BEV(バッテリー式電気自動車)と並んでCO2削減の切り札とされるPHEV(プラグインハイブリッド車)だが、そこに逆風が吹き始めている。同じ車種でもCO2排出量が増える、という現象が起こっているのだ。段階的に厳しくなるCO2規制に、自動車メーカーは対応できるのだろうか?
◆鍵はユーティリティファクター
欧州でPHEVの公称CO2排出量が今年になって増え始めた。例えばメルセデスベンツ『Cクラス』の「C300e」は2025年12月時点では12~16g/kmだったのに、現在は47~52g/kmだ。プジョー『3008』の「3008 ALLURE Plug-in Hybrid」は19g/kmから55g/kmに増えた。
何が変わったかと言えば、PHEVならではの「ユーティリティファクター」である。PHEVはバッテリーに蓄えた電力でEV走行できるし、電池残量が少なくなっても充電スタンドまでの距離を気にせずエンジンで走れる、という二刀流のシステム。EV走行中はCO2排出量がゼロで、エンジン走行中は燃費に比例する。
そこで、欧州主導で定めた燃費/排ガス試験法の国際基準であるWLTPでは、PHEVのEV走行距離に応じてユーティリティファクター(UF)を決めている。例えば試験時間の30%がEV走行ならUF=0.3だ。そのUFの計算方法が改訂された結果、PHEVのCO2排出量の認証値(カタログ公称値)が大幅に増えることになった。
◆PHEVの不都合な現実

WLTPはそれまでのNEDCよりリアルワールドに近づけることを狙った試験法だ。その主旨に沿ってユーザーが実際にどう走っているかを知るため、EU=欧州連合は2021年1月から、すべての新車に燃費と走行距離をモニターする装置の装備を義務づけ、メーカーにそのデータを収集して1年ごとに報告することを求めた。
その結果、PHEVにとって不都合な現実が明らかになった。2021年に販売されたPHEVのリアルなCO2排出量が、認証値のなんと3.5~5倍だったのだ。
PHEVは自宅でしっかり充電して走り始めてこそ二刀流のメリットを発揮できるわけだが、リアルなデータからわかったのは、欧州ではPHEVをプラグイン充電する人が少ないということ。そのぶんエンジンで走行あるいは発電する時間が長くなり、CO2排出量が増えてしまう。
欧州では企業が従業員に貸与する「コーポレートカー」の制度があり、これがPHEV販売のほとんどを占める。CO2排出量が少ないクルマは企業側に税制恩典があるからだ。しかし、燃料代を会社が持ってくれたとしても、自宅でPHEVを充電する電気代を会社に請求するのは難しい。だから充電しない。そんな実態が浮かんでくる。
◆「Euro 6e-bis」でCO2が3倍に
WLTPの試験方法や規制値を具体的に定めるのが、“Euro ○”と呼ばれる規制だ。現時点の大枠としてはEuro 6だが、それをリアルワールドに近づけるために改訂が繰り返されてきた。2014年に施行されたEuro 6dは2021年にEuro 6eに更新され、2025年にはEuro 6e-bisへと改められた。
このEuro 6e-bisでPHEVのユーティリティファクター(UF)が変更されたのだ。試験距離を800kmから2200kmに延ばし、EV走行距離の割合を低減。それによりUFの値が小さくなり、CO2排出量の認証値が3倍前後に跳ね上がることになった。
Euro 6e-bisは2025年1月以降の新型車に適用され、継続生産車も昨年末までにEuro 6e-bisに基づく認証を再取得することが求められた。継続生産車はEuro 6eでの認証データを使って計算し直せばよく、新たに試験したわけではない。
CO2認証値が増えれば前述した税制恩典が減り、それが今後のPHEV販売に影を落とすことになるだろう。しかしもっと深刻な問題がある。CO2排出量の規制だ。



