【VW ゴルフTDI 新型試乗】ディーゼル・ゴルフで味わう自動車としてのベーシック…中村孝仁

VW ゴルフTDI
VW ゴルフTDI全 34 枚

ディーゼルエンジンのクルマは、昔からカラカラと、味気ないというよりも雑音に近いノイズが、外から聞いていて気になったものである。

【画像】VW ゴルフTDI

少し化粧直しと、とりわけインフォテイメント系の一新が施された、マイナーチェンジ版の『ゴルフTDI』に試乗した。VWジャパン本社がある東京の御殿山で、クルマを受け取る。地下駐車場からクルマを出してきた車両管理の方が、エンジンを切った時に気になったもので、「すみません、もう一度エンジンかけて見てください」とお願いした。というのも、あまりに静かで、ガソリンエンジン車借りちゃったかな?と思ったからである。

結果は確かにディーゼルであったわけだが、外で聞くエンジン音は、カラカラでも雑音でもなく、アイドリング時の音は、ほとんどガソリン車並みの静粛性を持っていたのである。

VW ゴルフTDIVW ゴルフTDI

しかしまぁ、ドライバーズシートに座って乗り出してみると、いつもの味気ないディーゼルノイズが室内に侵入してくる。外の静けさとは対照的ともいえる、静粛性のなさであった。

このクルマがデビューした2021年当時、同じエンジンのEA288evoは、それ以前のevoが付かないエンジンと比べたら、圧倒的に進化したものに映ったのだが、5年の歳月は残酷で、外から聞くエンジンノイズはぐっと静かになったものの、インテリアのそれは以前と全く変わらずで、どことなく置いてきぼりをくった印象すら受ける。

とはいえ、ディーゼルエンジンに関しては、どのメーカーも似たり寄ったりで、要は開発が止まっている印象しか受けないから、これで良しとしよう。

◆トルクとエネルギー変換効率はディーゼルならでは

VW ゴルフTDIVW ゴルフTDI

やはりディーゼルの並外れたトルク感は、軽快さこそ犠牲になっているとはいえ、捨てがたい魅力であることは間違いない。特にパーシャルからぐっと深く踏み込んだ時の、トルクもりもりの加速感は、コモンレールが採用されてクリーンになり、ターボがついてパワフルになった時代から変わらず、ディーゼルの最大の魅力といっても差支えないと思う。

個人的に昔からディーゼルエンジン信奉者で、まだフルスロットにすると、大胆かつ豪勢に後ろが見えなくなるほどの煙幕を張った時代から、ディーゼル車を乗り継いできた。そして今から29年前の1997年に、世界初のコモンレールターボディーゼルを搭載した、アルファロメオ『156』が誕生した。このクルマには試乗していないが、同じ年に登場した、メルセデスベンツ『Aクラス』のコモンレールターボディーゼルには試乗して、その高い動力性能と、煙の全くでないクリーンさに大きな感銘を受けたものである。

ディーゼルの良さはそれだけではない。なんといってもエネルギー変換効率が、ガソリンエンジンよりも優れていることによる燃費の良さだ。今回のゴルフは、高速を巡行するだけでなく、そこそこ渋滞する幹線道路を含むおよそ500kmを走破したが、車載コンピューターによるアベレージは、実に24km/リットル。

燃料代が高くなっている昨今、ハイオクガソリン(ヨーロッパ車はすべてハイオクだ)に比べて、場所にもよるだろうが、リッター当たり最大39円もの差(我が家のそば)がある軽油の安さは、実に有り難い。この24km/リットルという燃費は、近年ではめったにお目にかかれる数値ではなく、直前まで乗っていた軽自動車は、15km/リットルがやっと。内燃機関だけによる燃費としては、相当に優れた値なのである。

◆自動車としてのベーシックを感じさせてくれる

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長く、Cセグメントのベンチマークとして、世界中から追いつくべき存在とされてきたモデルである。SUV全盛となった今、Cセグメントのハッチバック車の人気は大きく陰ってはいるものの、いざ乗ってみるとこれでいいじゃない…というか、これがいいじゃない、という気持ちになる。そもそもサイズ的に少し大きくはなったけれど、街に乗り出してみても、不都合を感じることは全くない。

確かにSUVの目線の高さは捨てがたいかもしれないが、それによるクルマの大型化は、東京のような立体駐車場が多い場所では、難儀することもしばしば。その点、ゴルフはどこへでもスイスイである。それに、やはり重心の低さは、SUVにはないハンドリングの良さを味合わせてくれる。そんなわけで、自動車としてのベーシックを感じさせてくれるのが、ゴルフなのかもしれない。

今回はインフォテイメント系が大きく進化したという。ディスプレイは大型化し、IDAと声をかけて話しかける音声認識も、優れモノになったそうだ(使わなかったが)。でも何といっても、ことあるごとにVW車に乗って気に入らず、文句ばかりつけていたナビゲーションが、大きく進化した。少なくとも画面を一回タッチするだけで、地図が呼び出せる。これは大進化以外の何物でもない。まあ、相変わらず目的地入力では難儀するが。

次の進化では、あまりに下手な音声案内の女性の声を、もう少しスムーズに話してもらえるようにして欲しいものだ。

VW ゴルフTDIVW ゴルフTDI

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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