電動化するベントレーのデザインはどう変わるのか? ボルボから移籍するロビン・ページへの期待

電動化するベントレーのデザインはどう変わるのか。写真は2019年に発表されたコンセプト『EXP100GT』
電動化するベントレーのデザインはどう変わるのか。写真は2019年に発表されたコンセプト『EXP100GT』全 8 枚

5月23日、ベントレーはボルボから移籍のロビン・ページがデザインディレクターに就任すると発表した。9月1日付けで着任する。これでベントレーのデザイン体制が落ち着くことを期待したい。というのも…。

◆引き金はシュールマンの電撃移籍

ロビン・ページは今年3月までボルボ・デザインのグローバル責任者を務めていた。後任のジェレミー・オファーはコンサルタント会社などでデザインやビジネス開発を長く手掛け、自動車業界では英国のEVスタートアップのデザインを6年ほど率いた経験しかない。異例の抜擢人事だった。それだけにオファーが5月1日付けで就任した後も、ページがシニアアドバイザーとして残ることになっていたのだが…。

事の発端はトビアス・シュールマンである。4月25日、マクラーレンは彼をチーフデザインオフィサーに起用すると発表した。現職はベントレーのデザインディレクター。2021年にマクラーレンからベントレーに移籍してエクステリアデザイン責任者を務め、今年1月にデザインディレクターに昇格したばかりだった。まさに電撃移籍。マクラーレンには9月1日付けの就任となる。

シュールマンはVWで12年近くエクステリアデザイナーとして活躍し、ブガッティやアストンマーティンを経て、2020年から1年間、マクラーレンでスペシャルプロジェクトのチーフデザイナーを務めた。2022年に発表された『ソーラスGT』は彼のデザインだ。

◆空席を埋める連鎖

マクラーレンでは2022年にロバート・メルヴィルが退職して以降、デザイン・トップが空席になっていた。メルヴィルは2009年にマクラーレンに入社して順調に階段を上り、2017年にデザインディレクターに昇進。しかしサウジアラビアのEVスタートアップに転職してしまった。

空席を埋めたいマクラーレンにとって、プレミアムスポーツカーの経験が豊かで自社をよく知るシュールマンは格好の人材だったに違いない。そしてこの電撃移籍で今度はベントレーのデザインディレクターが空席となり、そこにボルボのページが就く。期せずしてシュールマンと同様、ページも古巣へのカムバックだ。

ロビン・ページはロールスロイスの「ビスポーク」担当デザイナーとしてキャリアを始めた。顧客の要望を聞きながら特注車のデザインを仕上げていく仕事だ。そこで高級車の神髄を学んだ彼はベントレーに移り、2001年からインテリアデザインを統括。2013年にボルボに移籍してインテリア責任者を務め、2017年からはデザイン全体を統括していた。現行ボルボの内装質感の高さは、彼の存在を抜きには語れないものだ。

◆想定外からの白羽の矢

なぜか近年のベントレーのデザイン・ディレクターは長続きしなかった。2015年からその立場を務めたのはアウディから移籍したシュテファン・ジーラフだが、彼が2021年に中国ジーリー・ホールディングに移籍すると、後任に就いたのはアウディでジーラフの後輩だったアンドレアス・ミント。しかしそのミントは在籍2年でVWブランドのデザインディレクターに異動した。ミントの後任がトビアス・シュールマンだ。


《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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