新連載[マニアック・カーオーディオ]フロント5ウェイ+サブはこう作られた

「フロント5ウェイ+サブウーファー」というスピーカーレイアウトが採用されたイングラフ(青森県)のデモカー、BMW・523。
「フロント5ウェイ+サブウーファー」というスピーカーレイアウトが採用されたイングラフ(青森県)のデモカー、BMW・523。全 7 枚

不定期で連載している当特集では、カーオーディオにおける“マニアック”なシステム構築法や音質向上策を、毎回1つずつ紹介している。今回は、「フロント5ウェイ+サブウーファー」という豪華かつ複雑なスピーカーレイアウトが採用されたとあるデモカーに焦点を当てる。

【画像全7枚】

マニア垂涎の名機で、豪華なシステムを構成!

とあるデモカーとは、青森県八戸市に店舗を構える実力店、“イングラフ”のBMW・523だ。当車には、なぜにこのようなシステムが積まれているのか。その狙いから、インストール法、チューニング術、そしてサウンドインプレッションまでを詳細にリポートしていく。

まずは、用いられている機材の顔ぶれを紹介していこう。

ソースユニットにはソニーのデジタルミュージックプレーヤー『DMP-Z1』が使われていて、プロセッサーにはブラックスの『BRAX DSP』がチョイスされている。パワーアンプも同じくブラックスの『MATRIX-MX4 PRO』(4台使用)だ。そしてフロントスピーカーには、イートンの旗艦スピーカー『CORE』がおごられている。なお、ミッドレンジ(スコーカー)とミッドウーファーがぞれぞれ2セットずつセットされている。加えてサブウーファーがブラックスの『Matrix ML-10 SUB』だ。採用されているユニットすべてが、マニア垂涎のハイエンド機器。至って豪華な陣容だ。

で、フロント5ウェイの各スピーカーユニットは、以下のように配置されている。ツイーターがミラー裏、ミッドレンジ-HiがAピラー、ミッドレンジ-Lowがドア上部(純正スピーカー位置)、そしてミッドウーファー-Hiがドア下部、ミッドウーファー-Lowがシート下の純正サブウーファー位置、このように取り付けられている。写真を見ていただければ分かるとおり、複雑なスピーカーレイアウトでありながらも案外自然に収まっている。

ちなみにミッドウーファーをダブル付けする場合には、その2つに同帯域を再生させることもあるが、このクルマではそのような運用法はされていない。片側で使われている5つのユニットはすべて、異なる帯域を担当している。フロントスピーカー帯域を5つに区切り、きっちり役割分担させてある。

「フロント3ウェイ」に潜む課題の解決を目指し「5ウェイ」を敢行!

さて、このようなスピーカーレイアウトを敷いている狙いは何なのか、そこのところを“イングラフ”の木村さんに教えてもらった。

「ひと言でいうなら、フロント3ウェイ+サブウーファーシステムで課題となる部分を解決するためです。課題は主には2つあります。1つは、ミッドレンジの負担が大きいことです。当店では、3ウェイを組む場合にはミッドレンジに広範囲な帯域の再生を担わせることが多いです。ボーカル帯域を装着位置の高いミッドレンジで鳴らしきれれば、サウンドステージを目の前で展開させやすくなるからです。

しかし担当範囲を広く持たせると、スムーズなピストンモーションの妨げになることも有り得ます。大きな問題にはならないことの方が多いですが、負担を減らせればまた違った結果が出るのではないか、そう考えました。なのでこのクルマでは、ミッドレンジ帯域を2つのユニットで分割再生しています。

課題の2つ目は、重低音の繋がりです。サブウーファーはどうしても遠く置かざるを得ませんが、フロントスピーカーの近くに置けるのであればそれに越したことはありません。なのでミッドウーファーを2つ使い、シート下のミッドウーファーでサブウーファー帯域の上側とミッドウーファー帯域の下側の音を鳴らしています。大体、4、50Hzから100Hzくらいの帯域を。

結果、シート下のミッドウーファーが、ドアのミッドウーファーとサブウーファーの橋渡し役を果たしてくれて、重低音が上手く繋がりました。低音の前方定位もより良くなり、かつドアのミッドウーファーの負担も減らせていますのでその点でもメリットを発揮しています。

ところで、スピーカーユニットはすべてエンクロージャーに組み込んだ上で車両にインストールしています。ツイーターは製品に装着されているバックチャンバーを使っていますが、それ以外はエンクロージャーをワンオフしました。

容量の設定は厳密に行いました。インピーダンス特性を測定した上で決定しています。それぞれの担当帯域を鳴らすのに最適な大きさで作っています」

「フロント5ウェイ」は、角度合わせもしやすい!?
しかしサウンドチューニングは難しい…。

「そして、各スピーカーの取り付け角度も吟味して決めています。それぞれ、反射によるピークが出にくい角度を模索しました。なお各スピーカーの担当帯域が狭いことは、角度決定においても利を生みました。広い帯域を鳴らす場合には、あちらを立てればこちらが立たなくなる、というようなことがよく起こります。でも再生帯域が狭いと、ケアすべきポイントも絞れます」

なお、スピーカーユニットの数が増えればサウンドチューニングは難しくなるはずだ。そのあたりはどうだったのだろうか。

「正直、チューニングには苦労しました。特に、位相合わせの難易度が高くて。ちなみに、キモとなったのはスロープの設定です。いろいろと試したのですが、最終的には急峻なスロープを選択しています。基本的にマイナス24dB/octまたはマイナス32dB/oct、このいずれかを採用しています。

というのも、緩やかなスロープにすると2つ上(あるいは下)のスピーカーにも影響が及んでしまうんです。再生帯域が狭いからです。しかし急峻なスロープにすればそれを回避できます。ちなみに5ウェイでは各スピーカーの取り付け位置が近いので、急峻なスロープは向いていました。すぱっと切っても中ヌケしにくいんです。

そしてタイムアライメントと各スピーカーのレベル合わせも厳密に追い込み、その上で最終的には音楽を聴いて聴感上でバランスを整えました」

さて、気になるのはそのサウンドだが、試聴してみると完成度の高さに唸らされた。解像度やS/Nが高くスペック的に優れたHi-Fiサウンドに仕上がっている。そしてその上で、音楽性が非常に高い。胸を打つサウンドが展開されていた。戦略が実を結んでいることは間違いない。

もしも当デモカーの音を聴く機会に恵まれたらぜひとも試聴を。一聴の価値は、すこぶる大きい。

「フロント5ウェイ+サブ」というスペシャルシステムは、こう作られた…。「ザ・マニアック・カーオーディオ」第3回

《太田祥三》

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