【マツダ CX-80 新型試乗】CX-80の本質とは何か? 電動化の〇と×を考える…中村孝仁

マツダ CX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダン
マツダ CX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダン全 29 枚

新たなラージ商品群と呼ばれるマツダのFRモデルレンジ。日本では『CX-60』と『CX-80』が販売されている。いずれも3種のエンジンバリエーションが展開されている。

一つは素のディーゼルエンジン。次にそのディーゼルに48VのISGを装備した、いわゆるMHEVモデル。そして3つ目は2.5リットル4気筒のガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせて、充電を可能としたPHEVの3種だ。過去、素のディーゼルとPHEVにはロングタームの試乗を行った。今回は最後に残ったMHEVディーゼルのロングターム試乗の報告をしよう。

ロングタームと言っても借りられる期間は1週間。それでも精々1時間か2時間程度の試乗会での味見とは違う深いところまで知ることができる。もちろん距離をたくさん走れるという意味もあるが、それ以上に日常的な買い物程度の走りから、ちょっとしたロングドライブまで多様に走れるし、何よりも試乗会などでは触ることができない…というか深く考察のできない色々な部分の使い勝手などもわかるので、個人的にはいつもこのロングタームの試乗をメーカーにお願いしている。

◆3種のバリエーションで総合的に一番良いのは

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マツダのラージ商品群の3種のバリエーションのうち、クルマとして総合的に一番良いと感じているのは個人的には今回のMHEVモデルである。

マツダは日本車のメーカーとしては最もディーゼルに力を入れているメーカーである。今回も3.3リットルという大型の直6エンジンを開発してきた。そのディーゼルに関しては日本国内にはライバルがいないため、どうしても海外のブランドと比較してしまうことになる。具体的にはメルセデスであり、BMW、それにランドローバーの各車だ。

とはいえ、あちらはいずれの場合も価格が優に1000万円のレベルを超えるものばかり。マツダとの価格差は非常に大きいから同等の比較は本来してはいけないのだろうが、エンジンについては他に比較のしようがないから、どうしてもこれら3メーカーと比較せざるを得ない。

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メルセデスは『Gクラス』、BMWは『X5』、そしてランドローバーは『ディフェンダー』に乗ってみた結果、やはりマツダの6気筒は静粛性で劣ると判断をした。これに関してメーカー側からの意見は、社内でテストした結果、エンジン単体の騒音に関しては、一部メーカーのものよりも好結果を得ているとのことだが、それはあくまでもエンジン単体での話であって、これにトランスミッションを装備して車体に搭載した時に、エンジン単体では出なかった振動や騒音が出てしまうという。

残念ながらそのあたりの詰めは出来ていないということだろうが、単純にノイズ、振動という話になった時は、いずれも外国ブランドに対しても劣る。これが価格差なのだとしたら、仕方ないし十分に寛容できる範囲だから問題なしとする。

MHEVは電気の力を借りて発進などをスムーズにこなす点では、素のディーゼルに比べると格段に快適である。一方で、電動車特有の高周波音が気になる点もある。ただ、それさえ気にしなければ、ICEだけのクルマに比べてスムーズだし何よりも燃費性能に優れるから、こちらの方が良い。

◆CX-80の本質とは何か?

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しかしCX-80の本質は何か?と問われると、好みの問題もあるけれど、マツダの鼓動デザインを基本とする美しいスタイリングと、上質感溢れるインテリア、もちろん3列シートによる機能性の高さなどが挙げられる。今回は、他のバリエーションも含めてCX-80をほぼ1か月近く堪能した。その結果、コストだけを考えるなら400万円そこそこから手に入る「XD」と言うことになるのだろう。少なくとも3.3リットルの直6ターボディーゼルも、8速ATも、MHEVモデルと何も変わらないのだから。

とはいえ、そのチョイスは極めて多岐にわたり、何をどう組み合わせたらよいやら、とても悩むと思う。素のディーゼルの「Sパッケージ」を選ぶと7人乗りしかチョイスできないし、6人乗りのセンターウォークスルーは「Lパッケージ」しか選べない。そして今回乗ったMHEVの場合、端からセンターウォークスルーはチョイスできない等々。グレード、バリエーション共に大いなる悩みどころがあるわけである。

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今回試乗したモデルは「エクスクルーシブモダン」というグレードのモデル。電動式パノラマサンルーフ(12万1000円)を含んだ車両価格は、614万3500円(4WDモデル)である。以前に試乗したXD Sパッケージの価格は、車両本体価格438万3500円(オプションを含んだ価格は465万3000円)で、こちらも4WDだから条件は同じであるが、その開きは149万500円とほぼ150万円もの差があるのだ。

性能と走りに関してはICEのXDモデルよりもぐっと良いのだが、この価格差があると考えてしまう。電動化した場合はこの価格の高さが×で、スムーズさや燃費の良さが〇ということになるのだが、ご存知のようにこの価格差を燃費の差で取り返すことなどできない。となると、どこに目をつぶって車種選びをすればよいか、非常に迷ってしまう。

個人的なチョイスとしてはディーゼルのどちらか(ICEかMHEVか)で、XDの上級モデルを選んで内装に凝るのがCX-80らしいのかな?と考える。それでもMHEVよりおよそ100万円は安いのだから。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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