自動車ディーラー群馬日産のサブスク洗車「EASY WASH」は右肩上がり

群馬日産自動車が独自に取り組むサブスク洗車「EASY WASH」は右肩上がり
群馬日産自動車が独自に取り組むサブスク洗車「EASY WASH」は右肩上がり全 4 枚

東京ビッグサイトで開催された「第21回 国際オートアフターマーケットEXPO 2024(IAAE2024)」会期最終日の3月7日に『自動車ディーラー独自の“サブスクリプション洗車”タッチポイント戦略~利用実績2,300台超え、洗車サブスクで顧客を引きつける~』と題されたセミナーに、GNホールディングスグループの群馬日産自動車株式会社サービス部の鶴渕一幸課長が登壇。独自に立ち上げたサブスクリプション洗車「EASY WASH」の狙いや需要状況、今後の展望などが語られた。

約900名が在籍するGNホールディングスグループ

群馬日産自動車はGNホールディングスのグループ企業で、GNグループは6社(GNホールディングス株式会社、群馬日産自動車株式会社、日産プリンス群馬販売株式会社、GNロジパートナーズ株式会社、日産部品群馬販売株式会社、株式会社Mino-lio)で構成され約900名が在籍。群馬県内で日産、ルノー、アウディ、UDトラックス、三菱ロジスネクスト(フォークリフト)の販売・整備のほか、日産純正部品の販売も行う。なお株式会社Mino-lioではGNグループ内の廃オイルを再生重油に転換し、いちごを栽培する画期的な農園事業(ぐるりいちご農園)に取り組んでいる。

GNホールディングスグループは6社で構成

群馬県全域に日産ディーラー18店舗

セミナーに登壇した鶴渕課長が在籍する群馬日産自動車は、群馬県全域に日産ディーラー18店舗(指定整備工場あり)、中古車販売1店舗、ルノーディーラー1店舗の計20拠点のほか、品質保証センター(教育・新車納整・鈑金工場・難整備を行う技術課あり)もある。

鶴渕課長の経歴も紹介したい。日産栃木自動車大学校を卒業して1996年に群馬日産自動車に入社。これまで同社3店舗の整備工場に勤務し、一級整備士資格をもち日産自動車の整備士制度「日産マスターテクニシャン」の称号も取得して、R35GT-R担当のスーパーメカニック兼工場長の経験もある。2012年から群馬日産自動車労働組合執行委員長を4年間務め、2019年からサービス部事業推進グループの課長となった。

GNホールディングスグループ 群馬日産自動車株式会社 サービス部 鶴渕一幸課長

前橋市内は「洗車ビジネス」が活性化

鶴渕課長は、洗車ビジネスを深堀りするキッカケについて、群馬日産自動車の天野慎太郎社長の一声からはじまったことを紹介。3年前の2021年6月、天野社長が前橋市内で洗車待ち車両が列をなす1台500円のドライブスルー型クイック洗車サービスに興味をもち、鶴渕課長に声をかけて実際に利用。数分で洗車が行なわれ、最後はスタッフが拭き上げる。洗車や拭き上げ時間の短さを体験して、価格と価値に妥当性を感じたという。

この体験で鶴渕課長は、前橋市内の洗車ニーズの高さを実感し、自社環境も含めて洗車ビジネスの深堀りをはじめた。自社ディーラー18店舗では洗車機を完備。洗車機メーカーのアフターフォローのもと洗車機トラブルを早期解決できる体制があるため、18店舗で使える洗車チケット回数券6枚セットを税込5,000円(1回あたり約833円/有効期間1年/家族友人の利用可能)で2016年から販売していた。月平均250~300枚の販売実績で、利用は月平均1,500~2,000台あり、サブスク洗車に取り組む下地は整っていた。

