グリスロ導入で「1歳若返り」も? 移動の課題解決がもたらす「付加価値創造」とは

ヤマハ発動機の「グリーンスローモビリティ」(第5回スマートシティ推進EXPO)
ヤマハ発動機の「グリーンスローモビリティ」(第5回スマートシティ推進EXPO)全 9 枚

ヤマハ発動機は、7月2日から4日まで東京ビッグサイトで開催される「自治体・公共Week 2025」内の「第5回スマートシティ推進EXPO」に出展。地域の交通課題解決に寄与する低速小型EV「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」を展示、全国で拡大する導入事例を紹介した。

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グリスロは、20km/h未満で公道を走る電動車を活用した小さな移動サービスおよび、その車両も含めた総称だ。ヤマハのグリスロは、50年の歴史を誇るゴルフカーの技術を活用し低速小型EVとして開発され、電磁誘導線を利用した自動運転走行の実績もある。低床で高齢者も乗り降りしやすく、窓もドアもない開放的なキャビンは車内外の人々がコミュニケーションをしやすいデザイン。また、車幅などがコンパクトで、道幅が狭く公共交通を整備しづらかった地域でも人々の移動を助けることが期待されている。

ヤマハ発動機の「グリーンスローモビリティ」(第5回スマートシティ推進EXPO)ヤマハ発動機の「グリーンスローモビリティ」(第5回スマートシティ推進EXPO)

ヤマハのグリスロは2025年5月時点で全国70地域に120台以上の販売実績があり、実証実験も含めると累計220件以上の走行実績があるという。

グリスロ導入で期待されるのは、交通課題の解決だけでなく、観光分野での展開だ。観光スポットはあるのに観光客の周遊が少ない、観光に適した移動手段が足りないなどの課題に対し、グリスを導入することで周遊性を向上し、新たな観光体験を提供することが可能となる。スマートシティ推進EXPOでは、岡山県高梁市。大分県姫島村、京都府和束町、島根県大田市、広島県福山市、そして東京都杉並区での事例が紹介されていた。

観光ガイド付きの周遊ツアーや、タクシーとしての運用のほかにも、自分で運転する観光用レンタカーとしても導入されている。公共交通がない離島である姫島村では、フェリー乗り場を降りてすぐにある観光案内所でグリスロをレンタルすることができる。1周約17kmの島内を自由に移動できるのがメリットで、低速かつ小型なため運転のハードルが低いことも好評だという。またグリスロは最大でも20km/hまでしか出ないため、観光客がスピードを出す心配がないと島民の安心安全にもつながっている。

ヤマハ発動機の「グリーンスローモビリティ」(第5回スマートシティ推進EXPO)ヤマハ発動機の「グリーンスローモビリティ」(第5回スマートシティ推進EXPO)

昨年11月より本格運行を開始したのが東京都杉並区の例だ。こちらは乗合バスのように、荻窪駅周辺約2.5kmのルートを毎日朝9時から17時まで24便運行する。1回100円で、現金とキャッシュレス決済に対応。先行して2022年と2024年に実証運行をおこない、本格運行につながった。昨年11月25日の運行開始から今年5月1日までで約1万2000人が利用、1日あたり76人が利用している計算で、実証運行時よりも利用者数を伸ばし、生活の足として定着しつつある。

通常の路線バスとは異なり、ドアもなくゆっくりと走るグリスロに、利用者からは「遊園地のアトラクションのようで楽しかった」「走っている車両を見て思わず乗りたく」「速度がゆっくりだから景色も楽しめた」「環境にも優しく、人にも優しい」などの声が上がっているという。

そしてヤマハがグリスロでめざすもうひとつの付加価値創造が、「グリスロによる移動が、高齢者の健康促進や社会保障費の抑制などに寄与するのか」。この検証のため、千葉大学、日本福祉大学との共同研究を進めている。移動困難な地域にグリスロを導入することで、高齢者の外出を促進、周辺地域とのコミュニケーションを活発化させることで健康寿命を伸ばすというものだ。アンケート結果では外出が1.9倍、行動範囲が1.7倍に拡大したほか、地域活動への参加も5.2倍になったという。

展示ではVRゴーグルで走行シーンを体験することができる展示ではVRゴーグルで走行シーンを体験することができる

また、家族以外との会話が3.4倍になったとの結果もある。オープンエアでゆっくりと走る車内では、初対面の乗客同士での会話もはずみ、知人が増えたとの声も上がっているそうだ。積極的な外出やミュニケーションによって、グリスロ利用者の要支援・要介護リスク得点が約1点減少、さらに「約1歳若返り」の可能性も期待できるという。これについては現在論文発表に向けて準備中とのことだった。

ヤマハはグリスロを通じて、「地方自治体や民間企業への包括的な支援を提案し、持続的な社会への貢献を目指す」としている。

《宮崎壮人》

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