スバル『BRZ』改良新型はMTモデルにもアイサイトを搭載、この秋発表予定

この秋発表予定の『SUBARU BRZ』改良モデルに、マニュアルトランスミッション向けアイサイトが初採用される。
この秋発表予定の『SUBARU BRZ』改良モデルに、マニュアルトランスミッション向けアイサイトが初採用される。全 11 枚

SUBARUは6月19日、『SUBARUの事故低減に向けた取り組み(予防安全技術のさらなる普及に向けて)』と題したテックツアーを開催した。SUBARUが取り組んでいる『2030年死亡交通事故0』を実現するべく研究開発を進めている事故低減に向けての取り組みについてや、MT車向けアイサイトの機能説明が行われた。

まずSUBARU 商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャーの小林正明氏が登壇、以前行われたテックツアーの内容が紹介された。

昨年8月のテックツアーでは、AIを中心とする新たな技術とアイサイトを融合させた研究開発についてなど、予防安全の取り組みを紹介。昨年11月は、2030年に死亡・交通事故0を実現するための取り組み、そして新型クロストレックに関する衝突・安全対策を紹介。今年の2月には、SUBARU研究実験センターを舞台に、2030年に死亡・交通事故0を実現するための走行安全に関する取り組みや、SUBARU独自のエンジニア育成に関する取り組みについて紹介した。

◆航空機メーカーのDNAである安全へのこだわり

そもそも安全を追求するSUBARUのクルマづくりの原点は、航空機メーカーのDNAにある。ちょっとした設計のミスや組み立てのミスが大事故につながってしまう航空機作りでは、操る人がそもそもミスを起こしにくく、万が一問題が起きたときでもまず人を守るといった、人を中心とした設計を行ってきた。

50年以上前に発売した『スバル360』の時代から、人を中心とした安全技術を独自に磨き続け、SUBARUの総合安全は0次安全、走行安全、予防安全、衝突安全、そして最近ではインフラ協調も含めた『つながる安全』も加えて、安全を追求している。

これらの研究開発を続けることで、販売100万台当たりの死亡重傷事故数やSUBARU車が関連する死亡交通事故数は減少しており、米国での死亡事故数、日本国内の死亡重傷事故数は、メーカー平均に対して低い値で推移している。そしてさらなる事故低減に向け、車種や国を問わず出来ることから安全技術を随時投入していくことが重要だと考えている、と語った小林氏は、マニュアルトランスミッション向けに新たにアイサイトを投入することを発表した。

小林氏は、安心・安全と操作する楽しさも両立できていると明言した。アイサイトをマニュアル車にも設定することで、着実に2030年死亡交通事故0を実現に近付いていくと考えており、マニュアルトランスミッション向けアイサイトを初採用する車種は、この秋発表予定の『SUBARU BRZ』改良モデルとなる。

SUBARUの総合安全思想の住み分け。SUBARUの総合安全思想の住み分け。
アイサイト搭載車の事故発生率は非搭載車より大きく下がっている。アイサイト搭載車の事故発生率は非搭載車より大きく下がっている。

映像を交えながら新型BRZの紹介した小林氏は、「SUBARUのお客様だけでなく、広い世の中の安全を守るために、さらに多くの事故シーンを想定し、対策を施していく必要があると考えている。総合安全思想にのっとり、さまざまな角度からお客さまを守るシーンを想定し、その対策を検討し続けることがSUBARUの使命だ」と語った。

◆MTモデルにも十分な先進安全機能を提供する必要がある

今回発表されたマニュアルトランスミッションモデル向けのアイサイトは、予防安全のカテゴリーであり、万が一の事故を未然に防止するそのための重要な技術となる。

BRZはSUBARUを代表するスポーツモデルで、スポーツモデルにこそ安全性能が必要であると小林氏は力説した。BRZはMTモデルの購入者が多いが、MTモデルを求める人にも十分な先進安全機能を提供する必要があると考え、アイサイトの開発が続けられていた。

そもそもアイサイトは、走行車や歩行者にぶつからないを実現するプリクラッシュブレーキの機能と、疲れないを実現する追従機能付きクルーズコントロールの機能がセットになった技術。これらの、ぶつからない、疲れないという安心価値をMTモデルでも変わらずに提供することが一番大事なことだが、従来の制御をそのまま使えばよいというわけではない。MTモデルならではのシチュエーションを踏まえた適合を施すことで、リアルワールドで違和感なく使えるというところにこだわり、開発を進めてきた。そのため、従来のATモデルが備えているアイサイトの基本的な機能(一部機能を除いて)は、MTモデルでも搭載されているが、MTモデルならではの使用条件や動作が一部異なる部分があるとのこと。

MTモデル向けアイサイトの機能。MTモデル向けアイサイトの機能。

◆MTモデルならではのチューニングが施されたアイサイトを搭載

それぞれの機能については、ADAS開発部の寺田拓郎氏が解説した。最新のアイサイトの特徴は、カラーのステレオカメラが対象物を立体的に捉えることで、先行車両のブレーキランプや歩行者自転車も認識する。

