レスポンスセミナー「フィジカルAIの覇権争いを特許情報起点で炙り出す-自動運転・ヒューマノイド・主要プレイヤー分析と勝ち組候補-」では、各社が取り組むロボタクシー、ヒューマノイド、自動運転技術を個社ごとに深堀りする。その上で、それぞれの強み・弱み、フィジカルAI視点での戦略を探る。
スピーカーは知財ランドスケープ 代表取締役社長CEO 弁理士 シニア知的財産アナリスト(AIPE認定) 山内明氏。山内氏は特許出願情報を独自視点で紐解くことで、主要プレイヤーの技術レベルや注力分野を特定し、各プレイヤーの共通点から技術潮流までも炙り出す、IPランドスケープと称する分析サービスの専業代表である。
今回のセミナーでは、自動車業界とロボティクス業界を横断して分析することで、自動車業界の主要なOEMやTier1の立ち位置を明らかにし、さらに各社の差別化戦略や業界全体としての技術潮流までも炙り出した結果を詳述する。
ヒューマノイドだけではないフィジカルAI
フィジカルAIの応用分野は、ヒューマノイドが典型例だが、自動車産業全体からみるともう少し解像度を上げる必要がある。現在「フィジカルAI銘柄」ともいえる企業群は、産業ロボット、ヒューマノイド、自動運転車(ロボカー)の3つに分けてみる必要があると山内氏はいう。そして、フィジカルAI関連の世界中の特許出願情報を13,564件に絞り込み、産業ロボット分野のトップ20社、ヒューマノイド分野のトップ25社、自動運転車分野のトップ25社を対象とし、特に注目に値するプレイヤーについて詳細分析を試みた。
ただし、今回のセミナーは自動車業界向けということもあり、3つの分野のうちヒューマノイド分野と自動運転車分野の2つについて取り上げる。自動運転車にヒューマノイドを加えるのは、自動運転車に傾注する主要OEMの一部が開発、市場参入を表明しているところ、その狙いや勝算を明らかにするためである。その代表格はテスラであり、先日、モデルSとモデルXの生産を終えたフリーモント工場にて同社製ヒューマノイドであるオプティマスを量産化すると報じられており、CEOのイーロン・マスクによる強気の発言もあり、話題を呼んでいる。しかもポストテスラと称されるXpengなどが追随する動きもあり、目が離せない。
産業ロボットも自動車産業に関わりが深く、かつファナックなど日本ブランドが強い分野だが、OEMやTier1はユーザー側の立場である。Tier1代表格のボッシュがグループとして産業ロボットを手掛けている事例もあるものの例外的であるため、今回のセミナーでは対象外としたが、自動運転車、ヒューマノイドおよび産業用ロボットの3分野を横断的に分析した結果のサマリーについても簡単に触れたい(山内氏)。
ヒューマノイド分野での注目企業
セミナーで取り上げる企業は各分野トップ25から30。ヒューマノイド分野の分析では、UBTECH、Fourier(フーリエ)、Agibot、Boston Dynamics、Xiaomi、Xpengなどをとくに注目すべき企業として挙げることができる。
「UBTECHは、業界トッププレイヤーのひとつですが、特許数(ファミリ特許数)においても分析対象の中でも1位です。ロボティクス企業としての歴史もある上場企業としての特許ポートフォリオの盤石さも目立ちます。
Fourierはネジ締めができるほどの手先の器用さに特徴があり、これを差別化要素としたヒューマノイド開発に傾注しており、特許ポートフォリオも充実しています。
日本人に馴染みがあるのはカナダトヨタが生産ラインに試験導入したAgility Roboticsかもしれませんが、手先の器用さでは特筆に値せず、特許情報でFourier同様に存在感大のAgibotこそ要注目といえます。Agibotは日本人には馴染みがないかもしれませんが、市場シェアでUnitreeとトップ争いをしており、手先の器用さは勿論、人間の脳にあたるAI開発ではUnitreeに勝るため、要注目です。
Boston Dynamicsは、Hyundaiの車両製造ラインにおいて人間の労働者一人では搬送困難な位の重量物をハンドリングし、かつホットスワッピングによって実質的な24時間稼働を可能とすることにより、生産性向上による自車EVのコストパフォーマンス向上を目論むことも分かりました。
XiaomiとXpengは新興EVメーカーとして共通するものの、ロボティクス分野では微妙な戦略の違いがあり、具体的にはEV開発で培った技術とのシナジー志向においてXpengの方が勝る様子がうかがえます」
Hyundai + Boston Dynamicsの強み
これらの中でさらに注目すべきは、Boston Dynamicsだろう。同社は現在Hyundaiの傘下となり、開発の方向性や戦略や大きな軌道修正が行われた。山内氏の分析では、これが同社のモチベーションアップにもつながっていると指摘する。
「Boston Dynamicsは、DARPAチャレンジでも名を馳せたMIT発、すなわちロボティクス企業の本流のひとつです。親会社がGoogle、ソフトバンクと変遷する中で一時は方向性を見失っていた感さえありましたが、特許情報を見る限り、開発現場を支えるキーパーソンは残留しており、Hyundaiグループでは、車両製造ラインの自動化など、さまざまな業務の労働力として具体的な製品コンセプトを提示されたことが明らかです。
同社は、油圧アクチュエータで動く四足歩行ロボットをいち早く開発しました。そのため、ヒューマノイドの開発でも油圧アクチュエータへのこだわりがありましたが、Hyundaiは工場内配備に向けてメンテナンスフリーや人間の労働者との協働を想定しており、これに応えるべくモータに置換して完全電動化しました。製造ラインでの組立作業に耐えられるよう手先の器用さも進化させており、特筆すべきは重量物をしっかり掴めるように人間と同じ5本指ではなくあえて4本指とした点であり、それに伴う把持力向上が人間の労働者以上の働きを可能としています。

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