JR西日本は9月8日、博多総合車両所(福岡県那珂川市)配置の新幹線車両N700A(F13編成)を、自動列車制御装置(Automatic Train Control=ATC)の検査期限が切れたまま運用していたことを明らかにした。
1964年10月に開業した東海道新幹線では200km/h以上の高速走行となるため、在来線にあるような地上信号機では信号現示の確認が困難になる懸念があったことから、運転室内に車内信号としてのATCが設置された。
これは、地上装置から速度制御信号を送り、多段式ブレーキにより列車を制御するものだったが、現在の新幹線では、地上装置から送られる停止位置情報を車上装置が照査するデジタルATCとなっており、一段式ブレーキによりスムーズな減速を行なうことができる。東海道・山陽新幹線ではその発展型として、多段式ブレーキへの切換を容易にした「ATC-NS」と呼ばれるものが使用されている。
N700AのATC車上装置は先頭車(1・16号車)に設置されており、定期検査は国土交通省の省令により3か月と定められている。それに沿うと、本来の検査期限は1号車が8月19日、16号車が9月7日となっていたが、検査の計画部門が施工部門に対して1号車の検査を8月4日に行なうこと指示する際、誤って16号車を指示したという。
検査ミスの状況。検査期限が9月7日だった16号車の検査が8月4日に実施済みとなっていたことを担当社員が不審に思い、ミスが発覚したという。ATCの検査態勢については、2020年6月1日以降、編成単位から号車単位に変更されており、編成、号車両方の確認が必要となったが、JR西日本ではその点の確認が不十分であったことが原因であるとしている。
検査ミスによる装置の故障はなかったが、今後は「検査計画と検査の指示の内容が一致していることの確認」を徹底し、「検査計画と実施内容が一致しているか照合できる仕組み」を構築するとしている。