120年の歴史、VWグループで再生したシュコダ[日本にまだないブランド]

シュコダ・ファビア
シュコダ・ファビア全 16 枚

東ヨーロッパ、チェコの自動車メーカー、シュコダ(Skoda)。

ドイツのオペルと同様、およそ120年にわたる自動車製造の歴史を持つが、第二次大戦後にチェコ(当時のチェコスロヴァキア)が旧ソヴィエト連邦の支配下に置かれた関係でシュコダの技術開発も西側諸国のメーカーに比べて後進的となり、1989年に共産主義体制が崩壊した時にはその差は決定的なものとなっていた。

自由経済の波を渡る力のなかったシュコダを傘下に収めて再生させたのはフォルクスワーゲン。当時、再生にはルノー、ゼネラルモーターズ、ダイムラーベンツ(現・ダイムラー)なども名乗りを上げていたが、シュコダを企業としてだけでなく独立したブランドとしても存続させると明言したフォルクスワーゲンが選ばれたという経緯がある。

そのシュコダを大いに躍進させたのは、シュコダ買収後にフォルクスワーゲンの実権を握ったフェルディナンド・ピエヒ氏。ポルシェ一族として知られるピエヒ氏は1997年にフォルクスワーゲン『ジェッタ』とエンジニアリングを完全共有し、デザイン、チューニング、コストコントロールだけが違う4ドアセダン『オクタヴィア』を送り出した。

オクタヴィアはフロントマスクにイタリアのランチア『デドラ』に似た控えめで品の良い、それでいて面積はそこそこ大きいグリルが与えられた。全体のフォルムも古典的なものだった。サスペンションはやや柔らかめにセッティングされた。この“非ドイツ車”的なデザインとテイストはヨーロッパ市場のユーザーから好感を持って迎えられ、実勢価格はジェッタより低かったにもかかわらず、あえてシュコダを選ぶという顧客が続出。フォルクスワーゲングループのシェア拡大に大いに貢献した。

このオクタヴィアの成功は今日に至るまでのシュコダのブランドアイデンティティを決定づけるもので、サブコンパクトの『ファビア』、ミニSUV『カロック』、3列シートSUV『コディアック』など他のモデルも今日に至るまで同じようなコンセプトで作られている。フォルクスワーゲンの新鋭バッテリーEV『ID.4』とプラットフォームを共有する『エニャック』もすでにヨーロッパ市場に投入されるなど、新技術の投入で本家フォルクスワーゲンとのタイムラグがほとんどない点もグループの中国市場や新興国市場向けモデルと異なるところだ。シュコダ・エニャック iVシュコダ・エニャック iV

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 宮崎「シーガイア」にサーキットがオープン! セグウェイの「電動ゴーカート」を日本初導入
  3. 日産『ムラーノ』新型、米IIHSで最高の安全性評価
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. ホンダ『ヴェゼル』の「RS」グレードを先取り!? インドネシアで新型『HR-V』発売
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  2. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  3. シェフラーがヴィテスコ合併後初の出展、ポートフォリオ拡大と顧客対応力をアピール…人とくるまのテクノロジー展2025
  4. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  5. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
ランキングをもっと見る