輸送密度1000人/日の線区、協議開始から3年以内に決着を…国交省のローカル線検討会が提言

金山駅に進入する根室本線の普通列車。同駅を含む富良野~新得間ではバス転換の方向性が固まっている。
金山駅に進入する根室本線の普通列車。同駅を含む富良野~新得間ではバス転換の方向性が固まっている。全 4 枚

国土交通省は7月25日、「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」における提言案を公表した。

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三大都市圏を除く人口減や少子高齢化、高速道路の進展、コロナ禍における鉄道を取り巻く環境の激変などで、いわゆる「ローカル線」と呼ばれる地域の鉄道は危機的な状況を迎えていると言われている。

とくにJR北海道、JR西日本、JR四国、JR九州の4社は、輸送密度が2000人/日以下となっている線区の収支状況を公表。地域交通の再構築へ向けた議論を提案しており、動揺が広がっている地域も多い。

2019年度におけるJR線の輸送密度実績。北海道では東部と北部がほぼ1000人未満だが、JR北海道の綿貫泰之社長は、宗谷本線や石北本線などの黄色線区について、廃止を念頭にしていないと発言しているという。2019年度におけるJR線の輸送密度実績。北海道では東部と北部がほぼ1000人未満だが、JR北海道の綿貫泰之社長は、宗谷本線や石北本線などの黄色線区について、廃止を念頭にしていないと発言しているという。

そこで2月から開かれているこの検討会では有識者が「鉄道事業者と沿線地域が協働して、利用者にとって利便性と持続性の高い地域公共交通を再構築していく環境を整えるための政策のあり方」を議論。7月25日に開かれた5回目の会合で、「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言~地域戦略の中でどう活かし、どう刷新するか~」と題した提言が取りまとめられた。

それによると、JR旅客6社では発足時の1987年度と比べて、2020年度は日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)で廃止基準とされた輸送密度4000人/日未満線区の割合が36%から57%に増加。高速道路の供用延長やマイカーへの移行も倍以上に伸び、高速バスの運行系統数も1985年度の249本から2018年度は5132本まで飛躍的に増加するなど、三大都市圏を除いた線区の状況が厳しさを増しているという。

JR西日本では芸備線と並び収支が深刻な木次(きすき)線。2018~2020年度の営業係数が8119、2020年度の輸送密度が18人/日と、芸備線東城~備後落合間に次いで深刻な状況だ。JR西日本では芸備線と並び収支が深刻な木次(きすき)線。2018~2020年度の営業係数が8119、2020年度の輸送密度が18人/日と、芸備線東城~備後落合間に次いで深刻な状況だ。

JR6社では、発足から現在に至るまで、そのような環境変化に応じてローカル線の上下分離方式への移行や廃止といった動きが多数見られたが、JR会社法に基づく大臣指針では「現に営業する路線の適切な維持に努めるべきであり、単に不採算であることや一定の輸送密度を下回っていることのみで、路線の存廃を決定すべきではない」とされており、沿線自治体への十分な説明などが求められている。

一方で、滋賀県の近江鉄道などの私鉄では、都道府県が中心となり交通政策基本法や地域公共交通活性化再生法に基づく法定協議会や任意協議会を設け、「地域のモビリティの在り方」について関係者と検討が進められていたが、実際には鉄道事業者が地域と合意形成を図ることが難しいケースが多く、提言では国の積極的な関与も求めている。

それらの点を踏まえ、平常時の輸送密度が1000人/日未満で、自治体と比較的連携しやすい第三セクター鉄道を除いた線区を対象に仮称「特定線区再構築協議会」(特定線区協議会)を設け、「廃止ありき」「存続ありき」ではなく協議を進めることが適当とされた。

JR九州の日南線。観光特急『海幸山幸』も走るが、2020年度の輸送密度は田吉~油津間が934人、油津~志布志間は171人となっている。JR九州の日南線。観光特急『海幸山幸』も走るが、2020年度の輸送密度は田吉~油津間が934人、油津~志布志間は171人となっている。

この1000人という基準は国鉄再建法廃止基準の4分の1だが、隣接駅間の一方向で1時間あたりの最大旅客輸送人員が500人/日以上になる場合や基幹的な路線と判断される場合は対象から除外するとしている。

ただ、この特定線区協議会も「地域公共交通としての利便性と持続可能性を早急に改善する」という観点から無制限に行なわれるわけではなく、協議開始から最長でも3年以内に沿線自治体と鉄道事業者が合意し、対策を決定するべきであるとされており、検討の過程では、線区の評価を国鉄再建法で見られた輸送密度に応じた一律的な視点ではなく「あくまでも利用者や地域戦略の視点に立って、あるべき公共交通はどのようなものか、という視点から評価すべきである」としている。

《佐藤正樹》

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