京セラ、超高速無線通信「Li-Fi」など9つの新技術を公開へ…CEATEC 2021

オンラインで開催される「CEATEC 2021 ONLINE」に出展する京セラ
オンラインで開催される「CEATEC 2021 ONLINE」に出展する京セラ全 18 枚

京セラは2021年10月19日から開催される「CEATEC 2021 ONLINE」に出展する。開催を前に同社は報道関係者向けに、京セラの「みなとみらいリサーチセンター」(横浜市)においてリアルでの展示会を開催した。その概要をお伝えしたい。

京セラが「CEATEC 2021 ONLINE」で公開するのは全9つのカテゴリー。ここではそのうち、リアルで事前内覧会で公開されたものを中心に紹介していきたい。

●GaN(窒素ガリウム)製次世代レーダー

光を活用した超高速無線通信「Li-Fi」向けソリューションとして開発された。GaN基盤を用いたレーザーは、セキュリティが高く、電波干渉が発生しないことから、オフィスや病院などでの通信機能を備えた照明として活用可能。照明としての明るさはLED比で10~100倍で、到達距離も10倍。それでいて素子サイズは1/10のサイズでしかない。通信速度もLEDを使った光通信よりも100倍もの速さを達成できるという。安全性についても白色光を使うことで皮膚や眼球にも優しい照明として展開可能となる。

この技術には光であるが故のメリットや課題もある。光は直進性が高く、受光できる範囲が極端に狭い。つまり、それが他へ洩れない高いセキュリティ性を確保につながる。たとえば、車車間通信などでも有効だという。一方でこれが仇となって広範囲に展開するのは不向きとなってしまう。たとえば道路照明に応用した場合、移動するクルマにとって1カ所ではまったく役に立たない。そこで道路照明を連続して建て、基地局から基地局へつないでいく携帯電話のハンドオーバーのような仕組みが必要になるのだと思う。「GaN(窒素ガリウム)製次世代レーダー」光通信のデモ「GaN(窒素ガリウム)製次世代レーダー」光通信のデモ

会場では通信には活用してはいないものの、BMWの『5シリーズ』の「アディショナル・ハイビーム」に採用されたGaNレーザーも展示された。この照射距離はなんと約800mとなり、速度無制限のアウトバーンなどでより遠くを照らしたいというニーズに応ずる形で採用されたという。ちなみに日本仕様では規制上、搭載されていないそうだ。

●自動運転バス

生活圏の地方分散化や高齢化によって浮上している公共交通機関の課題解決に向けた実施されているもので、京セラの滋賀県蒲生工場~八日市工場間の約1kmの公道を自動運転バスの実証実験として走行している。バスは自動運転車を手掛ける先進モビリティ社の手によるもので、ここに使われる各種センサを京セラが開発。さらに車両制御を司るECUを先進モビリティ社と共同開発した。

京セラが開発したセンサ類は、前方の障害物を検知するステレオカメラ、前方/側方に接近する車両や歩行者を検知するミリ波レーダー、バス周辺の死角を認識して人などの巻き込み防止などに活用する周辺検知カメラの3つだ。実証実験により、実用化に向けた精度検証を行うと共に、今後は路側機側とも連携していく計画。現在は運転席に人が乗車する形で運航するが、将来はレベル4による遠隔操作も視野に入れているという。「エナジーハーベスト型スマートブイ」海の潮流で自己発電し、様々な観測機器の電源として活躍「エナジーハーベスト型スマートブイ」海の潮流で自己発電し、様々な観測機器の電源として活躍

●エナジーハーベスト型スマートブイ

海に浮かべるブイの形状をしたセンサによって海洋状況の把握を目的としたシステム。長崎大学が開発した潮流発電技術を活用することで、永続的に発電を行い、内蔵する通信デバイスや様々なセンサに電源を供給できる。スマートブイは潮流の激しい場所に使うSLTT(水平分離型)と、潮流が穏やかな海で使うVTT(垂直一体型)の2種類。いずれも天候に左右されない潮流発電が可能で、内蔵する京セラの「GPSマルチユニット」および接続されたセンサーで長期的かつ安定的に電力が供給できる。

