◆日本メーカーの牙城を崩したBMWの快走
鈴鹿8耐で総合3位の快挙を達成したBMWモトラッドのファクトリーチーム「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」
BMWモトラッドが鈴鹿8耐の歴史を変えた。2026年7月に開催された「第47回 鈴鹿8時間耐久ロードレース」で、BMWモトラッドのファクトリーチーム「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」が総合3位を獲得。
【画像】「鈴鹿8耐」で歴史的快挙を成し遂げたBMWモトラッド
1978年の大会創設以来、日本メーカー勢が築いてきた牙城を崩し、輸入車ブランドとして史上初の表彰台という新たな歴史を刻んだ。
さらにBMWの公式チーム「オートレース宇部 Racing Team」も5位に入賞。BMW M1000RRの高い戦闘力を世界中へ強烈にアピールする結果となった。
右からCEOのマーカス・フラッシュ氏、モータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏、チームマネージャーのヴェルナー・ダーメン氏その興奮が冷めやらぬ翌日、BMWモトラッドは記者会見を開いた。ドイツ本社から来日中のBMW Motorrad CEO(最高責任者)のマーカス・フラッシュ氏と、モータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏も、鈴鹿から東京へ移動し、そのまま出席した。
筆者(青木タカオ)は、この二人への単独インタビューにそれぞれ成功。歴史的快挙についてはもちろん、レースファンが気になるMotoGP参戦についても話を聞くことができた。
◆CEOが語る鈴鹿8耐、そしてMotoGPへの展望
BMW Motorrad CEOマーカス・フラッシュ氏青木:まずは本当におめでとうございます。昨日はボクも鈴鹿サーキットでレースを見ていました。
BMW Motorrad CEO マーカス・フラッシュ氏(以下、マーカス):ありがとうございます。海外メーカーとして初めて表彰台を獲得できたことは、私たちにとって本当に素晴らしい成果でした。
青木:鈴鹿8耐をご覧になった感想をお聞かせください。
マーカス:私にとって日本の皆さんは、パッション(情熱)とディシプリン(規律)という、相反するふたつを見事に両立させている印象があります。
ファンはレースへの理解が深く、ライダーやチームを熱狂的に応援してくれる一方で、すべてのチームやライダーに敬意を払っている。それがとても印象的ですね。
M1000RRで鈴鹿8耐3位、表彰台に立ったBMWモトラッドのファクトリーチーム「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」青木:BMWモトラッドはFIM世界耐久選手権(EWC)やスーパーバイク世界選手権(WSBK)で大きな成果を挙げ、M1000RRの実力を証明しています。せっかくのこうした機会ですから、単刀直入に聞かずにはいられません。2027年からMotoGPは850ccレギュレーションへ変わります。BMWにとって新規参入の好機だと思いますが、MotoGP参戦についてはいかがでしょうか?
マーカス:世界中どこへ行っても、ジャーナリストたちからその質問を受けます。BMWにとって、モータースポーツはブランドのDNAそのものです。私自身もよく考えるテーマですが、MotoGPにはいつか参戦すると考えています。
青木:参戦時期はまだ明言できないと思いますが、それほど遠い未来ではないのでしょうか?
マーカス:さまざまな調整が必要になりますので、適切なタイミングを見極めて参戦したいと考えています。
単独インタビューに応じたBMW Motorrad CEO、マーカス・フラッシュ氏と筆者(青木タカオ)海外メディアでは「ゼロからMotoGPマシンを開発するには時間が足りず、2027年の参戦は現実的ではない」と報じられていた一方で、今回マーカス・フラッシュCEOは「MotoGPには、いつか参戦する」と自ら明言した。
この発言は、BMW Motorradの将来を占ううえで、大きな意味を持つと言えるだろう。
具体的な時期こそ明かされなかったものの、ロードレース最高峰への挑戦を明確に意識していることがうかがえるインタビューとなった。
◆鈴鹿8耐表彰台は通過点、BMWが見据える世界制覇
BMW Motorradモータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏モータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏にも話を聞いた。すると、さらに興味深い話が飛び出した。
青木:市販車ベースのEWCやWSBKと、MotoGPがまったく異なるカテゴリーのレースであることは承知しています。それでも、なぜBMWはMotoGPへ参戦していないのでしょうか?
スヴェン・ブルッシュ氏(以下、スヴェン):個人的には、前向きに考えています。ただ、おっしゃる通りマシンはまったく違いますし、私たちは7年から10年というスパンで計画を立てています。その中で、いつ、どのような形で参戦するのがベストなのかを検討していかなければなりません。
なんと、「7年から10年」という時間軸が示された。もちろん、MotoGP参戦の時期を示したものではないのかもしれない。しかし、BMWが最高峰カテゴリーへの挑戦を短期的な話ではなく、将来を見据えたテーマとして捉えていることは十分に伝わってくる。
いつの日か、BMWのエンブレムを掲げたMotoGPマシンがグリッドに並ぶ。そんな未来を思い描かずにはいられない。あまりにもインパクトが大きかったため、今回はMotoGPに関する発言を先に紹介したが、スヴェン氏には鈴鹿8耐や日本についても聞いてみた。
スヴェン:昨年初めて鈴鹿8耐を訪れ、本当に素晴らしいイベントだと思いました。だから今年はCEOのマーカスも誘って、一緒に来たんです。
青木:どのあたりが鈴鹿は素晴らしいのでしょうか?
スヴェン:ヨーロッパにも伝統と格式のあるレースは数多くありますが、鈴鹿もまた特別です。美しいサーキットですし、日本のファンは本当に情熱的ですね。
M1000RRで鈴鹿8耐3位、表彰台に立ったBMWモトラッドのファクトリーチーム「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」青木:今回は3位表彰台。BMWの強さを証明しましたね。
スヴェン:これはゴールではありません。始まりに過ぎません。
その言葉どおり、BMWモトラッドの挑戦はまだ始まったばかりなのだろう。鈴鹿8耐では輸入車ブランドとして史上初の表彰台という歴史を刻み、世界耐久選手権(EWC)やスーパーバイク世界選手権(WSBK)でもトップレベルの戦いを続けるBMW。
今回の独占インタビューでは、MotoGPについても前向きな姿勢を自らの言葉で語った。
鈴鹿で刻んだ3位は、決して終着点ではない。その先にどんな景色が待っているのか。BMW Motorradの次なる挑戦から、ますます目が離せなくなった。
BMW Motorradモータースポーツ責任者のスヴェン・ブルッシュ氏と筆者(青木タカオ)



