ドゥカティのアドベンチャーモデル「ムルティストラーダV4S」に乗って、日本の美しさを再発見する。
それが「Multistrada Discover Japan Trip」の企画主旨だ。我々レスポンスは大阪から京都、三重、愛知を巡るルートを選択し、2泊3日の旅に出た。ここからは、その後半の模様をお届けする。(前編はこちら)旅の1日目は大阪から夜の京都へと移動した。エネルギッシュできらびやかな大阪からは一転。古都らしい静寂と陰影の中、日中の喧騒で疲労した躰が徐々にリラックスしていく。
和の心とドゥカティレッドが映える京都
一夜明け、比叡山の向こうに朝日を感じながら出発。京都屈指の観光地、嵐山方面へとムルティストラーダV4Sを走らせる。スポーツ/ツーリング/アーバン/エンデューロの4パターンが設定されているライディングモードの内、今回はほとんどの場面でツーリングを選択した。スロットルに対するレスポンスと、回転上昇に伴う過渡特性が最もナチュラルに躾られ、風景を眺めながらのクルージングに最適なモードだった。
両脇の孟宗竹がうっそうと生い茂り、空を覆い隠す「竹林の小径」渡月橋を越え、大河内山荘庭園へと向かう。このあたりを縦横無尽に走る細道は、本来ならサイドケース付のアドベンチャーモデルで踏み入れることをためらわせるものの、低シートとフレキシビリティに富むエンジンがフォロー。散歩をする地元の人々、我々と同じように撮影を楽しむ人々へ配慮しながら、ゆっくりと進む。
2日目最初の撮影スポットに選んだのは「竹林の小径」だ。ここは本当に美しい。その名の通り、小径の両脇には孟宗竹がうっそうと生い茂り、空を覆い隠す。とはいえ、竹そのものの色合いと、笹の間から降りそそぐ木漏れ日におかげで柔らかな光が周囲を包む。これほど管理された場所にもかかわらず、バイクで立ち入り、走れることに感謝したい。青々とした竹と、ドゥカティレッドのコントラストが映える。
保津峡の渓谷の合間に現れた隧道と落合橋竹林の小径を後にし、今度は京都日吉美山線(府道50号線)を北上する。保津峡の渓谷美を横目に眺め、深い山々の間を縫うワインディングを堪能。苔むし、所々濡れた路面を事も無げに進むムルティストラーダV4Sに頼もしさを覚えつつ、市内へ戻り、仁和寺でしばし小休止を取る。ここは鎌倉幕府を開いた源頼朝の三男、貞暁(じょうぎょう)が仏門に入った場所としても知られ、今年の大河ドラマでも描かれるのではないだろうか。
鎌倉幕府を開いた源頼朝の三男、貞暁(じょうぎょう)が仏門に入ったとされる仁和寺高速道路で本領を発揮するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)
さて、そうこうしている内に日が高くなり、気温も上昇。市内もまた、観光客のにぎわいと熱気に包まれていく。わざわざ渋滞にはまる必要はなく、高速道路を使って一気に三重まで足を伸ばすことにした。名神高速から新名神高速、東名阪自動車道を経由して関宿へ。ここは東海道五十三次47番目の宿場町として栄え、昔ながらの雰囲気と建築物をそっくりそのまま今に残している。江戸の趣を伝える風情の中、時が止まったかのような空間を楽しんだ。
車体に装着されたミリ波レーダーが周囲の交通状況を感知し、車間距離や車体姿勢に応じて、自動的にスピード調整を行ってくれる「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」ところで、ここに至る道中、ひとつのハイライトがあった。それが、ムルティストラーダV4Sに採用された2輪初の「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」の効果だ。これは、車体に装着されたミリ波レーダーが周囲の交通状況を感知し、車間距離や車体姿勢に応じて、自動的にスピード調整を行ってくれるデバイスである。加速と減速(スロットルオフだけでなく、必要に応じてブレーキも作動)のための操作を、多くの場面でバイクの判断に委ねることができ、快適かつ安楽な巡航を可能にしている。
