高性能なラグジュアリーSUVは、時間感覚をも優雅に操る…「レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550e」が内に秘めた美学とは

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レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550e
レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550e全 69 枚

僕がこのクルマの存在に心を動かされたのは、2024年にニュルブルクリンクでのレース活動を開始した頃だったか、たしかまだ厚手のダウンジャケットに身を包んでいても震えるような、そんな寒い冬のことだった。

圧倒的な存在感と躍動感、難攻不落のサーキットを力強く駆け抜けていく

レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550eレンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550e

とりわけ冷たく乾いた空気を震わせるように、アイフェル地方の遠くの丘から、地響きのような尋常ならざる走行音が響いてきていた。

やがてその音源は姿を表した。デザインが読み取られることを防ぐカモフラージュに化粧されていたが、それがレンジローバー スポーツの、それもプラグインハイブリッド(PHEV)モデル「P550e」であることは、そのただならぬ存在感から想像ができた。

レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550eレンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550e

その日のニュルブルクリンクは、自動車メーカーがマシン開発のための「インダストリアル・プール」で占有されていた。つまり、ジャガー・ランドローバーはこの日、フルサイズのレンジローバーを、世界一過酷とされるサーキットに解き放ち、走りを見極める過激な開発テストをしていたことになる。走り自慢の高性能車をニュルブルクリンクで鍛えることは珍しいことではない。ただ、対象が世界を代表するラグジュアリーSUVである。しかも環境性能が生命線であるプラグインハイブリッドだというのは珍しい。ジャガー・ランドローバーがこのクルマに、どれほど優れた走行性能を求めているのか。それだけですべてを理解した。

圧倒的なパワーと強靱な足腰で流れる様に難コースを走り抜けていく

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エッシュバッハからブルンヘンに至る滝のように降るセクションは、クルマにとってもっとも無防備である。前転しそうなほどの下り区間でタイトコーナーを掠めた直後、一気に上り区間になる。地を這うように低いスポーツカーでさえ苦しむその難所をレンジローバー スポーツは、圧倒的なパワーと強靭な足腰を武器に駆け抜けた。それは重量級ラガーマンがモールを敵陣まで強引に押し込むように力強く、それでいて俊敏なバックスが、軽やかなステップでタッチライン側を駆け抜けるように鮮やかだった。徹底的に鍛え上げられた鋼のような肉体と、鞭のようにしなる関節だから成せる妙技である。

車両重量2.7トンを超える巨体がまるで、巨岩が崖から転げ落ちるように下ってきたというのに、ラグジュアリーSUVが陥りがちな不自然なロール姿勢にはなっていない。これは大容量の重量級バッテリーを、フロアの低い位置に搭載しているからに違いない。

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電子制御サスペンションは優しく路面をトレースしてくれている。不自然なバウンジングはまったく確認できない。駆け抜けるその姿を眺めている僕に強烈なインパクトを残しながらも、ごく自然にその場を走り去るだけなのである。

ただし、速度は腰を抜かしかけるほどに速かった……。

内に秘めた獰猛さと相反する妖艶さを発揮するボディラインに視線が奪われる

EVモードでの航続距離は最大120km。急速充電であれば1時間で最大80%充電可能EVモードでの航続距離は最大120km。急速充電であれば1時間で最大80%充電可能

冬のニュルブルクリンクで目にしたあの鮮烈な衝撃は、いまでもまったく色褪せることなく記憶に刻まれている。

だが、こうして静かにガレージで給電を受けるレンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550eは、その衝撃が幻であったかのように獰猛な気配を殺していた。

ボディはハッとするほど妖艶で美しい。無駄な突起や隆起を躊躇することなく拒絶したフォルムは、それだけにむしろ力強い。

段差を徹底的に削ぎ落としている。空気抵抗係数削減のためのフラッシュサーフェスなのであろうが、そんなテクニカルなメリットを得るためにデザイナーが筆を振るったのではないと思わせる。レンジローバー最大の個性の源である塊感は力強く筋肉質だ。

