米国発のEVメーカー・リヴィアン、その特徴・戦略…的を絞ったラインナップ

リヴィアン R1T
リヴィアン R1T全 17 枚

リヴィアンは、米国の電気自動車(EV)メーカーだ。2009年に創業し、当初は自動運転のEVを目指していた。まずは『R1』という2+2のハイブリッドクーペを開発し、ディーゼルエンジンHVと、レース用の「R1GT」も構想されていた。

現在リヴィアンを特徴づけているのは、EVのピックアップとSUVに的を絞ったことだ。また、テスラと同じように独自の充電網を計画している。

ピックアップは『R1T』、SUVは『R1S』と名付けられている。いずれも、車体全長が5mを超え、車幅は2mを上回るなど、日本では扱いにくいような大きさだ。米国では、日常の足としてピックアップトラックが愛用されているし、近年のSUV人気もある。

一方で、これまでテスラが『サイバートラック』を発表しているが、より多くの人が日常的に手を出しやすいようなピックアップEVの選択肢はなく、米国市場を主体としたリヴィアンの商品戦略がそこからうかがえる。

リヴィアンのピックアップやSUVの諸元を見るなかで目に付くのは、積載重量に加え、牽引能力を明らかにしていることだ。米国では、キャンピングカーに止まらず、ボートなど大きな荷物を牽引して運び、目的地で遊ぶといった用途が求められる。マツダのSUVも、米国市場を視野に牽引能力を東京モーターショーなどで示したことがある。EVとなっても、牽引能力がなければ米国では使い物にならないということだ。

一充電走行距離は、643kmとのことで、これもテスラ同様に一充電走行距離を長くする仕様としている。その分、リチウムイオンバッテリーの車載量は多くなるが、「21700」と呼ばれるバッテリー仕様は、懐中電灯、電動自転車、電動工具、ゴルフカートなどでも使われているとされる汎用型で、テスラがモデルSなどで使った「18650」と同じように、EV以外でも利用されることにより、原価を抑える効果が期待できるのではないか。またバッテリーメーカー側も、一つの形式のバッテリーを大量に受注すれば、量産効果を高めることができる。

リヴィアンにしても、テスラにしても、使えるものは汎用部品を用い、性能や安全性は、電気の制御で対処する手法がみられる。これは、1990年代からカリフォルニア州を中心に、EV事業に乗り出すベンチャー企業が多くあり、その知見が今日活かされているといえる。

それでも、R1TやR1Sの車両価格は、6万ドルを超えるとのことであり、邦貨に換算すれば700万円前後は下らないだろう。トヨタ『ハイラックス』のエントリー車種の約2倍だ。

米国のバイデン政権は、9年後の2030年までに新車販売の50%をEVまたは燃料電池車(FCV)にするとした。FCVの普及が見通せない中、主力はEVであり、なおかつ米国市場ではピックアップのEVが増えなければ目標は達成しにくいだろう。リヴィアンのEV戦略は、そうした米国特有の交通環境も踏まえた深謀遠慮ということができるのではないか。

《御堀直嗣》

御堀直嗣

御堀直嗣|フリーランス・ライター 玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

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