東海道五十三次47番目の宿場町として栄えた関宿京都から関宿までは、およそ100km。その行程を、ほとんどACCの制御に任せてみた。すると、緊張と疲労の度合いは明らかに通常の走行とは異なり、温存できた体力を他に使えることの恩恵は大きい。一度これを知ってしまうと、なんのアシストにも頼らないストイックなツーリングには、戻れなくなるのではないか。
江戸の趣を伝える風情を感じるこうして2日目に立ち寄った先々は、長い歴史や伝統の上に成り立つ場所であり、静か動で言えば静。新か旧で言えば旧に当たる。このまましっとりとした面持ちでホテルへ入ってもよかったが、ムルティストラーダV4Sとなら、まだまだ距離を稼げるに違いなく、しばし考えた後、四日市へと車体を向けた。
四日市の港湾地帯行き先は、塩浜地区のプラント群だ。製油施設や変電所が立ち並び、それらが夜景の中に浮かび上がっているように見える異世界感で知られる。日中に堪能した木造建造物とは対照的に、ここはスチールやアルミ、コンクリートで固められ、そのメカニカルな雰囲気が、ムルティストラーダV4Sの造形にフィット。バリエーションに富む、目まぐるしい一日を終えて、心地いい眠りについた。
製油施設や変電所が立ち並ぶ工場地帯青山高原で爽快なワインディングを堪能
旅の締めくくりとなる3日目。初日からずっと晴天だったが、この日は一段と晴れ渡り、朝から軽く汗ばむほど。せっかくなので、ドゥカティらしく最後は走りに徹することにした。
四日市からアクセスがよく、しかも走りごたえのある所と言えば、やはり青山高原は外せない。伊賀市と津市にかかる国定公園の一角を成し、標高700~800mの山々を爽快なワインディングが貫いている。
走りごたえのあるワインディングが続く青山高原青山高原を走ると言えば、それは国道163号線と165号線をつなぐ県道512号線のことを指す。今回、我々が選んだメインルートもまさにそうなのだが、そこから少し外れたところに、絶景ポイントを見つけた。せっかくなので、ちょっとガイドしておこう。
ムルティストラーダV4Sならどこにだって行ける県道163号線の途中、長野川を渡って県道512号線に入って西進する。そのまま10kmほど走ると、右折する道を見つけることができるはずだ。特に目印も看板も、まして信号もないのだが、ここを曲がって大山田テレビ中継局跡に向かって北上すると、一歩通行の標識が備えられたダートが出現。もっとも、知らないダートをムルティストラーダV4Sの巨体で踏み入れるのは少々勇気が必要かもしれないが、ここは安心して大丈夫。ダートといってもわずか150mほどの区間に過ぎず、しかも路面はしっかり踏み固められているため、リスクはほとんどない。
風力発電のタービンと同じ目線になれる高台だ数十m入るとバイクを止められるスペースも充分あり、間近に風力発電のタービンを、遠くに伊勢湾を臨む雄大な景色がとにかく素晴らしい。空と海の青に、新緑の緑が重なり、誰がどう撮っても映え写真にしかならない。
ムルティストラーダV4Sの軽快なハンドリングで青山高原を楽しむそれからしばらく、ムルティストラーダV4Sが披露する軽やかなハンドリングとともに、青山高原一帯を満喫。その後は再び東名阪自動車道に乗り入れ、伊勢湾岸自動車道、名ニ環状線などを経て、ゴールのドゥカティ東名名古屋に無事到着した。3日間に渡る旅に成果は、美しい写真の数々で疑似体験して頂きたい。
Ducati Multistrada Discover Japan Trip vol.2元来の素性の良さに加え、現在考え得る先進技術のほとんどすべてが盛り込まれたムルティストラーダV4S。「あらゆる道」という意味の車名に偽りはなく、その快適性と走破性を、今度は皆さんが体感してみてほしい。
Multistrada Discover Japan Trip特集ページはこちら