2050年カーボンニュートラル達成の要はゼロエミ電源とEVシフト…CHAdeMO協議会・TEPCO

再エネ・EVがなければ成立しないグリーン電力

国内充電インフラ整備は第2段階

安全性と互換性を土台としたインフラ整備3本柱

V2Xとクラウドによる電力安定供給と災害支援

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現在、2050年までの世界の平均気温の上昇を産業革命前との比較で1.5度に抑えることが必要とされている。達成できなければ気候変動等により現在のような経済活動が維持できなくなる。方法論やスケジュールに違いはあるが、これは世界的な合意事項だ。マイルストーンとして2030年までにCO2の排出量を7.6%減らす必要がある。また、世界のCO2排出量のうち24%が交通・運輸等の内燃機関車両によるものとされている。

昨年開催された「“くるまからモビリティへ”の技術展」においてCHAdeMO(チャデモ)協議会 技術部会長 兼 東京電力ホールディングス 経営技術戦略研究所 事業開発推進室 副室長 今津知也氏による国内外のV2X関連の取り組みに関する講演が行われた。CHAdeMO協議会が考える充電インフラ戦略と、TEPCOが考えるカーボンニュートラルのポリシーと施策を知る上でのポイントが語られた。

再エネ・EVがなければ成立しないグリーン電力

前述した脱炭素やカーボンニュートラルへの課題に対するTEPCOのスタンスは、発電電源のカーボンニュートラル化(グリーン電力)と自動車の電化の推進だ。そしてグリーン電力につきものである自然エネルギーの安定活用にはV2G、V2L、V2HのようなV2X技術も欠かせない。発電と自動車、双方のゼロエミッション化が前提となる。

バッテリーや太陽光発電はトータルでのCO2削減にならないという意見があるが、電力事業者の供給サイド、需要サイドの施策ごとにCO2削減量とその削減にかかるコストを分析すると、事業や工場の電化、車両の電化、太陽光や風力発電、バッテリーの活用が高いパフォーマンスとなる。車両に合成燃料などを使えばCO2削減量は期待できるものの、コスト面で選択肢にはなりにくい。化石燃料を水素や合成燃料に切り替えるとしても、事業面では電化を推進し再エネ活用によるコストダウンがなければ実現できない。

言い方を変えれば、再エネやEVを普及させなければ水素や合成燃料の事業は成立しないともいえる。EV含む蓄電池が重要なのは、これらが再エネ供給の調整力に有効なリソースだからだ。

EVバッテリーを家庭用蓄電池に(「V2HG実証のグローバルトレンドと日本における取りくみ」講演資料より)

国内充電インフラ整備は第2段階

再エネ活用や合成燃料は供給サイドの施策であり、TEPCOを始め電力会社が積極的に推し進めている分野だ。大規模なエネルギーストレージを除くと、EV、家庭用蓄電池、事業用蓄電池、BEMSなどは需要サイドの問題となる。TEPCOとしても積極的に電化を支援していくところではあるが、EVに関してはCHAdeMO協議会がその一翼を担う。

CHAdeMO協議会には現在、世界50か国、500以上の企業・団体が所属している。EV充放電に関する規格団体では世界最大の規模を誇る。電力会社のバックアップもありV2Hなど車両からの放電(電力の外部供給)機能を規格化している点も特徴のひとつだ。2014年には世界初となる公共充電事業者(当時のNCS。現eMP)も立ち上げた。

協議会によると国内充電インフラの整備事業が現在第2段階にあるという。第1段階はNCS(充電事業者)を立ち上げ、充電器の面展開を行うこと。日本にはすでに約8000か所の充電ポイントがあり、全土への面展開はひとつの区切りがついた状態だ。現在は第2段階として、充電器の高出力化、スポットのデュアルガン化などフレキシビリティの向上に切り替えている。高出力化については90kW機の設置・リプレースを進めている。マルチポートの充電スポットも増やしつつある。

安全性と互換性を土台としたインフラ整備3本柱

充電インフラ整備では、まず安全性と互換性を大前提として考えている。安全性対策では熱対策、感電防止策、機械的な堅牢性を重視している。海外充電器で見かける機器トラブルやプラグの破損などにも気を使っているという。国産EVのバッテリー事故とともに、CHAdeMO充電器は10年以上重大事故を起こしていない。


《中尾真二》

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