LINEが日本マイクロソフトと連携する理由…LINE プラットフォーム事業開発室 ビジネスデザインチーム 福田真氏[インタビュー]

LINEが日本マイクロソフトと連携する理由…LINE プラットフォーム事業開発室 ビジネスデザインチーム 福田真氏[インタビュー]
LINEが日本マイクロソフトと連携する理由…LINE プラットフォーム事業開発室 ビジネスデザインチーム 福田真氏[インタビュー]全 1 枚

LINEは「LINEのAPI」と「Microsoft Azure」をかけ合わせることで、「身近で簡単なMaaS」の実現を目指すプロジェクトの開始を発表した。コミュニケーションアプリとクラウドインフラサービスの2強の連携により、MaaSが大きく推進するのではないかと期待されている。

7月15日開催予定のオンラインセミナー 「地域MaaSの今とこれから~地域に根差したモビリティサービスのつくり方~」に登壇予定のLINE株式会社 広告・法人事業本部 プラットフォーム事業開発室 ビジネスデザインチームの福田真氏にプロジェクト発足の背景や今後の展望を聞いた。

MaaSはオフライン領域のDXの要

---: LINE Fukuokaは以前よりMaaSに取組まれていました。LINE としては、これまでMaaSに関わるプレスリリースはなかったように思います。御社の中でMaaSはどのような位置づけなのでしょうか。

福田氏:私が所属しているチームでは 、法人事業の事業開発を担当しています。事業領域も年々拡大し、不動産、薬局・医療、小売、公共等 多岐に渡り、日頃から様々なクライアント様のDX実現を支援しています。
そして、今回発表したMaaSの取り組みは「オフライン領域のDXの要」 と位置付けています。「LINEがなぜMaaS?」と思われる方も多いと思いますが、昨年から続く新型コロナウイルスの影響もあり、これまでの「移動体験」の価値を早急に再定義することが求められていると考え、今回このプロジェクト発足にいたりました。
当社は「CLOSING THE DISTANCE(世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めること)」というミッションを掲げており、LINEのユーザーがオンラインで体験するサービスの設計を行う過程で、オフライン環境で発生するリアルな「移動」は欠かせない要素となっています。
「コロナ前の自由な移動体験を取り戻したい」といった思いもあれば、「日々の暮らしを支える新しいサービスをユーザーへお届けしたい」という考えを持つ事業者様もいらっしゃると思います。今回のプロジェクトを通じて、みなさんと共創しながらMaaS実現に向けたチャレンジをしていきたいと考えています。

MaaSに取組むサービス事業者の支援をしたい

---: 全国各地にMaaSアプリが存在しています。MaaS領域で有名であったとしても一般の方にとってはまだまだ周知されていません。数あるアプリの中から、アプリの認知、ダウンロード、登録、使用まで考えるとかなりの離脱があるのだと思っています。また観光MaaSの場合、観光後も使い続けるということも難しいでしょう。

福田氏:おっしゃる通り、そういった課題も多く聞きます。そこで、各地域でMaaSに取り組むサービス事業者の方々に、LINEをご活用いただくことで、ユーザーとサービスの距離を近づけることができると考えています。LINEの月間アクティブユーザー数は8,800万人(2021年3月時点)ですが、その方々はネイティブアプリのダウンロードが不要ですし、普段から慣れ親しんでいただいているUI(ユーザーインターフェース)だからこそ操作に戸惑うことなくサービスが利用できます。また、LINEを通じて繋がることで、体験の前後を含めてユーザーとの関係を深めることができると考えています。

日本マイクロソフトとともにBeyond MaaS を推進

---:なぜ日本マイクロソフトとそのパートナー各社 と組んだのでしょうか。

福田氏:まず、LINEとして何を目指すべきか、その実現に向けてどんな組み手を取り得るか、ゼロベースで考えました。当時、チームとしてMaaSに対する知見もまだ浅かったため、2020年11月にMONETコンソーシアムへ加盟し、様々な加盟各社と数多くの意見交換をさせていただき、MaaSに対する理解を深めてきました。日本マイクロソフト様とはデベロッパーリレーションズの観点で以前からご縁がありましたが、その過程でMaaSについてお話させていただいたのがプロジェクト発足のきっかけです。

日本マイクロソフト様は 、Microsoft 365(旧Office 365)などの提供を通じて、早くから「働き方改革×MaaS」を推進されていました。例えばOutlook予定表とモビリティサービスの連携 など、ビジネスパーソンを対象としたお取り組みです。一方で、観光客や生活者といったユーザーの接点はLINEに強みがあり、相互にユーザーの利用シーンを補うことができます。また、日本マイクロソフト様はパートナー企業に対して、Microsoft Azure上で複数のサービス連携を実現するための基盤である「MaaSリファレンスアーキテクチャー」を提供されています。開発負荷を下げ、スピーディーにサービス実装できる環境を構築されており、積極的にMaaS分野へ取り組んでおられたということも大きかったです。

---:LINEと日本マイクロソフトが提供する仕組みを使いたいと考えているサービス事業者の方がたくさんいらっしゃるかと思います。どのように使えますか?

福田氏; すでにMaaSアプリを提供されているサービス事業者様の場合は、ユーザーの利用ハードルを下げるために、「同様のサービスを LINE 上でも提供してみる」といった取り組みも可能です。もちろん、これからMaaSの立ち上げをご検討される方々に対してもサポートさせていただきます。今回のプロジェクトのパートナーであるColorkrew様、パーソルプロセス&テクノロジー様、FIXER様、MaaS Tech Japan様とともに、 サービスのUX検討やシステム開発の支援を行います。

具体的な取り組みとして、長野県千曲市の「千曲市ワーケーション体験会」の事例もセミナー当日にお話できればと思います。

---:決済方法は LINE Pay を使わないといけないのでしょうか。顧客との直接の接点が無くなるのではないかと心配している方も多いようです。

福田氏: そういったご懸念をいただくこともありますが、決済方法はサービスの特性に応じて実装すべきと考えていますので、必ずしも「LINE Pay」でなければならないということはありません。クレジットカードなど他の決済方法を実装いただくこともできます。

今回のプロジェクトとは別のお取り組みになりますが、東急様はLINEを上手にご活用くださっています。LINEのユーザーIDを活用して、東急グループ各社の顧客データベースを一元化する取り組みを進められており、多岐にわたる顧客情報や行動履歴は、東急様独自のデータベースに連携されます。LINEはあくまでユーザーと東急様のサービスを繋げる橋渡し的な役割です。主体者であるサービス事業者様にLINEを上手く使っていただくことで、オフラインのDXが着実に進んでいる成功事例です。

当日お話する「ワーケーション×MaaS」事例だけでなく、例えば、小売や防災などがMaaSと掛け合わさり、Beyond MaaSの取り組みが増えていくと思います 。これをしっかりとユーザーへ届けていくためのご支援がしたい。多くの事業者様と一緒にチャレンジしていきたいです。

福田氏を含む6名が登壇予定のオンラインセミナー「地域MaaSの今とこれから」が7月15日(木)に開催予定です。 詳細はこちらから

《楠田悦子》

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