参議院は8月15日、「北海道新幹線札幌延伸事業の事業費及び輸送密度に関する質問主意書」に対する答弁書を公表した。
質問主意書とは国会の開会中に議長経由で内閣に対し出すことができる質問文書のことで、当該のものは日本共産党所属の参議院議員で北海道札幌市出身の紙智子氏から出され、内閣総理大臣岸田文雄名義で答弁書が出されている。
この答弁書には、2012年度の着工時と2017年度に事業再評価が行なわれた時の北海道新幹線新函館北斗~札幌間の駅間別年間輸送人員が示されており、各区間では2012年度が520~550万人、2017年度が620~690万人とされている。
これを1日1kmあたりの輸送密度に換算すると、2012年度の数字で1万4000~1万5000人ほど、2017年度の数字で1万7000~1万9000人ほどとなっている。
参議院の答弁書を基に作成した北海道新幹線の輸送密度比較(2012年度、2017年度)。札幌に近い新小樽~札幌間が最も低いが、小樽~札幌間は在来線が存続する上、新小樽駅が中心部から離れていることもあり、区間利用者が限られると見込まれたのだろうか。逆に長万部~倶知安間は一番高いが、ニセコを中心とした観光需要が見込まれることを物語っているようだ。ちなみに、JR東日本が公表している2016~2020年度における路線別利用状況によると、東北新幹線における2017年度の輸送密度は、盛岡~八戸間が1万7013人、八戸~新青森間が1万1579人となっている。
このデータと比較すると、東北新幹線の末端区間と比べ北海道新幹線はかなり高めだが、答弁書では航空機など競合する交通機関の競争力が北海道新幹線札幌延伸により相対的に低下することになるとしており、利用者転移を意識したかなり強気な数字であることを物語っている。