バーチャル・ドライビング・シミュレータは「超リアル!」…VDXスタジオ

ISIDとエステックが9月1日より開始するドライブ・シミュレータ
ISIDとエステックが9月1日より開始するドライブ・シミュレータ全 7 枚

自動車メーカーをはじめとするモビリティ業界は、CASEやカーボンニュートラルへの対応に向けて、いかに革新的な機能やサービスを短期間で製品化するかが最重要課題となっている。

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しかし、快適性や利便性など、乗り手の感性に左右される評価は実車開発を終えてから行われることがほとんどで、そのため、新機能やサービスについては市場がどう受け止めるかを開発段階で確認することは困難だった。

電通国際情報サービス(ISID)とエステックが9月1日より開設すると発表した次世代モビリティのバーチャルシミュレーション拠点「VDX Studio(Virtual Driving Experience Studio:ヴィデックススタジオ)。正式なオープンを前に現地(横浜市金沢区)で取材することができた。

◆感性までも評価できる超リアルな世界をバーチャル再現

今回開設する「VDX Studio」は、自動車メーカーやサプライヤーだけでなく、モビリティ事業に関わる幅広い企業が利用できる日本初のレンタル型スタジオとしてオープンするもの。実車試験に基づいた高精度なシミュレーション用ソフトウェアと、プラットフォームに中小型6軸モーションベースを組み合わせることで、小型ドライビングシミュレータでは対応できなかった感性評価の領域までカバーできる。

その中で「VDX Studio」が狙うのは中小型領域で、中型では難しい部品・上物の交換やソフトウェアの入り換えによって変化する業務の柔軟性にも対応できることを特徴としている。これによって、乗り手の感性を踏まえた確認が開発段階で行えるようになるという。

さて、スタジオ内に入ると、そこには6軸モーションベースの上にVW『ゴルフ』(7th)の運転席ユニットを載せたシステムが置かれていた。説明によれば、運転席ユニットは走ったときのボディ剛性が保てるよう、補強材を加えて7thゴルフの剛性を再現したものなんだそうだ。「VDX Studio」として貸し出す場合はこのユニットを使っての提供となるが、コストの上乗せにはなるものの、要望に応じて別車両を使うことも可能だという。

シミュレータの周囲には超高精細なソニー製Crystal LEDディスプレイを正面・左右の3面に配置。ドライバーが視認する機会が多い正面には最も解像度の高いパネルを使用し、左右は少し解像度を落としたパネルを採用する。また、右側面のパネルは左よりも少し長いパネルになっていたが、これは運転席側でよりリアルな体験をするための工夫であり、また軽自動車クラスならそのまま車両全体を載せることをも想定しているという。

コックピットを動かすモーションプラットフォームは、20Hzまでの振動を加えることが可能で、より細かな振動の再現に対してはシート下に高周波を表現する電磁加振機が対応する。音響面でもリアリティを追求し、そのためにサブウーファーを加えた16chシステムが組み合わせた。また、この日は視線検知できるメガネも組み合わせ、シミュレータ上で再現された動きに対してドライバーがどんな視線対応をしているかも検証。他にも生体センサーなどを組み合わせることも可能だという。

◆操作に応じてコックピットがリアルに前後左右へ追従

運転席に座ると、視界は前方/左右を含め、すべてその高精細なグラフィックに覆い尽くされていた。特に前方に見える風景のリアルさは圧感で、建物や駐車中の車両などが細部まで判別できる。この画面に囲まれた状態でメーター内で表示された案内したがって進んでいく。アクセルを踏んだときはコックピットが少し浮き上がる感じが再現され、ブレーキを踏めば前方に沈むのが伝わってくる。もちろん、カーブでもコックピットが傾いてリアルさを表現していた。

“走行中”は対向車線をはみ出して来るクルマがあったり、車線変更する際はアウターミラーにも周囲の様子が映し出されている。また、自動運転モードで走行中は、交差点の左側から飛びだしてきたクルマに反応して緊急停止するシーンも体験した。まさに実写さながらのリアルタイム映像が周囲を流れ、スピードをよりリアルに感じることができるようになっていたと言っていいだろう。

強いて難を言えば、ステアリングは路面の感触がほとんど伝わって来ないため、真っ直ぐ進むのが意外に難しかった。ちょうどテレビゲームでクルマを走らせている感覚に近いのだ。それと、操作したときとコックピットの動きには若干のズレがあるようで、それが車酔いにつながってしまった。これは慣れるしかないのだと思うが、担当者によれば一般の方に被験者になってもらったが、その時は特に違和感を訴える人はいなかったという。やはり、私特有の不慣れさが原因だったのかもしれない。

とはいえ、ここまでリアルな世界がシミュレータとして体験できることで、それまで不可能であったシーンの再現がバーチャルでよりしやすくなるのは間違いない。これにより、車両開発のコスト削減につながるのはもちろん、コンセプト段階からトライアルを繰り返すことで、今までの発想にはなかったクルマの開発が進む可能性もあるだろう。

聞けば、日本は欧州に比べるとドライビング・シミュレータの活用で後れを取っているという。それだけに日本でもこうした利用が今後ますます増えてくるとISIDでは予想しており、現時点でも2020年の1500億円から年平均で7.2%の成長があり、25年には2100億円に達する有望な市場に成長すると見込む。こうした活用が日本車の新次元の開発につながることを期待したい。


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《会田肇》

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