鶴渕課長は、地元の洗車ビジネス市場の盛り上がりや競合他社などをリサーチした上で、自動車ディーラーである群馬日産自動車が取り組むサブスク洗車に可能性を見出す。自社既存の洗車チケットを継続販売しながら、サブスク洗車のテスト運用を決定。また新規ビジネス立ち上げにあたり、GNグループは土壌を耕し種を植えて育てるシステムが確立され、社員がチャレンジする環境が整っていることも伝えた。

目的は「既存顧客の関係強化」

テスト運用開始にあたり、目標と目的を明確に設定。鶴渕課長は「目標は群馬県の人口減にともなう既存顧客の維持で、目的は既存顧客の関係強化です」と話し、関係強化に最適な方法は定期的なコミュニケーションであり、既存顧客が手間に思う洗車をきっかけにタッチポイントを増やす機会をサブスク洗車で作り出す戦略で、売上よりも既存顧客との関係強化にこだわった設計にしたという。

2021年8月~2022年2月までの7ヶ月間、特定店舗でのテスト運用結果は、サブスク洗車会員が右肩上がりで増加。ユーザーの傾向は40~60代が約70%で、車種は軽自動車・コンパクト・ワンボックス・SUVで偏りはなかったが、EVが12%だった点は日産ディーラーならでは。

群馬日産自動車が独自に取り組むサブスク洗車「EASY WASH」は右肩上がり

鶴渕課長はテスト運用店舗からの意見や改革事案も紹介した上で「サブスク洗車は確実に需要がある。すぐの購入(会員登録)には至らないが検討されやすく、サブスク洗車会員がインフルエンサーとなり、新規顧客を獲得してサブスク洗車会員になり新車販売にもつながりました」と伝えた。

2024年3月時点、サブスク洗車会員登録は2,440台

2022年4月から、自社ディーラー18店舗でサブスク洗車「EASY WASH」の提供開始し、2024年3月時点で会員登録は2,440台、月平均洗車台数は3,000~4,000台。基本的に、洗車機による洗車(水洗い、シャンプー、撥水コートから選択)のみで、車種は国産乗用車に限定。テスト運用期間中は、会員情報確認などで複数の工数が必要だったが、専用アプリの新規作成や顧客管理システムの改良により、短時間かつ効率的なオペレーションを実現している。

テスト運用を経て、2022年4月から、群馬日産自動車のディーラー18店舗でサブスク洗車「EASY WASH」提供開始

また2023年12月に、プラン追加と月額料金を改定。土日・祝日も利用可能なプレミアムプラン(スタンダード 1,800円 1台まで /ペア 2,500円 2台まで/ファミリー 3,100円 3台まで)と、平日限定プラン(スタンダード 1,600円 /ペア 2,300円/ファミリー 2,900円)があり、1日の最大洗車回数は1回。87%の会員がプレミアムプランを契約しており、平日限定プラン会員は13%とのこと。

鶴渕課長は、料金改定時の解約理由も紹介。値上がりによる解約が23%だったが、解約顧客のうち洗車チケット再購入が38%あり、サブスク洗車と洗車チケットの併売が、顧客のつなぎとめに結びついたと話した。

講演の最後に設けられた質疑応答の場面で鶴渕課長は「サブスク洗車会員の獲得が高い店舗は、車検の守備率が比較的高い傾向で、サブスク洗車を販売できていない店舗は守備率が低い結果が出ている」と発言。また、サブスク洗車をリース事業と連携する考えはあるかとの質問には「カーリース事業を展開する株式会社日産フィナンシャルサービスに相談している。EASY WASHはまだ完成されておらず、今後ブラッシュアップを行う」と回答していた。

群馬日産自動車の独自サブスク洗車は、既存顧客との関係強化や利益向上だけでなく、各店舗のサービス品質の差が浮き彫りになる点も興味深い。自動車ディーラーが商標登録を行って本格的に注力するサブスク洗車は他に類がないのではないだろうか。今回の講演は、これまで語られていなかった貴重な情報が具体的に伝えられ、多くの聴講者の関心を集めていた。

【IAAE2024】自動車ディーラー群馬日産の独自サブスク洗車「EASY WASH」は右肩上がり…さらなる進化に期待

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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