車高アップは乗り心地が悪いは昔の話? TEINがクロスロードで証明した最適解~カスタムHOW TO特別編~

車高アップは乗り心地が悪いは昔の話? TEINがクロスロードで証明した最適解~カスタムHOW TO特別編~
車高アップは乗り心地が悪いは昔の話? TEINがクロスロードで証明した最適解~カスタムHOW TO特別編~全 22 枚

チューニングやカスタマイズにはそういう多様性があるもの。車高を下げたい人もいれば、上げたい人もいる。さまざまな要望に合わせ込んでいくことがその醍醐味である。

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編集部F氏のホンダ『クロスロード』をカスタムするこの企画。F氏は直近で乗っていたトヨタ『40プリウス』も車高を上げる独特のカスタムを楽しむ様な人。このクロスロードも車高を上げて、ワイルドなイメージを高めて楽しみたいというF氏の自腹企画である。

◆ないなら作る それがクロスロード車高アップ道

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とはいえ、クロスロード用アゲ系車高調なんてものはこの世にはなかった。しかしないものは作ればいい、それこそがカスタマイズの世界。そこで前回のレポートにもあるが、相談した先はサスペンション専門メーカーのテインだった。

テインは横浜生まれのメーカーで、現在も横浜工場と中国工場で製造しているアフターパーツのサスペンション専門メーカー。自社でサスペンションのシリンダーからシャフトまで製造し、それらを組み立てている。現在はシャフトの製造、メッキ加工などは自社の中国工場内で行い、その素材を中国工場と横浜工場で使って組み立てている。自社製にこだわるからこそ、高い品質と耐久性が特徴。それでいて意外なほどにフットワークが軽く、ワンオフ製造も対応してくれる。

ワンオフとは、自分だけの専用品を作ること。テインでは旧車やマイナー車などラインアップにない車種でも1台分を作る「スペシャライズドダンパー」を展開。今回、そのシステムでクロスロード用の車高をアップさせる車高調をオーダーすることになった。

◆ベースはRX1 街乗り快適を最優先

TEIN広報 渡邊宏尚さんTEIN広報 渡邊宏尚さん

F氏は車高を上げるとは言っても本格的なオフロードに行くわけではなく、メインステージは街乗りと高速道路の移動。そのため乗り心地の良さはマスト項目。そこでTEIN広報の渡邊宏尚さんがヒアリングからベースモデルに選んだのは「RX1」。

テインは単筒式と複筒式の2つの構造のサスペンションを製造できる数少ないメーカー。単筒式はピストンバルブが大きく、放熱性も高いので本格的なスポーツ走行に向く。複筒式はフリクションが少なく乗り心地を良くしやすく、製造コストも安い傾向にある。

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それらの特徴から今回は複筒式の「RX1」がベースとしてチョイスされた。複筒式構造に加えてテイン独自の技術である「H.B.S.」搭載が特徴。「H.B.S.」とはハイドロ・バンプストッパーのこと。サスペンションが大きく沈んだときにガツンと動きを止めるのではなく、油圧で止めることで乗り心地をよくできる機構である。

今回は車高30mmアップをベースにして寸法やストロークを見直し、F氏のクロスロード専用モデルを作ってもらった。基本的な納期は1か月半~2か月と短めなのもテインの特徴。専用スタッフが毎日ワンオフ品を設計、製造しているからこそできるのだという。

◆色々な道で実走チェック EDFC5が名脇役

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いよいよサスペンションができあがった。想定通り約30mm車高はアップ。減衰力調整はEDFC5で室内から調整可能。EDFC5の特徴である速度やG、ジャークに応じた自動制御も可能。

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まずは、荒れた路面で試乗。減衰力は弱めにセットした状態で走ると、荒れた路面のザラザラ感はほぼ感じない。極めて快適である。それでいてフワフワ感もほとんどない。

試しに減衰力を16段階中の5段戻し程度まで強めると、荒れた路面の感触がやや伝わるようになる。それでもまったく不快感はないし、むしろそこまでの減衰力の変化量があるのが魅力。

サスペンションメーカーによってその設計は異なり、減衰力調整によって大きく変化するものもあれば、調整してもほとんどわからないこともある。また、変わってほしい領域ではないところが変化してしまうこともある。そのあたり今回の「RX1」は、まさに調整したい街乗りでの乗り心地やハンドリングの部分が変化してくれて、細かく合わせ込みやすい。

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高速道路でも継ぎ目が気にならず、乗り心地は素晴らしく良い。基本セットは減衰力を弱めておいて、サスペンションをわりと速めに動きやすくしておくと、高速道路の段差や継ぎ目などもスムーズに吸収してくれる。

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急カーブに差し掛かるときは、EDFC5の自動アジャストが活躍。ジャーク制御によってロールしていく最中は減衰力が高まり、ロールをしっとりと抑えてくれる。それでいてロールが落ち着いたところでは素早く減衰力が弱まり、再びサスペンションはショックを吸収してくれるようになる。

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ジャーク制御だけでなく、前後左右のGに感応した制御や速度に応じた制御、それらをいくつか組み合わせたセットができるのがEDFC5の特徴で、より走行ステージに合わせ込むことができるのだ。

◆車高アップの弱点を潰してくれる設計と価格感

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褒めちぎっているようで恐縮だが、事実よくできてるので仕方ない。車高をアゲると実は乗り心地がわるくなることも多い。

車高を下げるとダンパーが底づきしやすくなって乗り心地が悪くなることは多いが、車高アップもサスペンションの伸び側ストローク量が短くなり、段差などでサスペンションが適正に伸びてくれず、段差から着地したときに落下するようになって乗り心地が悪く感じることがある。

そのあたりはしっかりと伸縮のストロークを見て設計されているので、しっかりとストロークし乗り心地が確保されている。

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「ワンオフでもこれまでのデータと、細かいデータ取りをして製作しますので、作り直しになるほどセットを外すことはありません。想定ではこのくらいの減衰力が一番快適かなというところが、実車だと少しズレたりすることがある程度です」(広報・渡邊宏尚さん)

今回のスペシャライズドダンパーは「RX1」をベースにしていて、全長調整機構+「H.B.S.」。フロントサスはストローク量を確保するためにワンオフの樽型スプリングを製作。アッパーマウントもリフレッシュを兼ねてテイン製ゴムアッパーを採用。ほぼほぼストリート仕様としてはフルスペックで約42万円。そこにEDFC5を加えると総額で定価約55万円となる。

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手軽に製作できる金額ではないが、自分だけの仕様をラインアップにない車種用にサスペンションを製作すると考えると決して高くはない。仕様的にも今回はフルスペックなので、ネジ式車高調整にして、H.B.S.もなしにするなど吟味して、EDFC5もなしだとすると30万円台に収まる。

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自分だけの仕様、サスペンションが発売されていない車種、旧車には魅力的なサービスである。ホンダ・クロスロードの車高アップという“ないものねだり”を、ちゃんと“走れる正解”にしてくるあたり、テインの職人力はなかなかのもの。

《加茂新》

加茂新

加茂新|チューニングカーライター チューニング雑誌を編集長含め丸15年製作して独立。その間、乗り継いたチューニングカーは、AE86(現在所有)/180SX/S15/SCP10/86前期/86後期/GR86(現在所有)/ZC33S(現在所有)。自分のカラダやフィーリング、使う用途に合わせてチューニングすることで、もっと乗りやすく楽しくなるカーライフの世界を紹介。

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