3サイズ4780×1850×1430mm。このディメンションは、最新のクルマたちの中では、かなり小さな部類に入るモデルといっても過言ではない。
ボルボを立て続けに2台お借りした。今回借りた『V60 PHEV』は、『EX30』から乗り換えたものである。超が付くほどモダンなEX30から乗り換えて、V60のコックピットに収まってみると、クラシカルな昔風インテリアが出迎えてくれる。
ドライブ直後には、やはり古さを感じるものの、実はモノの30分も乗ると、こちらの方が肌に合っていることがわかる(まあ、歳のせいか)。とりわけ、メータークラスター内のデザインは、たとえそれがデジタルディスプレイであっても、慣れた目には視認性に優れ、落ち着いてドライブすることができた。
ボルボ V60 PHEV
◆あえて走行中充電のみで700kmを走った
PHEVであるのだから、帰宅してそのまま充電器に繋げば、翌日もまたフル充電状態で走れるのはわかっていたが、今回は少し変わったテストを行ってみた。
このクルマには走行中に充電をする、チャージモードが装備される。まあ、多くのPHEV車にはこの設定があるのはわかっているが、燃料消費が多くなるだろうとの勝手な思い込みから、今まで使ったことがなかった。だからそれに挑戦してみたのである。
お借りした期間に走った総距離は、おおよそ700km。このうち2回は、往復で250km程度のロングドライブである。念頭に置いた走行は、こうであった。メーター上の平均燃費が15km/リットルを下回らないよう、それに近くなったら、走行モードを充電に切り替えて走行し、平均燃費が16.5km/リットルほどになったら、再び自動に切り替えて走行することを繰り返した。
ボルボ V60 PHEVこの走行の結果について先に話をすると、返却時の総平均は16.3km/リットルであり、このサイズのクルマとしては、立派な燃費性能を示したと言えるだろう。この手のテストは試乗会では無理。やはりクルマは数日使ってみないと、わからないものである。
まあ、さすがに最後はフル充電して返却したのだが、もし、自宅に充電設備がないという人でも、このような走り方をすると、案外PHEVは使い勝手が良いし、燃費も十分に納得の数値を示してくれることが分かった。
時々ボルボディーラーに行って、電気を満たしてやれば(といっても急速充電はできない)、ガソリンオンリーのクルマ(ボルボにはないけれど)よりは静粛性も高いし、BEVと違っていちいち充電スタンドを調べたり、電欠を心配する必要がなくなり、同時に少なからず環境にも配慮できるというわけである。
◆日本にフィットするサイズと、スムーズな走り
ボルボ V60 PHEV冒頭に3サイズについて話をしたが、このサイズ(特に全幅に関して)は、日本の交通事情を考慮して設計してくれたそうだから、どこに行くにしてもとても都合が良いことは、700km走行する間にたっぷりと味合わせてもらった。
やはり横幅が広がっていくと、並列で駐車している際に、ドアを開くと隣のクルマのことが非常に気になるが、このクルマの場合、前後のドアサイズがほぼ同じで、本来は乗降には適さないのかもしれないが、意外とドア幅はそれほど大きくないので、隣に気を遣うようなシーンにはあまり遭遇しなかった。
ハイブリッドモードで走行すると、発進は当然ながら電気が司り、多くの場合は電気が主役(一般道では)というケースが多い。それにエンジンがかかるタイミングにしても、静粛性が高いからほとんど気づくこともない。こうしたやり取りが間断なく行われているわけだが、ボルボのPHEVの場合、ネガ要素がないわけではない。
ボルボ V60 PHEVあくまでも今回の試乗車に限ってお話をすると、アクセルオフにして走行する(下り坂のような)ケースで、時としてブレーキが抜けたような状態で、あたかも加速するような印象の走りをすることがあった。いずれにしても、アクセルのオン/オフでこうした傾向が比較的頻繁に表れて、エンジンとモーターのやり取りがあまりうまくいっていない印象があったのである。このため、走行自体が全くスムーズというわけには行かなかった点が残念であった。
しかしこれを除けば、全体としては非常に快適でスムーズである。足のセッティングはフロントがダブルウィツシュボーン、リアはマルチリンクとされているものの、リアに使うスプリングはコイルではなく、なんと横置きのリーフスプリングだ。コイルスプリングに比べて、ストローク量が取れないのではないかという心配は杞憂。比較的荒れた一般道でも見事にショックを吸収してくれる。
◆未来に残すべき見本のようなパッケージ
ボルボ V60 PHEV現行モデルは2018年に登場したもの。すでに8年目のモデルイヤーというわけだが、スタイリングにしても使い勝手にしても、最新のモデルと比べて全く引けを取らない。それどころか前述したように、輸入車でありながら、日本の道路事情にも配慮してコンパクトに設計してくれたおかげで、取り回しが良いのは大きな特徴である。
SUV全盛の今、おそらくは目線の高さで、SUVというカテゴリーに人気が集まっているのだと思うが、V60のパッケージングはこの先、より多くのADAS機能が加われば、残すべき見本のようなパッケージに思われる。何よりも、インテリアの造作はクラシカルではあるものの、ほっとする温かみを備えていた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。