養殖や生簀(いけす)など近海漁業には様々な海洋データが必要だが、このブイを浮かべることで海水温や海流の変化、マイクロプラスチックなど、海洋問題に関わる課題解決に必要なデータ収集できる。また、海洋上でメッシュにブイを浮かべることで通信環境を構築することも考えられるという。また、このスマートブイはCEATEC AWARD 2021でカーボンニュートラル部門賞を受賞した。

●スマート無人レジシステム

コンビニなどでの無人レジ化が実用段階に入りつつある中で、京セラが開発した「スマート無人レジシステム」は物体画像認識AI技術を搭載しているのがポイントとなる。通常の無人レジでは商品一つひとつが見えるよう並べるなければならないが、このシステムではどの向きに置いても、あるいは商品が重なっていても認識できる能力を持つ。これにより、労働人口の減少によって店舗経営の効率化や省人化に貢献できる。「スマート無人レジシステム」手持ち状態でも認識は可能「スマート無人レジシステム」手持ち状態でも認識は可能

この実現には独自開発の物体認識AI学習データ生成技術の活用がある。あらかじめ商品を画像登録しておくことで、レジ台の上に置いた商品の認識精度を上げることができるもので、京セラによれば約6000種類以上の商品を認識可能。しかも、登録する際は再学習が不要としており、新規商品だけの追加学習で済むため、学習における大幅な効率化につなげられ、小規模店舗であっても低コストで導入できるメリットがあるという。なお、「スマート無人レジシステム」はCEATEC AWARD 2021でカーボンニュートラル部門賞を受賞した。

●離島での地域マイクログリッドシステム

京セラは鹿児島県の離島、沖永良部島で進めている地域マイクログリッドシステムに同社が開発したEMS(エネルギーマネジメントシステム)を活用する。地元の知名町と和泊町と共に脱炭素社会の推進に向けた包括協定の下、太陽光や風力発電、蓄電池などの電力の需給バランスを最適化できる同システム構築の推進を図っていく計画だ。

背景には沖永良部島では島全体の発電がディーゼルエンジンによって支えられていることがあった。そのため、台風などの悪天候が続くと燃料である重油が届かなくなると、それは停電に直結する。そこで太陽光や風力による再生可能エネルギーを活用することによる安定供給を実現しようという意識が高まったわけだが、電力は常に使用量と発電のバランスを取る必要があり、このような状態での実現は難しい。

そこで導入するのが、再生可能エネルギーを主力電源としたマイクログリッドの構築だ。具体的には自営線の新設は行わず、配電網ライセンス制度により既存配電網を活用することで、島を複数の領域に分けた構成でつないで島全域をカバーする。各領域は再生可能エネルギーを発電する太陽電池や風力発電機、電力の需給バランスを整えるエネルギーマネジメントシステム(EMS)や蓄電池などを導入。これにより、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを主力電源とする電力供給網が実現していくというわけだ。

具体的なスケジュールとしては、2021年9月~2022年3月には島内でのマイクログリッド導入に向けたプラン作りに着手し、2022年以降に具体的な構築作りに入っていく計画だ。なお、本年度の導入プラン作成は、経済産業省の「令和3年度 地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金」に採択されている。京セラの「みなとみらいリサーチセンター」で開催されたCEATEC 2021 ONLINEのリアル内覧会京セラの「みなとみらいリサーチセンター」で開催されたCEATEC 2021 ONLINEのリアル内覧会

その他、withコロナ時代におけるコミュニケーションツール「わかりやすい字幕表示システム」、快適な覚醒効果を提供する「パフォーマンス向上起床システム」、スマートファクトリーを実現する「ローカル5Gシステム」、無人配送ロボットによるシェアリング型配送サービスについても紹介された。無人配送ロボットによるシェアリング型配送サービス無人配送ロボットによるシェアリング型配送サービス

《会田肇》

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