テスラ蓄電池とVPP戦略、実証実験よりもビジネスで実利を

テスラのマスタープラン3にみるエネルギー戦略

マスタープランを支える製品群

テスラのVPPは車両バッテリーを含まず

2017年から世界で電両事業を展開しているテスラ

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第13回 国際スマートグリッドEXPO 春で「テスラエナジープロダクツとテスラ蓄電池によるVPP」と題するセミナーが開催された。講演者はテスラモーターズジャパン エナジープロダクツ インサイドセールス&マーケットデベロップメントマネージャーの夏目利沙氏。

テスラは独自の広報戦略を持っており、オープンカンファレンスやメディアの前に出てくることは異例だ。今回のセミナーもイベント本体への出展はなく、セミナーのみの参加という形をとっている。内容は、2023年3月に開催された「Invester Day」でのエネルギー戦略関連の発表を受けたもの。テスラが日本を含む世界で展開しているエネルギー関連ソリューションの説明がメインだった。

しかし、だからといって投資家向けのアピールではなく(それはInvester Dayおよび同社のホームページが担っている)、電力事業者のビジネスを強く意識していた。

テスラのマスタープラン3にみるエネルギー戦略

夏目氏は「テスラには持続可能なエネルギーへ世界の移行を加速するというミッションがある」とする。その上でこれを実現するための「マスタープラン」があるという。マスタープランは2まで発表されており、3月のInvester Dayで「マスタープラン3」が発表された。ここで掲げられたのは「Sustinable energy for all of Earth」というものだ。

マスタープラン1(2006年)では、「スポーツカーを製造する。その売り上げでより手ごろな車を製造する。さらにその売り上げでより手ごろな車を製造する」という目標が掲げられた。これは、テスラの『モデルS』(あるいはテスラロードスター)、『モデルX』『モデル3』によって達成されている。マスタープラン2(2016年)では「太陽光発電システムと蓄電池を提供する。EVのラインナップと生産ラインを拡張する。完全自動運転とロボタクシーの実現」が掲げられた。プラン2の完全自動運転とロボタクシーは未達だが、他の2つは、各地でのソーラー発電所やメガパックによる定置型蓄電施設、そして『モデルY』『セミ』(大型トラック)、『サイバートラック』、上海・ベルリン・オースティンのギガファクトリーで実現している。

マスタープラン2までは、事業の土台をつくるために必要な製品(プロダクトアウト)が目標の中核を占めていたため、Invester Dayの発表、マスタープラン3ではプロダクツに関する発表がなく落胆した投資家も少なくないが、テスラがエネルギー市場へのコミットメントを明確にしてきたことは大きい。

余談だが、Invester Dayでは、テスラは既存の生産ラインのコスト削減表明した。イーロン・マスクは「我々にとって工場も製品(products)だ」と言っている。複数のギガファクトリーを稼働させたばかりなのに、そのラインや工程の改革を実行に移す。それも製造コストの半減まで言及している。これはEV市場がアーリーアダプターからアーリーマジョリティに移ろうとしていることを示唆する。つまりキャズム越えを果たした可能性がある。中国ではすでにEVの価格競争とメーカーの淘汰が始まっている。今回の発表に製品関連がないと過小評価すべきではない。

マスタープランを支える製品群

Sustinable Energy for all of Earthというコンセプトで設定された目標はかなり野心的だ。現在グローバルでは年間165PWh(P:ペタ=10の15乗)が1次エネルギーとして消費されている。このうち約80%が化石燃料由来だ。化石燃料は体積あたりのエネルギー密度は高いものの利用効率は30%と高くない。テスラは、これを再エネなど持続可能なエネルギーに代替し、エンドユースの効率化とあわせて年間82PWhまで削減できると見ている。


《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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