スズキ『ジムニーノマド』は、2025年1月30日に発表、4月3日から販売を開始する予定であった。ところが、あまりの注文殺到で、2月3日にはついに受注停止。そして2026年1月30日になって、ようやく受注を再開した。果たして何台売れているのかは公開されていない。
ネット上にはそれなりの状況が出ているが、その数はまちまちなので、ここに書くようなものではない。いずれにせよ、その需要に対応するために、2025年5月に目標販売台数1200台に対して、7月から月約3300台へと増産することが発表されている。
とにかく大人気車種が一夜にして誕生した(スズキにとって)、というわけである。ノマド効果かどうかは知らないが、2025年の販売台数で、ホンダを抜きトヨタに次ぐ第2位に躍進した。そんな大人気のノマド故、メディア向けの試乗会も発売から1年以上経過しても開催されず、ようやく2026年7月になって開催されたというわけである。
◆早くも進化した「2型」に試乗
スズキ ジムニーノマド
これほどの人気車であるから、多少かみついたところで、何をか言わんやであるのだが、ようやく試乗できたノマドについて率直な感想を述べてみたい。もちろん、複数の筆者に友人にもすでに納車されていて、その良さを実感しているという話は聞いている。
きわめて単純な話をすると、ノマドは『ジムニーシエラ』のメカニカルコンポーネンツを用いて、そのボディを拡大。ホイールベースを340mm延長し、リアドアを装備したモデルである。ホイールベースの延長は、そのまま全長に反映されているから、全長も340mm伸びている。そのスペースがどこに行ったかというと、リアの空間にはさほど回っておらず、ほとんどラゲッジスペースの拡大に向けられた。
と言っても多少リアのレッグスペースも拡大している。元々が軽自動車のボディであり、特に横方向のスペースには限界があるのだが、前後方向に関しては、だいぶゆとりが出来た印象である。荷室スペースの全長は、シエラに対して350mmも拡大している。
スズキ ジムニーノマド驚いたことに、試乗会に登場したモデルは、すでに仕様変更がなされた「2型」と称するモデルである。最初にデビューした「1型」に対し、デュアルセンサーブレーキサポートII(ということは1型はIということ)が装備されて、作動の範囲が自転車やバイクまで拡大された。さらにACCがAT車に装備された。しかも全車速追従機能付きである。そしてスズキコネクトに対応するようになったなど、いくつかの改良を施されていた。長距離を乗るにあたっては、ACCの有無は大きい(ただしAT車のみ)。
◆より快適になった後席と、オフロードでの走り
後席の空間的ゆとりについては、さほど変わっていないと話したが、実はシートのクッションが厚みを増して、快適性は向上している。結果として後席を折りたたんだ時に、ラゲッジスペースと明確な段差がついて、それを補うために荷室をフラットにするボードがディーラーオプションで存在する。
スズキ ジムニーノマドエンジンはK15Bの名を持つ1.5リットルの直4である。今回の試乗は、オンロードを5速MT、オフロードで4ATを使った。オフロードの走破性能については、シエラを基準としているから、十分すぎる性能を持っていることは確認できた。もちろん試乗会であるから、無理なコースは設定されておらず、誰でも普通に走れるレベルである。
一つ感じたことは、340mmのホイールベース延長は、乗り心地に多大な影響を与えていて、オフの路面でも快適性が担保され、ショートホイールベースのシエラやジムニーではポンポン跳ねていたコースで(コースはジムニー/シエラの時と同じだった)、しっとりと路面を舐めるように走ってくれた。
◆MTで物足りなさを感じた理由
スズキ ジムニーノマドマニュアルでオンロードに出てみると、なんとなく物足りない。それもそのはずで、エンジン性能的にはシエラと同じなのに、車重は実に100kgほど増えているという。だから、加速時に物足りなさが出る。そのせいかどうかは知らないが(エンジニアと話しても明確な答えは返ってきていない)、5速でも直結のギア比を持っているのである。
ただ、そうはいってもトルク不足は否定できず、大した坂でもないのに、5速で走っているとスピードは明確に落ちて、ダウンシフトが必要になる。そんなわけだからアップダウンのあるような場所では、かなり頻繁なシフトチェンジを必要とする気がした。平たん路50km/hでシフトアップダウンを繰り返してみると、少なくとも3~5速では、シフトアップ時に250rpmほどのエンジン回転差でしかない。結構クロスレシオなのだと思った。やはり100kgの重量増は堪える。
乗っていないので不明だが、オンロードにおけるAT車は4速がオーバードライブ仕様になっている。ギア比は0.696。これだと例えば高速などでもだいぶエンジン回転を落として走れそうだから、長距離移動の多い人は、ACCの存在も含め、ATがお勧めのような気がした。
◆もっと民需の広い層向けでもいい
スズキ ジムニーノマドそれにしても小さいながらとても存在感があって、欲しいという気にさせるクルマである。
スズキは一連のジムニー各車を、基本的にプロユーザーをベースに開発している。ノマドの場合それを、多少枠を拡大し、一般ユーザーでジムニーの性能を日常生活で使用する人にまで広げた。もちろんその下には、「ジムニーの性能に憧れを持つ人」という層をスズキは想定しているようである。
しかし、今やジムニーはブランド化し、そんな性能はなくても、日常でカッコいい、軽に見えない武骨さ厳つさを求めるユーザーにまで、市場が広がっている。プロの必要とする性能をベースに求めることは仕方がないにしても、ノマドの場合は果たしてプロがどこでこのホイールベースを活用するのかよくわからないし、クッションを増したリアシートに、プロは一体誰を座らせるのか?
そんなことを考えると、ノマドの開発に当たっては、より民需の広い層を想定した開発でもよかったのではないだろうか? 前述したギアリングも含め、一考の余地があるように感じた。もっとも今回はあくまでも試乗会のチョイ乗りでの話である。
スズキ ジムニーノマド■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。




