【ハーレー X350/X500 試乗】話題沸騰、普二免で乗れる初のハーレーに個性はあるか?…佐川健太郎

ハーレーダビッドソン X350(右)とX500(左)
ハーレーダビッドソン X350(右)とX500(左)全 32 枚

今2輪業界で最もホットな話題といえば、ハーレーダビッドソンが新たに開発した「Xシリーズ」だろう。普通二輪免許で乗れるハーレー初のモデルとして登場したトラッカースタイルの『X350』と、アメリカンロードスターを掲げる『X500』(こちらは大型二輪免許が必要)である。

ともにリラックスしたライポジとコンパクトな車体、スポーティな走りを楽しめる都市型コミューターという位置づけだ。さっそく国内試乗会で初乗りしてみた。

◆コンパクトな車体で吹け上がりが気持ち良いX350

ハーレーダビッドソン X350ハーレーダビッドソン X350

まずは「X350」から。往年の名車XR750をイメージしたフラットトラッカー風デザインが印象的だが、立ち位置としては前後17インチホイールにオンロードタイヤを履いたネイキッドモデルである。ライポジは見た目どおりのコンパクトさで、自分の体格(179cm/73kg)では余裕で両足が着くし、ハンドルはグリップ部分が手前に引かれて楽に手が届く。ステップ位置が個人的にはやや後ろ寄りと感じたが、細かい部分は体格と好みによると思う。

エンジンは水冷並列2気筒DOHC4バルブ排気量353ccから最高出力は36ps/8500rpmを発揮。ショートストロークを生かしてその気になれば10,000rpm過ぎまで吹け上がる高回転型だ。それでいてスロットルへの反応は穏やかで扱いやすく、低中速トルクも十分あるのでストップ&ゴーも苦にならない。360度クランクの規則正しい鼓動は3気筒か4気筒のような滑らかさで排気音もそれに近い感じがする。これは意外だった。

ハーレーダビッドソン X350ハーレーダビッドソン X350

走りは軽快だが同時にスチール製トラスフレームらしい“しっとり感”もあって心地よい。足まわりもなかなかの豪華ぶりだ。φ41mm倒立フォーク&モノショック(前後に伸び側ダンパー調整、リアはプリロード調整も付く)にフロントダブルディスクなど、クラスを考えたらやりすぎ感もあるが、実際はサスペンションもよく動くしブレーキも適度な効き具合でバランスは悪くないと思う。ハンドル切れ角も十分あるし車体もコンパクトなので小回りも得意だ。車重195kgはクラスとしてはやや重めだが、低いシートとスリムな車体は女性でも十分に乗りこなせるサイズ感と思う。

◆X500は、シルエットもエンジンも「ハーレーらしい」

ハーレーダビッドソン X500ハーレーダビッドソン X500

一方の「X500」は全体的に丸みを帯びたシルエットが特徴で、ティアドロップ型タンクやスポーツスターを思わせるリアフェンダーを採用するなど、よりハーレーらしいスタイルが強調されている。倒立フォークもφ50mmと太く、ディスクブレーキも大径サイズとするなど装備面でのグレードも高い。

エンジンは「X350」同様の水冷並列2気筒ではあるが、こちらは排気量500ccで最高出力も47ps/8500rpmと強力。しかもボア・ストローク比がほぼ同じスクエアタイプということで、低中速トルク型の特性になっているポイントだ。実際に乗ってみると加速も一段と強力で、スロットルのレスポンスもより俊敏。アクセルを開けると拳の効いた迫力のある排気音とともに弾けるように飛び出していく。同じ360度クランクなのにこちらは単気筒的な鼓動感もあるなど両者の違いが面白い。単に排気量を上げただけのガワ違いではなく、エンジンそのものをしっかり作り分けてキャラクターの違いを明確にしているところはさすがハーレーだ。

ハーレーダビッドソン X500ハーレーダビッドソン X500

車体もひと回り大きく車重も208kgと13kg増だが、走り出せば軽快そのもので切り返しなどはむしろクイックなほど。理由としては、ひとつはエンジン自体のレスポンスが良く右手ひとつでトルクが取り出せることが大きい。スロットルのオン・オフで車体の姿勢変化を作りやすいのだ。ライポジも関係している。シート高が820mmとやや高めの設定で体重移動の効果を出しやすく、ハンドルも位置も高くワイドなのでテコの原理で倒し込みやすい。パワーと車格も含めて、より大型バイクらしさとそれを操る楽しさを味わえるのが「X500」だ。2台とも良い意味で見た目と異なる乗り味がユニークで興味深かった。

ちなみに「X350」も含め、6速ミッションでブレーキはABS装備、灯火類もフルLEDタイプを採用するなど充実。標準装備のマキシス製タイヤ(サイズも共通のフロント120/17 、リア160/60)も接地感があってコーナーでは安心してバイクを傾けることができた。従来のハーレーとは見た目も乗り味も異なるが、そこに新たな挑戦をしていくハーレーの本気も見えてきた。ぜひ一度試乗してみてほしいと思う。

ハーレーダビッドソン X350(左)とX500(右)ハーレーダビッドソン X350(左)とX500(右)

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

《佐川健太郎》

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。メーカーやディーラーのアドバイザーも務める。(株)モト・マニアックス代表。「Yahoo!ニュース個人」オーサー。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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