【ダイハツ ロッキー 新型試乗】後光がさして見える「e-SMART」の燃費…岩貞るみこ

ダイハツ ロッキー e-SMART HYBRID
ダイハツ ロッキー e-SMART HYBRID全 8 枚

後光がさして見えるハイブリッドの燃費

これまで、1リットル+ターボエンジン搭載で元気系だった『ロッキー』に、時代の流れを汲んで新開発された1.2リットルエンジンのバリエーションが加えられた。エンジンで走る通常のタイプ(以下NA)と、このエンジンで発電した電気で、電気自動車のように走るハイブリッド「e-SMART HYBRID」(以下HEV)である。

注目はやはり、HEVだろう。二酸化炭素排出量問題は年々、注目が高くなるほか、昨今の原油高はドライバーを直撃する。カタログ燃費の新基準(WLTCモード)で、リッターあたり28.0km(以前のJC08だと34.8km)という数字は、後光がさして見えるほどだ。

ハイブリッドにはいくつかタイプがあるけれど、ロッキーが採用したのは前述したとおり、エンジンは発電にのみ使い、走りはモーターで行う、いわゆる日産『ノート』と同じ形式のもの。このタイプはバッテリーを含めたハイブリッドシステムをコンパクトにできるため、小さいクルマに向いている。後席下に収めたハイブリッド用バッテリーも、後席のシート座面裏側を絶妙な形で削るなどして室内への影響はもちろん、既存の燃料タンクも、NAに対してわずか3リットルだけのマイナスにとどめることに成功している(NAが36リットル、HEVが33リットル)。

エンジンの振動を基本骨格がうまく受け止めてくれる

ダイハツ ロッキー e-SMART HYBRIDダイハツ ロッキー e-SMART HYBRID

走り出しは、モーターならではの絶妙の加速感が味わえる。スムーズで、なめらか。バッテリーはたくさん積めば燃費をよくしやすいけれど、そのぶん、車両価格は上がり車内空間を侵略する。適正価格と適正空間のバランスを保ちつついかに燃費を上げるかに苦心したダイハツの答えは、アクセルを踏み込むと発電するためにちょいちょいエンジンが始動するということだ。

こうなると、エンジンがかかるたびに始動音が発生する。人間は不思議なもので、一定に聞こえるよりも、オンオフがあるほうが気になってしまう。そのため、消音のための部材を各所に入れてあり、エンジン始動音はかなり抑えられている。ただ、部材そのものの効果以上に、DNGAと呼ばれるダイハツの基本骨格(クルマの土台や柱部分)が、エンジンの振動などをうまく受け止めているからこその、静けさの実現だといえる。

さらに、アクセルを離すと減速がぐーっとかかるワンペダル走行の選択もスイッチひとつで可能になっている。この機能を使いこなすと下り坂がすごく楽に安心して走れるので、下り坂に苦手意識のある人はぜひ活用してもらいたい。

ダイハツ ロッキー e-SMART HYBRIDダイハツ ロッキー e-SMART HYBRID

乗り方に合わせてNAも選びたい

さて、このようにHEVの静かさと燃費のよさはかなり気に入ったのだが、実は、ハイブリッドではない普通のNAも負けてはいない。走り出しがやはり滑らかなのだ。アクセルをちょんと踏んだ瞬間から、するすると前に進み、さらに踏み込むとぐっと加速していく。最初の「するする」が気持ちよく、走り出しのストレスがないのである。街中を走る機会が多い人は、かなり楽に走れるはずだ。

ただ、HEVと違うのは、信号待ちあとの挙動だ。HEVはブレーキからアクセルに踏みかえると、すぐに走り出すのに対し、NAは、停止後にアイドリングストップし(ゆえに信号待ちはすごく静か)、走り始めるためにブレーキを離すとエンジンが再始動するのだが、ブレーキを離してアクセルを踏んで加速するまでのあいだ、コンマ数秒、ドライバーの気持ちより遅れることがある。私がせっかちなせいもあるのかもしれないけれど。

その代わりといってはなんだが、NAは、ロッキーお得意のバケツのように深い床下の荷室がそのまま残っている。HEVは、はみ出した小さなバッテリーを入れるため、床の表面は同じながら、床をめくるとバッテリーが鎮座していて、バケツと呼べるほどのスペースがないのである。

荷物スペースを最大限に生かし、野山に行きたい人は、NA。街中でちょいちょい走る人はHEV。ぜひ、自分の乗り方に合わせて選んでいただきたい。

ダイハツ ロッキー e-SMART HYBRIDダイハツ ロッキー e-SMART HYBRID

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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