【シボレー コルベット 新型試乗】構えて乗った自分がアホらしくなるほど「優しい」…中村孝仁

シボレー コルベット クーペ 2LT
シボレー コルベット クーペ 2LT全 36 枚

初のミッドシップである。それも存在感が凄い。ある意味「強面」。そんなわけだから当然乗る側も少し構えていざ試乗。

「ごく普通のクルマですよ。問題有りません」とはGMの広報車両担当者氏。問題有りませんは試乗車が「2LT」というグレードで車高アップする機能がないため、段差などでは注意が必要かどうか聞いたことへの答えだったのだが、本当に雑踏に乗り出してみてその軽いステアリングや予想以上に周囲が見易かったこと、そして軽快で快適な乗り心地などに、構えて乗った自分が阿保らしくなった。

最新のシボレー『コルベット』は、実際に街に乗り出してみるとそんな印象である。本当に乗り易いし、サイズも全長4630×全幅1940×全高1220mmというかなりの幅広の割には街中をスイスイと走り抜けることが可能だった。Yahoo!ニュースによれば日本向け300台が僅か60時間で売り切れるほどの人気なのだそうだ。つまり、試乗できたこともかなりラッキー。北米市場でも第1四半期の販売は対前年比73%増だそうだから、やはり非常に人気が高い。

今までのコルベットとは印象が大きく異なる

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それにしてもやはりというべきだが、今までのコルベットとは印象が大きく異なる。C7と呼ばれた先代まではエンジンをフロントに置くFRであって、短くはなっても依然としてロングノーズショートデッキと呼ばれたスタイルだった。ところが今回はミッドシップ。エンジンが前にない分、着座位置は先代よりも42cmも前に移動している。

因みに本国では「コルベット・スティングレイ」と呼ばれ、独特なエイ(スティングレイ)のエンブレムもリアについているのだが、日本市場ではその名が使えず、単にコルベットとのみ呼ばれるのは残念だ(エンブレムは付いている)。

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それはともかくとしてコックピットは独特で、ドライバーズシートから横移動して助手席側に移ることはまず不可能である。阻んでいるのはダッシュボードから連なる長いスイッチ群のせい。ここにはエアコンを中心としたコントロールスイッチが並ぶ。まるで隔壁のようにパッセンジャーと隔てているのだが、デザイン的にもインテリアの大きな特徴になっている。

センターコンソールにはドライブモードの切り替えスイッチと、プル&プッシュスイッチとなったシフトセレクターが並ぶ。ステアリングはインディ500のコースよろしく、円形から上下をそぎ落とした樽型。センターパッドよりも上にメータークラスターが見事に嵌ったように視認できるのも特徴である。

6種類のドライブモード

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ドライブモードは全部で6種用意されているが、比較的使うであろうと思われたモードはツーリングモード、スポーツモード、それにレーストラックモードの3種。これに加えてウェザー、独自に設定が可能なマイモードとそれをサーキット走行に合わせて反映させたZモードの6種だ。

ツーリングモードではステアリングも軽く、乗り心地も至って快適。それにドライバー背後にある6.2リットルNA・V8エンジンも静かなもんだ。平穏で優しいクルマである。スポーツモードにするとわずかながら全体に手応えが出て、やや重めのステアリングとやや硬めのサスペンション。それに少しだけ音を大きくしたエンジンサウンドがドライバーを包み込む。

レーストラックモードは、実態としては本当のサーキット走行用ではなく(そちらは恐らくZモードにお任せ)、むしろ一般道をワイルドに走りたい人向け。ステアリングはギュッと握り、ステアするぞ!と気構える必要があるし、サスペンションはさすがに路面の凹凸を否応なく伝えてくる。そして背後のV8サウンドは最大限アメリカンV8を奏でるから、アクセルをフルで開けるとかなり凶暴である。

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「瞬」という接頭語をつけたくなるほど素早いシフト

今回は初めて8速のDCTと組み合わされた。トレメック製と言われるこのDCT。その出来は中々のもので、ATモードで走ってもあるいはマニュアルモードで走っても非常にスムーズなことと、「瞬」という接頭語をつけたくなるほど素早いシフトが可能であった。

エンジンのスムーズさは先代譲り。NAでOHVという、言葉で聴くとずいぶんと前時代的と思えるエンジンだが、決して侮ってはいけない。かつてのアメリカンV8とは異次元の良さを持つ。それに可変気筒システムが装備されるから、負荷の無い時は緑の「V4」というランプが点灯してそれを知らせる。

というわけで新しいコルベットはシーンシーンでかなり異なるキャラクターをドライバーに見せつける。まあ、限界を知りたければ当たり前だがサーキットにどうぞということで、オンロードではそのキャラクターのごく一端だけを覗き見しているといった印象だった。

史上初の右ハンドル、そして想像以上の使いやすさ

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最後に付け加えるのは、このクルマが右ハンドルであることだ。コルベット史上右ハンドルはもちろん初めてだし、現行日本市場に導入されるGM車の中でも唯一の存在。車高が低いだけに億劫なパーキングチケットをわざわざ取りに降りる必要もない。

それにこのクルマ、予想以上に使い勝手が良くて、リアにはゴルフバッグを収納出来るほどの立派なラゲッジスペースを持ち(GMはバッグが2個入ると謳うが現実的には一つ)、フロントにも大型のトートバッグを飲み込む深いラゲッジスペースを持つ。荷物の収納性能ではミッドシップとは言えかなり優秀だから、グランドツーリングをこなすことは十分に可能だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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