アイサイトのシステムが衝突の恐れがあると判断すると、ドライバーに対する警告を発し、必要に応じてブレーキ制御を行う。MTモデルのプリクラッシュブレーキ機能は、現行BRZのATモデルから変更はない。つまりMTモデルであっても、クラッチの状態やシフトポジションに関わらず作動し、ブレーキ動作中にエンジンがストールしても車両が停止するまでしっかりとブレーキ制御が継続される。

例えば、意図せず先行車両に迫ったときや、クラッチを踏んだまま、あるいはシフトポジションをニュートラルにしたまま走行しているとき、追従機能付クルーズコントロールで追従走行中、あるいは追従制御がキャンセルされたときなども、プリクラッシュブレーキの対象となる。プリクラッシュブレーキの作動速度は、通常時は1km/h以上、ギヤがニュートラルのときやクラッチが繋がっていないときは、8km/h以上から全車速域まで対応する。

MTモデルではプリクラッシュブレーキが作動すると、ギヤやクラッチの状態によってはブレーキ制御中にエンジンが停止する場合があるが、このような時でも減速度の抜け感がない、安定したブレーキを作動させ、車両が完全に停止するまでブレーキ制御をしっかりと継続する。そしてプリクラッシュブレーキなどで緊急停止した後、ブレーキは徐々に解除される。このため、エンジンが停止した後にそのまま車両を停車させる場合は、ドライバー自らのブレーキ操作が必要となる。

また、ドライバー自らが意図してプリクラッシュブレーキをオフに設定していたとしても、エンジンが停止し、再度エンジンを始動したときはプリクラッシュブレーキが必ずオンになるようだ。スポーツ走行で意図的にオフしているときに、エンジンがストールしてしまった場合は改めて再設定が必要となるので注意が必要だ。

ATモデルに採用されている、後退時のブレーキアシストRMBはMTモデルでは採用していない。万が一、後退しながら緊急脱出する必要があるとき、ブレーキアシストの機能をとっさに解除することが難しく、ドライバーにとって危険な状況となる可能性があるため、不採用となった。ただし、後退時ブレーキアシストに組み込まれていた、ソナー警報の機能はクリアランスソナーとして継続して搭載している。またMTモデルの場合は発進にクラッチ操作が必要なことから誤後進抑制制御、誤発進抑制制御についても不採用となっている。

アイサイトのカメラ部分。アイサイトのカメラ部分。プリクラッシュブレーキの搭載により、安全性は格段に上昇する。プリクラッシュブレーキの搭載により、安全性は格段に上昇する。クリアランスソナーは従来通り作動する。クリアランスソナーは従来通り作動する。

◆2.4リッターエンジンの太いトルクだからできた機能もある

次にADAS開発部の上田新氏が、アイサイトの「疲れない」を実現する追従機能付きクルーズコントロールについて紹介された。

追従機能付きクルーズコントロールのセット方法はATモデルと変わらないが、シフトが2速から6速のいずれかで、かつ車速が30km/h以上のときにセットできる。もちろんクルーズコントロール中はクラッチやシフトを自由に操作することができる。

クルーズコントロールがキャンセルされる条件については、25km/hより速度が下がったときは追従制御がキャンセルされ、ドライバー自らがブレーキ操作を行う必要がある。また、クラッチを踏み続けたり、ニュートラルギヤで走行を続けるなど、追従走行する意図がないと判断される操作についても、クルーズコントロールの制御はキャンセルされる。

クルーズコントロールは、巡航中に速度が下がった場合でも、25km/hまでは制御を継続する。この時速設定は、6速ギアでもエンジンをストールさせない速度として設定しているとのこと。加えて、クラッチを踏んでいる時間が5秒以内であれば、追従機能が継続し、ドライバーが余裕をもって自由にシフトチェンジできるようになっている。また、クラッチペダルを踏んでいる間は、一時的に加速を止め、エンジン回転の吹き上がりを防止するが、再度クラッチを繋ぐと即座に加速を再開し、違和感なく走行を継続できるようにもしている。

上田氏によると、「2.4リッターエンジンの豊かなトルクの効果と合わせて、クルーズ中に変速操作を行っても遅れなくしっかりと先行車に追従できる制御とした。」とのこと。

車間距離については、MTモデルでは走行速度が低下し、追従機能付クルーズコントロールがキャンセルされた時は、ドライバーは自らが操作を引き継ぐ必要がある。このような時に備えて、低速時は車間距離を従来より少しだけ長めに設定し、ドライバーが余裕を持って安心した操作ができるようになっている。

自動追従中でも自然とシフト操作ができるようにチューニングされている。自動追従中でも自然とシフト操作ができるようにチューニングされている。

発表会の最後にプロジェクトゼネラルマネージャーの小林氏は、「長時間の操作に負担があるMTモデルこそ、プリクラッシュブレーキや追従機能付きクルーズコントロールの効果が高いとも言える。いずれもただ機能が搭載されているだけでなく、リアルワールドでも違和感なくその効果を発揮できるようしっかりと開発を続けてきた。これまでMTモデルに不安をお持ちであったお客様にはとくに安心していただける装備となっている」と締めくくり、完成度に自信を覗かせていた。

《関口敬文》

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