたが、「もう少し軽いほうがいい」という声は確かにあり、我々も軽ければ大舵角時の操作性もよくなるのでは?という感触はもっていますので、バランスをとりながらベストのところを見つけたいと考えています。両手でステアリングとブレーキを操作している状態では、現状より軽いほうがアクセルリングをよりちゃんと操作できると感じています。

マツダ MX-30 EVモデル Self-empowerment Drive Vehicle(自操車)マツダ MX-30 EVモデル Self-empowerment Drive Vehicle(自操車)
----:ただ、やはり運転席に座った状態で、身体を捻っての後席への載せ降ろしは少し大変かもしれません。

栃岡氏:実際に障害をお持ちの方にもテストしていただきました。その時には身体をシートバックに転回させてシートバックを抱きかかえるようにし、体幹を保持しながら左手で押し込みかつ右手で引っ張る……そんな風に工夫してやっておられました。身体を捻ることに対しては課題があるとは考えており、アシストのようなものなど、さらにアイデアを捻り出さなければと考えています。

----:独自開発の車椅子はおよそ6kgと非常に軽量で素晴らしいですね。

栃岡氏:そうですね、通常は軽くても9~10kgかそれ以上。ただ車椅子をお持ちの方は、ご自分の好みの車椅子を何年も乗られますので、市場に出す場合はそうしたニーズに合わせることも重要だと考えています。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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