「マリンもマルチパスウエイで」ヤマハ発動機、カーボンニュートラル達成へ「水素エンジン」投入へ

ヤマハ発動機 丸山平二 取締役常務執行役員
ヤマハ発動機 丸山平二 取締役常務執行役員全 10 枚

ヤマハ発動機は12月7日に都内で開いたマリン技術説明会で、マリン事業のカーボンニュートラルは二輪と同様にマルチパスウエイで対応する方針を示した。そのひとつとなる水素エンジン船外機を2024年2月に米国マイアミボートショーで公開することも明らかにした。

◆電動化だけでカーボンニュートラルの達成は困難

ヤマハ発動機の丸山平二取締役常務執行役員は「水上を走るボートは常に大きな水の抵抗を受けており、陸上を走るクルマの約10倍のエネルギーが必要となる。現在のバッテリー技術ではガソリンなどと比べてエネルギー密度が低く、結果的に一度の充電で航行可能な距離は短くなる。これらの課題から、特にマリン製品ついては現在のバッテリーによる電動化技術だけではカーボンニュートラルを達成するのは困難でマルチパスウエイで解決する必要がある」と指摘。

さらに「マリン分野におけるカーボンニュートラル達成は大変難易度が高く、従来から取り組んでいる4ストローク化による燃費の向上に加えて、電動化やカーボンニュートラル燃料の活用、海上航行時の効率向上など様々な取り組みが重要になる」とも強調した。

ヤマハ発動機の水素船外機 開発試作機ヤマハ発動機の水素船外機 開発試作機

マリン事業のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みはすでに始まっており、このうちカーボンニュートラル燃料に関して丸山常務は「既にバイオ燃料を使って走行する二輪車の市販化は一部の地域で進んでいる。バイオ燃料は従来のエンジンの燃料に穀物や廃棄物から生成されるエタノールを使用する。化石燃料を使わない分、エコサイクルトータルでのCO2削減が可能となる。すでに2023年2月に開催された米国マイアミボートショーでデモンストレーションを行い、実用に向けた準備を進めている」と説明。

一方、水素エンジン船外機では「内燃機関の燃料を水素に置き換えたもので、これまで培ってきた内燃機関技術の応用が可能。理論上は燃焼時にCO2を排出しないため、化石燃料を使った従来のエンジンよりも環境への負荷を少なくできる。水素エンジンを使った船外機について海外拠点と連携した開発を加速しており、2024年2月に米国で行われるマイアミボートショーへの出展を予定している」と明かした。

◆60年培ってきた総合マリンメーカーとしての知見

その他の取り組みとしては「航行時にクルマの約10倍のエネルギーが必要となる課題に対しては、より抵抗を減らし推進効率を向上させるアプローチとして艇体への水の抵抗を下げる水中翼や、ボートや船外機の水の流れの解析、それらを踏まえたより効率的な(船外機の)プロペラなど日々開発を進めている」とのことだ。

マルチパスウエイのひとつとなる電動船外機がカバーする領域、用途に関しては「例えば川や港で運航する観光船のように、短距離でしかもかならず同じ場所に帰ってくる使い道では電動の置き換えが非常に向いていると考えている」とし、「電動船外機は20―30馬力以下のものを考えている。一方、外洋に出ていく300馬力から450馬力の領域では高出力と航続距離が必要になるため、かさばりはするが水素タンクを積んだり、エネルギー密度の高い合成の液体燃料やバイオ燃料を使うことになる」と解説。

ヤマハ発動機 電動推進ユニットヤマハ発動機 電動推進ユニット

一方で「我々の規模の会社でマルチパスウエイすべての選択肢を開発するのは大きな課題」とも指摘し、「この点については外部の会社や大学との協業、いろんな産業を超えた協業も含めて取り組んでいて、社内においてもいろいろな商材の基本的なカーボンニュートラル技術は一括して開発を進めている」と述べた。

「カーボンニュートラル達成に向けたマリンの取り組みは多くの事業を展開するヤマハとしての知見と、これまで60年を超えて培ってきた総合マリンメーカーとしての知見を活かしたヤマハらしいカーボンニュートラルの取り組みとなる」と丸山常務は話していた。

ヤマハ発動機は2035年までに自社が排出するCO2をゼロに、また2050年までには製品使用時や原材料調達などを含むすべての領域でのCO2排出ゼロを目標に掲げている。

《小松哲也》

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