SDVの勝ち筋は協業か内製か?車載ソフトウェアの儲けどころを考える…矢野経済研究所 主任研究員 山口泰裕氏[インタビュー]

SDVの勝ち筋は協業か内製か?車載ソフトウェアの儲けどころを考える…矢野経済研究所 主任研究員 山口泰裕氏[インタビュー]
SDVの勝ち筋は協業か内製か?車載ソフトウェアの儲けどころを考える…矢野経済研究所 主任研究員 山口泰裕氏[インタビュー]全 3 枚

レスポンスセミナー「2030年までのSDV・アプリケーション市場動向~制御系/車載IT 系/SDV/AI-DV 別シェアの変遷~」では、矢野経済研究所 主任研究員 山口泰裕氏が、SDVを車載アーキテクチャの視点から考え、その変遷とビジネスとしての儲けどころ、課題を分析する。

車両アーキテクチャから見たSDVとは?

山口氏は、セミナーでまず「SDVとは?」を整理するところから始めるという。そもそも業界でも定まった定義がない状態で、OEM、サプライヤー、クラウドベンダー、サービスプロバイダがそれぞれの立場でSDVを規定しているような状況だ。

「経産省の示しているモビリティDX戦略においては、「クラウドとの通信により、自動車の機能を継続的にアップデートすることで、運転機能の高度化など従来車にない新たな価値が実現可能な次世代の自動車」と定義しており、いわゆる「OTAができる車」をさしています。しかしながら、OEMやサプライヤーにしてみれば、ナビ地図の更新などはずっと前から実施しています。それをSDVと呼んでいいのかということです。とはいえ、業界としてもSDVとは何か、整理できてないというのが実情です。そこで、我々は車両の(エレクトロニクス)アーキテクチャに着目することにしました」

いわれてみれば、業界変革期にありSDVという言葉もここ数年の話題ともいえる。技術も市場も定まっていない状態で、明確な定義はしにくい。山口氏は、2018年以前のECUアーキテクチャを「制御系ドメイン」「ADAS/AD系ドメイン」「ボディ系ドメイン」「情報系ドメイン」と4つに分けた。この4つのうち、情報系は他の3つとは独立した存在だったという。2010年代、ナビは外付け・後付けが一般的であり、一部メーカーの情報サービス(G-Book、InterNavi、CarWingsなど)も車両制御やボディコントロールとは完全に分離していた。

「2018年を境に、4つのドメインの機能や役割が少しずつ変わってきます。特に情報系の重要性が高まりOEMはナビメーカーや地図プロバイダーと共同で車載化、ビルトインモデルが主流になります。そして、2025年以降は、ビークルOSの出現が現在とこれからの変革の鍵になります」

ECUアーキテクチャの進化とビークルOS

どういうことか、さらに詳しく聞いてみた。まず、2025年前後のビークルOSの状況はどうなっているのだろうか。

「トヨタやフォルクスワーゲンなどがビークルOSと呼ぶものは、アプリケーションとOSの間に位置づけられます。端的にいえばビークルOSはAPIの塊であり、ドメイン間の横軸を通すような役割を担っています。ところが従来の各ドメインはサイロ化しており、組織的にも独立していますが、ビークルOSを通じて横軸を通し、サイロ化を解消していくことが求められています。このサイロ化の解消がどこまで進むのかが2025年以降のアーキテクチャの主たる変化となっていきます。

2025年時点においては、情報系ドメインやボディ系の一部に横軸を通す形となります。なお、制御系ドメインやADAS/AD系ドメインは従来通りサイロ化のままです。2028年、2030年と時代が進むにつれ、ビークルOSのカバー範囲が徐々に広がっていくことになります」

市場環境はどうなのか。

「市場環境の面から見た場合には、従来、エンジンやトランスミッションなどの制御系ドメインには各種RTOS、QNX、AGLなどがマイコンOSの現在の主流です。主なプレーヤーとしては、NXP、インフィニオン、STマイクロ、ARM、ルネサスですね。そうしたなか、2024年~2025年にかけてマイコンメーカーがSDVを旗印として、ルネサスの『R-Car』やNXPの『S32 CoreRide』といったSDVソリューションの提供を開始しています(図では水たまりのように表現)。

そうしたなか、ここにきて中国車のIVI(情報系ドメイン)で成功した、NVIDIA、クアルコムなどがターンキーを抱えて参入してきています。ターンキーと称したように、これらは情報系ドメインにとどまらず、ボディ系、ADAS、AD(自動運転)の領域にかかわるOS(AGX Hyperion、Snapdragon Ride)を提案してきているのが今の状況です」

出典:矢野経済研究所 『2026 AI-DV(AI定義車両)市場の実態と展望~SDV/車載ソフト市場の構造大変革、産業OS・都市OS化を目指す未来~』(2026年3月発刊)より抜粋

ECUアーキテクチャは、以前ではサイロ化するマイコンの整理、配線の簡素化、軽量化といったニーズからドメインに分割する方向に進化していった。現在は、物理的な効率化・コストダウンに加え、SDV化(IVI強化、ADAS強化、クラウドサービス連携)によって複雑化するソフトウェアコストに対応するため、ゾーンの考え方、統合ECUといったアプローチが広がっている。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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