元マツダ・ロードスター開発主査の貴島孝雄氏、「人馬一体」の設計哲学を広島のエンジニアに伝授

元マツダ・ロードスター開発主査、現山口東京理科大名誉教授の貴島孝雄氏と、3代目ロードスター
元マツダ・ロードスター開発主査、現山口東京理科大名誉教授の貴島孝雄氏と、3代目ロードスター全 3 枚

ニュートンワークスは4月21日、広島県情報プラザにて「『智の伝承』広島発!感性重視のものづくりと、考える設計CAEセミナー」を開催した。

元マツダ『ロードスター』開発主査で、現在は山口東京理科大学名誉教授を務める貴島孝雄氏が登壇。EV化という大きな変革期を迎える中、広島のエンジニアたちが結集し、ものづくりへの知見を共有する場となった。

◆「人馬一体」を数値に落とし込む

貴島氏はマツダ・ロードスターの核心コンセプト「人馬一体」について、単なるスローガンではなく、工学的な数値として具現化したプロセスを詳しく説明した。

「人馬一体」の本質は、ドライバーの意図した通りにクルマが反応する「鏡のような応答性」にある、とし、3代目(NC型)の開発では、ヨー・ロール・ピッチという3軸の動きを緻密に制御し、1g単位の軽量化(「グラム作戦」)を積み重ねることで慣性モーメントを最小化したという。

また、Aピラーの見開き角度をmm単位で調整してコーナリング時の視認性を高めるなど、「動的クラフトマンシップ」と呼ぶ人間中心設計の考え方が、世界で最も愛されるオープンスポーツカーを生み出した「智」の正体だと示した。

◆「ホルモンシャワー」を設計する

元マツダ・ロードスター開発主査、現山口東京理科大名誉教授の貴島孝雄氏

講演後半では、元マツダ社長・山本健一氏が提唱した「自動車文化」の精神をもとに、製品開発における感性価値の重要性が語られた。

貴島氏は、優れた車を操る喜びを医学・心理学の観点から「ホルモンシャワー」と表現。操作と挙動の一致による安心感はセロトニンを、思い通りに曲がれた達成感はドーパミンを、リズミカルな運転による没入状態(フロー状態)はエンドルフィンをそれぞれ分泌させると説明した。

こうした感動体験を設計することが、工業製品を「文化」へと昇華させる「こころづくり」であると主張。EV化で無機質になりがちな技術革新に直面する現代のエンジニアへの熱いメッセージが込められていた。


《レスポンス編集部》

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