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それでいて、フェンダーやバンパー周りは、柔らかく丸みを帯びてセクシーに隆起している。無粋を承知でいうならば、このラインを整形するには高度なプレス技術が不可欠であるし、その艶やかさを表現するには、巧みな塗装技術が求められる。とても手間が掛かっていることは明白なのだ。だがそのボディパネルが金属で成形されているとはとても思えない。人間の肌であるかのように温度を感じるのは不思議だった。

レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550eレンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550e

コクピットも同様で、造形はシンプルで徹底している。無垢な質感を阻害する物理スイッチは徹底的に排除されている。エクステリア同様に、子供じみた虚飾を排除することは素材が試されることと同意だ。それを覚悟でシンプルに徹したことに気圧される。美術館で見たただ真っ白なだけの絵画のような、圧倒的なデザイン性に気持ちが吸い込まれていく。

レンジローバー スポーツには、およそ期待する限りの機能が盛り込まれていながら、そのすべてをモニター内に格納している。はたしてどれだけのユーザーがその機能のすべてを生かし切れるのであろうかと冷めた思いも湧きあがったが、アレクサの音声機能がすべて代行してくれる。有能な秘書が寄り添ってくれているというわけだ。

動と静、時の流れを変えるラグジュアリーSUVの優雅さに酔いしれる

レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550eレンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550e

いやはや、それにしてもレンジローバー スポーツは実に紳士的である。早朝の東京・銀座をスタートして、首都高速の流れに乗っている限り、ニュルブルクリンクでの激走が錯覚であったかのように爪を隠している。

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充電が満たされている限り、走行のほとんどを電気モーターに依存している。まるで図書館にいるかのように静かだ。右足に力をこめて強い加速に挑めば直列6気筒3リッターユニットがパワーを上乗せする。すると強烈な加速Gが背中を押す。とはいえ、エンジンが始動したことには気がつかない。そもそもシルキー6と称賛される低振動ユニットは、加速を加勢したことを悟られずにパワーを増強しているのである。

首都高速から東京湾アクアラインに乗り入れると、水平線に吸い込まれそうな直線路が伸びる。このままアクセルペダルを床踏みしていれば、その先にはあのニュルブルクリンクで披露した非現実的な世界を覗くことができるだろうが、そんなギアやオイルを連想させる現実的世界をまったく想像させない。

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クルマのスピードはステアリングを握る人や時間や場所によって伸びたり縮んだりするようで、レンジローバー スポーツはその作用が特に強い。ニュルブルクリンクを一瞬にして駆け抜けたというのに、この日は時計の針の動きが穏やかに感じたのだ。高性能なラグジュアリーSUVとは、時間感覚をも優雅にコントロールする。

ちなみに、レンジローバー スポーツには、オートパーキング機能が装備されている。下車してスマホを操作すると、ゆっくりと動きながら、自動で自分のガレージに収まってくれた。

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静かにガレージで佇むクルマを眺めていると、他では得がたい存在感がそこにあり、戦いの後に起こる焼けたブレーキローターが冷やされている過程の“カチカチ”と金属が収縮する音がした。

パワフルで優雅な1日を過ごさせてくれたレンジローバー スポーツ オートバイオグラフィー P550eだが、受注を開始した2025年モデルでは電動化促進のために価格の見直しが行われたという。まずはこの美しいボディを眺めに、そして刺激ある走りを体感しに試乗へ出向いてみてはどうだろう。その1日は間違いなく“特別”な日となるはずだ。

RANGE ROVER SPORT AUTOBIOGRAPHY P550e
全長×全幅×全高:4946×2209×1820mm 
エンジン:3.0 リッター直列6気筒INGENIUMターボチャージドガソリンエンジン+105kW電動モーター
最高出力:550PS 最大トルク:800Nm 
希望小売価格 :16,850,000円~

《撮影協力 Garesidence袖ケ浦 ZEN PAVILION》

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《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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