マツダ、モデルベース開発を活用して自動車産業のオープン化を加速

若手の力も伸ばすモデルベース開発

独自技術にこだわり、全体最適が苦手な日本

モデル化されたデータの活用方法

マツダ シニアフェロー イノベーション 人見光夫氏(ETAS Symposium)
マツダ シニアフェロー イノベーション 人見光夫氏(ETAS Symposium)全 5 枚

これからの自動車開発の鍵を握るのが、自動車の設計開発において仮想モデルを活用するモデルベース開発(MBD)だ。マツダはこの考えをいち早く自動車業界に持ち込み、実践している。さらにMDBでモデル化されたデータを業界の共通財産として活用することで、日本の自動車業界の垂直統合型のものづくりを超えた効率の良い水平的な横の連携も目指す。

同社シニアフェローイノベーションの人見光夫氏はこれまで長年にわたってMBDの導入・実践を主導し、エンジンの先行開発に取り組んできた。その開発技術は同社の柱である「SKYACTIVエンジン」の開発においても活用されている。人見氏は、11月中旬に開催された「ETAS車載制御・組み込みシステム開発シンポジウム2022(ETAS Symposium 2022)」にてMBDによる開発の効率化と技術的な展望について講演を行った。

◆若手の力も伸ばすモデルベース開発

モデルベース開発とは、部品、コンポーネント、モジュールなどのシステムを構成する要素を「モデル化」することで、設計開発を効率化する手法だ。モデル化するというのは、例えば部品のサイズ、強度、温度特性、性能を数値化すること。これらの数値はシミュレーションによって利用される。他の部品と組み合わさったとき、モジュールやシステムを構成したとき、どのような動き、どのような性能を出せるのかを計算する。

これによって、プロトタイプの制作試験や実機によるテスト、およびその繰り返しによる開発プロセス全体を効率化、短縮化する。シミュレーションは主にコンピュータ上で行われ、試作やテストといった試行錯誤の時間とコストを大幅に下げることができる。

現在のシミュレーションツールでは、流体、物性、熱、電磁界、機構のような事象ごとにとらわれず、これらを組み合わせたコンポーネント、モジュール、システムまで統合的に演算することが可能だ。特に、ADAS機能や自動運転技術の開発においては、MBD、シミュレーション技術は不可欠な存在となっている。

マツダでは新世代モデルの投入前からモデルベース開発を取り入れ、数々の製品を生み出している。人見氏はMBDの導入効果について「開発時間の短縮だけではなく、若手の活躍も後押しできる」と語る。「SKYACTIV-X」の開発では、エンジンの異常燃焼の問題で行き詰まったとき、CAEによる燃焼解析がブレークスルーを起こした。火炎伝搬の様子を確認するのは簡単ではない。シミュレーションによる解析で、伝搬速度が遅い部分があること、そこが周辺の燃焼によって圧縮着火していたことを突き止めたのだ。

MBDによる異常燃焼問題をブレークスルーした例

この発見は若手のCAEエンジニアによるものだった。MBDでは見えない現象も疑似観測することが可能で、無数の条件の組み合わせも数時間、数日という単位で検証できる。


《中尾真二》

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