サプライチェーンのリスクマネジメントとは?

サプライチェーンを維持・継続することの重要性

DX時代ならではのリスクマネジメント

産業全体のサステナビリティを高める効果も

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降、世界中の至るところでサプライチェーンが寸断されている。感染者の拡大による飲食店の休業や工場の稼働停止といった直接的な影響だけではなく、ロックダウンによって港湾や空港などの物流インフラが機能不全に陥ることの余波も小さくない。

加えて、ロシアによるウクライナへの侵攻は欧州を中心に深刻な影響を及ぼしつつある。ロシアやウクライナからの産物の供給が途絶えるだけではない。欧州の運送会社は人件費の安いウクライナ人をトラックドライバーとして雇用していたからだ。今、欧州の運送現場では、トラックドライバーの不足が深刻化しており、一部では今まで届いていたモノが届かない事態も生じているのである。

新型コロナウイルス感染症の流行が世界的に拡大した2020年以降、サプライチェーンを維持・継続することの重要性が再認識されたと言ってよいだろう。いついかなるときも、必要なモノを、必要な場所に、必要な時間に届けることは簡単ではない。サプライチェーンのリスクマネジメントが問われているのである。

◆サプライチェーンを維持・継続することの重要性

リスクマネジメントとは、新型コロナウイルス感染症の流行に代表されるパンデミック、地震や水害といった自然災害、紛争やテロ、事故、サイバーアタックなどのリスクの発生を予測・想定し、あらかじめ対応策を講じておくことで、被害を最小化したり、いち早く復旧を成し遂げたりすることを指す。この考え方自体は、サプライチェーンのリスクマネジメントであっても変わらない。問題は、その対象範囲が格段に広くなるということだ。

第一に、自社のみならず、調達先や納品先も事業活動を継続できなければ、サプライチェーンは途絶する。直接の取引先だけではなく、「調達先の調達先」や「納品先の納品先」も事業活動を継続できている必要がある。BCP(Business Continuity Plan)の策定にあたっては、主要な取引先と事業活動を継続するための連携のあり方を協議しておくべきである。加えて、「調達先の調達先」や「納品先の納品先」まで管理しきれないことを考えると、代替の調達先・納品先を確保しておくことも大事となる。

サプライチェーンがモノを供給するプロセスである以上、モノを運ぶ物流会社との連携も重要だ。主な委託先の物流会社とは、危機的事象が発生したときの対応を協議し、BCPに反映させるだけではなく、共同での訓練を定期的に実施するなど、有事の際に迅速かつ的確に協力し合える態勢を整えておくことが望まれる。

物流会社との連携がしっかりしていても、道路、線路、港湾、空港といった物流インフラが使用できなければ、モノは運べない。したがって、各物流インフラが使用可能な状況にあるのかを迅速に把握できるようにしておくことも大切である。あわせて、「東北自動車道が使えないときには鉄道で運ぶ」「東京港や横浜港が使えないときは新潟港から釜山港経由で輸出する」「豪雨により道路の冠水が予想されるときには出荷のタイミングを早める」など、委託先の物流会社とともに対応策を準備しておくべきだ。


《小野塚 征志》

株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。 ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。 内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員、日本プロジェクト産業協議会「国土創生プロジェクト委員会」委員、ソフトバンク「5Gコンソーシアム」アドバイザーなどを歴任。 近著に、『ロジスティクス4.0-物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ-次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『DXビジネスモデル-80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)など。

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