ロールスロイス初のEV、厳格なテストプログラムが8割完了…年内の納車開始に向けて

「マジック・カーペット・ライド」をEVに適合させる

数値化が不可能な場合は熟練エンジニアの判断と直感を反映

自動動開閉式ドアの開閉音を最適化するために閉まる速度を細かく調整

ロールスロイス・スペクター
ロールスロイス・スペクター全 10 枚

ロールスロイスモーターカーズは2月8日、ブランド初のEVとなる大型クーペ『スペクター』(Rolls-Royce Spectre)の年内の納車開始に向けて、厳格なテストプログラムの8割が完了した、と発表した。

◆「マジック・カーペット・ライド」をEVに適合させる

現在、南アフリカの北ケープ州オーグラビーズと、ぶどう畑の広がる「フレンチ・コーナー」と呼ばれる西ケープ州フランシュフックの2拠点において、極度に暑い気候のもとでテストが行われている。ここでは、安定した対照的な気候条件により、世界屈指の夏のドライビングテストが可能に。最高気温は50度を超えることがあり、南部では砂利、塵埃、泥の多い曲がりくねった田舎道が多く、路面や地形が変化に富んでいることもあり、条件としては最適な環境という。

この段階では、200万km近い連続テストの間に開発されたあらゆるシステム、ハードウェアアイテム、ソフトウェアプロトコルをエンジニアが検証し、改良を加えていく。こうした丹念な作業を通じて、エンジニアは、ブランドの代名詞の快適な乗り心地「マジック・カーペット・ライド」をEVにうまく適合させることが可能になるという。

スペクターのテストを通じて、2万5000件におよぶ性能関連機能が入念に調整された。現在行われている改良は、「わずかな改善の積み重ね」の原則に沿って行われている。ブランドの118年の歴史において試行された中で、最も厳しいテストプログラムの第3段階を終了し、現時点ですでに約200万kmを走破している。

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◆数値化が不可能な場合は熟練エンジニアの判断と直感を反映

開発においては、長い経験を積んだエンジニアの判断と直感が反映されている。数値化が不可能な場合、たとえば、回生ブレーキに関しては、楽なフィーリングでありながら、しっかりとブレーキが効くよう、チューニングに1500時間以上が費やされている。制動力に伴って生じるセンサー入力をデータロガーで処理することで、どのような走行状況でも静粛性が損われないように調整していく。

同様に、アンチロールスタビライゼーションも、マジック・カーペット・ライドのクオリティを実現できるように、調整が進められている。南アフリカでは、高温によってゴム製サスペンション部品の硬度が変化するため、このテストはとくに重要という。

外光条件に関係なく車内での調和感を保つには、すべてのインテリア照明を調整する必要がある。そのためには、世界各地の太陽の当たり方や種類を詳細に分析する必要があり、スペクターが世界のどこを走っても一貫した内装色の品質を確保できるようにしている。

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◆ドアの開閉音を最適化するため閉まる速度を調整

テストプログラムの後半にさしかかる頃には、空力音響性能を実現するために、シーリング材のさらなる調整を実施する予定だ。ゴム製シーリング材は温度分布によって異なる性能を示すため、このプロセスは欠かせないという。たとえば、スウェーデンのアリエプローグで行われたスペクターのテストでは、氷点下の気温でシーリング材の硬化が認められた。逆に南アフリカでは、高温条件下で軟化したシーリング材の音響性能を、エンジニアが評価する予定だ。こうして、どのような極端な気候でも車内が遮音されるような最適なバランスを見出すことが課題になる。また、自動動開閉式コーチドアが閉まるときは、不快ではない最適なレベルの音が出るよう、閉まる速度を細かく調整している。

南アフリカでのテストと収集されたデータを十分に分析し、関連する作動と対策を盛り込めば、スペクターのテストプログラムは約80%完了したことになり、最終承認段階に入る。この段階では、北極のような厳寒のアリエプローグと、温暖なコート・ダジュールとを往復するオールシーズンのテストプログラムが実施される。

スペクターの最後の50万kmのテストでは、ライフスタイル分析に焦点が絞られる。この独自のテストプロセスでは、ロールスロイスの顧客の使用ケースを想定して、スペクターがテストされる。そして、世界の大都市の中心部でも、新興都市、歴史ある高級観光地でも、またオーナーのニーズ、習慣、ライフスタイルに見合ったその他の条件下でも、求められる性能を発揮できることが確認される、としている。

《森脇稔》

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